先日、nikkeibp.jpにて、林志行氏がJALの不祥事に関する記事を掲載していました。
○頻発するJALの不祥事〜効率経営とリスクの芽
http://nikkeibp.weblogs.jp/risk/2005/06/fusyouji.html
私自身、ここ数年は自他共に認めるJALのヘビーユーザーなので、偶然週刊nikkeibp.jpで見掛けたこの記事は興味深く読みました。しかし、その中で「これはちょっと……」と思う節が幾つかありました。今回は、当該記事にトラックバックを送信している為、その読者層を意識して、論点を「定刻運航」の部分のみに絞ります。
定刻運航について、林氏は以下のように書いています。
時間に正確であることと、そのためのスキル、守れない理由、そして何故に守れなくなったか、ビジネスモデル全体を構造的に解かない限り、根本的な要因を除去できない。
との事ですが、この「根本的な要因」は、実はJALの利用客、特にJGCのようなヘビーユーザーにこそあるのです。林氏は、コンサルタントという職業柄、これら一連のトラブルの解決策を専らJALという企業に求めているようですが、殊これらの「不祥事」に関する限り、JALという企業そのものだけに目を奪われていては、解決策が中途半端なものに終わってしまいます。
○定刻運航という幻想
抑も、定刻運航そのものについてですが、現在の日本において、定刻運航などというのは単なる努力目標でしかありません。元々、航空機の運航は、天候(特に風速・風向)や使用スポットなどの違いにより、所要時間の変動は簡単に発生するものです。それに加えて、首都圏の空域・空港容量がともに逼迫している現状では、定刻運航が実現出来たというのは単なる僥倖であり、羽田・成田発着便は「遅れて当然」というのが実態です。
現在の日本においては、国内線のダイヤは5分刻みでの設定です。鉄道のダイヤが5秒から15秒という単位で設定されている事からすれば、かなり大雑把なダイヤ設定となっています。しかし、これだけ大雑把であっても、なお二捨三入済みの定刻よりも遅れるケースが目立ちます。国土交通省によれば、国内線における遅延の基準は「定刻より15分以上遅れた場合」となっていますが、その基準ですら遅延扱いとなってしまう便も結構存在します。統計情報に現れない降機時刻ベースでの遅延ともなれば、夕方〜夜の羽田空港到着便は殆どが慢性的に遅延していると言い切っても過言ではありません。
日本の空港、特に羽田空港における慢性的な遅延を改善するには、空港・空域の拡張及び飛行経路の追加設定が必要となります。しかし、これらは総てJALの課題ではなく、行政・外交或いは国防上の課題です。現在、羽田空港においては2009年度の供用開始を目指してD滑走路の建設が進んでいますが、この平行滑走路*1が完成した所で、実際に航空機が飛行出来る空域は従前と変わらない為、今度は離陸後の出発経路や着陸前の到着経路がボトルネックになってしまいます。このボトルネックを解消する為には、離陸直後や着陸直前に東京の市街地上空を通過する飛行経路の設定や、所謂「横田空域」「百里空域」の縮小・共用化が必要となります。しかし、東京上空の通過に当たっては地元住民との長期に渡る話し合い*2が不可欠になるでしょうし、横田空域や百里空域との調整ともなれば、既に国土交通省が単体で出来る事の限界を超えています。こんなものは、JALのビジネスモデル云々の問題とはなり得ませんし、ましてやJALにこれを改善しろなどというのはお門違いもいい所です。
○定刻運航を強いるもの
そんなこんなで、航空機の定刻運航など見果てぬ夢に過ぎませんし、実際に乗客も完全な定刻運航など期待していません。特に、ヘビーユーザーになればなるほど、遅延や欠航などのリスクを織り込んで行動するものです。10分や20分程度遅れたって、鉄道や船舶などの代替交通機関を利用した場合に比べれば圧倒的に所要時間は短く、その程度の遅れであれば誤差の範疇に埋もれてしまいます。
しかし、日本の航空業界においては、10分どころか、1分1秒の遅れたりとも一切許さない存在があります。それは、大阪国際空港(伊丹空港)です。大阪国際空港では、地元住民との幾度にも渡る訴訟の結果、現在では21時から翌7時までの間、離陸も着陸もする事が出来ません。しかし、東京=大阪を移動するビジネス客、殊「金帰月来」の東京出張族にとっては伊丹空港の方が使い勝手がいいらしく、羽田→伊丹の最終便は、大阪に帰る多数のビジネス客で溢れかえっています。
この羽田→伊丹の最終便は、2005年7月現在、以下の時刻で運航されています。
| 便名 | 羽田発 | 伊丹着 |
|---|---|---|
| JAL1529 | 19:30 | 20:35 |
| ANA041 | 19:30 | 20:35 |
一応、伊丹空港の「門限」まで25分の余裕を持たせてはいますが、機材繰りや交通集中などにより、25分もあったはずの余裕が全然なくなっているというのもよくある事です。それでも、20:59までに着陸出来ればまだいいのですが、問題は着陸進入中に21:00を回ってしまった場合です。こういう場合、大抵の空港ではそのまま着陸進入を継続させ、ある程度の「遅刻」での着陸を許容します。しかし、伊丹空港となると、21:00に間に合わないとなるや、一切の「遅刻」は許容せず、問答無用で関空へのダイバートを指示されます。関空に着陸するまでの所要時間もさる事ながら、関空から最終目的地までの所要時間も余計に掛かる事になってしまう為、伊丹空港の門限に間に合うか間に合わないかは、利用者にとっては非常に大きな問題なのです。
それでも、関空ダイバートなら、一応帰宅する事は出来るからまだマシな方です。もっと悲惨なのは、伊丹→羽田の最終便が離陸の門限に間に合わなかった場合です。こちらは、2005年7月現在、以下のダイヤで運航されています。
| 便名 | 伊丹発 | 羽田着 |
|---|---|---|
| JAL1528 | 20:00 | 21:05 |
| ANA040 | 20:20 | 21:25 |
21:00という門限は、到着時であれば着陸さえ出来てしまえばOK(=スポットに到着する時刻は21時以降になってもOK)なのですが、出発時であれば離陸滑走開始を21:00までに間に合わせなければなりません。つまり、もし滑走路端で21:00になってしまった場合、そこから離陸する事は許されず、すごすごとスポットに引き返して欠航する事になってしまうのです。こうなってしまうと、新大阪発の最終新幹線(21:18発)にも関空発の最終羽田行き(22:20発)にも間に合わない為、夜行バスを利用するか、さもなくば大阪で1泊する事になってしまいます。伊丹→羽田の最終便の遅延は、羽田→伊丹の最終便よりもクリティカルなのです。
○東京=大阪で空路が存続する理由
本来、東京=大阪などという区間は、東海道新幹線さえあれば、旅客需要の殆どは満たせてしまいます。東海道新幹線品川駅の開業やそれに伴うのぞみの大増発により、便数・所要時間・運賃のどれを取っても、既に航空機の優位性はありません。更に、航空機には上記の遅延や門限、更には天候事由などによる欠航のリスクもありますし、輸送機関としての安全性であれば遥かに鉄道の方が完成度は高くなっています。それでも、羽田=伊丹だけで1日に29往復*3も就航し、しかもその殆どがB777-200以上の大型機材(JALの2往復のみがB767-300)での運航となっている背景には、航空会社のFFP、つまりはマイレージプログラムの影響があります。
例えば、毎週月曜日に上京し毎週金曜日に帰阪するといった典型的な東京出張族であれば、年間で東京=大阪を約50往復します。新幹線であれば、50往復しようと100往復しようと、その頻度によるリターンは何もありません。しかし、これが航空機であれば、羽田=伊丹の区間マイルはJAL・ANAとも278マイルですから、年間50往復すれば単純計算で27,800マイル、たとえ特便割引や特割などの利用であっても20,900マイルが貯まる事になります。これだけのマイルがあれば、国内線特典航空券や国際線アジア近距離特典航空券に交換する事が出来ますし、3年間マイルを貯めておけば米大陸線やヨーロッパ線の特典航空券を取得する事も出来ます。更に、各種ボーナスマイルや航空券購入時のショッピングマイルなどを考えれば、獲得マイル総数は更に多くなります。
また、日本の航空会社は、JAL・ANAとも多頻度顧客向けのFFP上級会員制度が存在するほか、その上級会員資格を取得したFFP会員向けに、自社クレジットカードへの入会を条件とした終身上級会員制度が存在します。
○JALマイレージバンク - ご搭乗の多いお客様へ
○ANAスーパーフライヤーズカード
http://www.ana.co.jp/amc-member/reference/elite/spfs2_fr.html
多頻度顧客向けのFFP上級会員制度は、FFPを持つ殆どの航空会社で導入されています。しかし、自社カード加入による終身上級会員制度は、世界中でもJAL・ANAの2社にしか存在しません。JALグローバルクラブ(JGC)にしてもANAスーパーフライヤーズカード(SFC)にしても、生涯でただ1年間だけFFP上級会員の資格を取得してしまえば、あとは自社クレジットカードの会員でいる限り、航空機の利用頻度がほぼゼロになっても、半永久的に上級会員の資格を維持する事が出来ます。通常のFFP上級会員資格が1年間のみのサービスである事を考えれば、終身上級会員制度には大きな優位性があります。特に、内勤になったり東京へ異動になったりして、ある年から急に搭乗回数が激減する事が多い日本においては、この終身上級会員制度の優位性は際立っています。
東京=大阪を毎週往復するような人であれば、毎年FFP上級会員資格を取得出来るのは勿論、JGCやSFCに加入して終身上級会員資格を取得する事も可能です。この上級会員資格を取得すれば、
- 毎年初回搭乗時のボーナスマイル及び搭乗毎のボーナスマイル
- 電話での事前予約及び空港での当日キャンセル待ちにおける優先空席待ち
- 出発時の航空会社ラウンジの利用
- 到着時の手荷物優先引き渡し
など、様々な特典を享受する事が出来ます。東京=大阪以外の国内線は勿論、国際線においても航空会社ラウンジの利用や手荷物の優先引き渡しなどのサービスを受ける事が出来ますから、たまの海外出張やプライベート旅行の時の為にも、東京出張族の殆どはこれらの上級会員資格を取得している事でしょう。逆に言えば、これら上級会員がいるからこそ、JALもANAも東京=大阪線を維持する事が出来るのです。
○上級会員の思い上がり
さて、JGCやSFCなどの終身上級会員制度ですが、JALやANAの固定客確保、特に新幹線競合路線におけるビジネス客の取り返しに大きな貢献を果たした一方、終身上級会員制度ならではの弊害も発生してきました。会員の死亡などによる自然減以外での会員数減少が殆ど発生しない事による上級会員組織の肥大化及び上級会員資格の相対的なメリット低下、或いは提携航空会社の上級会員資格付与に対する提携航空会社からの反発*4などもありますが、最も大きな弊害は、上級会員の間に「自分達は特別な人種なんだ」という一種の選民思想が根付いてしまった事です。
これは、特にSFCよりもJGCにおいてよく見られます。JGCの権威を振り翳すような人間は、45-47体制*5以来「親方日の丸のJAL>>所詮民間会社のANA」という歪んだエリート意識を持っているのか、不思議とANAよりもJALに定着してしまいます。FLY ON サファイア(JMG)会員よりもJGC会員の方を手厚く優遇しているJALのサービスも、JGCの増長を助長する一因となっています。
増長したJGC会員は、以下のような勘違いや思い上がりを有する傾向にあります。
- 自分達は、全てのサービスにおいて他のJAL利用者よりも優先されて当然である。
- 自分達は、チェックイン締め切り時刻に遅刻しても乗せてもらえて当然である。
- 自分達は、JGC専用チェックインカウンターを待たずに利用出来て当然である。
- 自分達は、搭乗前にサクララウンジ(またはJALラウンジ)を利用出来て当然である。
- 自分達は、機内で先任客室乗務員から挨拶されて当然である。
勿論、全てのJGCがこのような勘違いや思い上がりを有しているのではありませんが、特に羽田=伊丹をメインで利用するJGCには、「自分達が東京=大阪線を支えてやっているんだ」「自分達がJALを支えてやっているんだ」という意識が強いようで、そこかしこで増長した行為を見る事が出来ます。この増長した人々にとっては、JGCの様々なサービスは、JALを利用した移動・旅行をより快適にする為の手段ではなく、最早そのサービス・権利を行使する事自体が目的となってしまっています。それ故、JGC会員は、たとえ恙無く旅行する事が出来たとしても、これらのサービスや権利を行使出来なかったとなると、途端に機嫌が悪くなります。
増長したJGC会員を見たければ、金曜日の19時頃に羽田空港第1ターミナルのJGCカウンターを定点観測していれば、かなりの確率で遭遇する事が出来ます。JAL1935便のチェックイン締め切り時刻直前になっても悠々とJGCカウンターに並んでいたり、それが原因で手荷物検査場で他の利用者を追い抜く措置*6を執ってもらう事になったり、それでいてサクララウンジでビールを引っ掛けないと気が済まなかったりと、凡そJGCが本来想定する紳士的なイメージとは正反対の行動を多数見る事が出来ます。尤も、これだけJALの権威が失墜した今日においては、寧ろこうしたJGC会員の増長ぶりこそがJGC及びJALの体質をよく現していると見る事も出来るでしょうが。
最近では、こうした増長JGC会員を本当の上級会員から隔離する為に、羽田空港において「ダイヤモンド・プレミアムラウンジ」なるものが開設されました。このラウンジは、JMBダイヤモンド会員及びJGCプレミア会員のみが利用出来るラウンジで、専用の手荷物検査場を持つというのが大きな特長ですが、増長JGC会員の多くはこれらの資格まで取得しているのか、金曜夜の混雑ぶりは相変わらずのようです。そして、ラウンジ内で搭乗時刻ギリギリまでビールを呷っている悪癖も相変わらずなので、結局はJGC会員の増長を改善するには至っていません。
○出発を遅らせるJGC
斯かるJGC会員の行為は、何れも航空機の出発を大幅に遅らせる要因となっています。ましてや、伊丹行き最終便での遅延行為ともなれば、上述の通り運航にとって致命傷ともなりかねません。スポーツの世界であれば、野球やサッカーなど、この手の遅延行為に対するペナルティはルールとして確立しています。しかし、航空機での遅延行為については、機内迷惑行為を防止する為の改正航空法が施行された後も、これといった対策を立てられていないのが現状です。そして、航空機の遅延やそれに伴うダイバートで最も五月蝿くクレームを付けるのも、これらJGC会員だったりするのです。
実を言うと、3/16のJAL1021便がドアモード変更をし忘れたまま飛行したミスは、これらJGC会員の遅延行為と無関係ではありません。このミスが発生した背景には、日本航空インターナショナル*7のオペレーション変更があります。
【2005-08-13 修正】
- 従来のオペレーション
- 乗客の搭乗が完了してからドアクローズし、ドアモードを変更。反対側のドアを担当している客室乗務員とドアモード変更の相互確認を行い、全ドアがArmed(機材によってはAutomatic)ポジションになっている事を確認の上、先任客室乗務員が機長に出発準備完了の報告を行う。機長は、客室内の出発準備完了を承けて、地上管制席にプッシュバックを要求する。
- 日本航空インターナショナルが2005年2月から導入していたオペレーション
- 乗客の搭乗が完了してからドアクローズし、先任客室乗務員が機長に出発準備完了を報告。機長は、客室内の出発準備完了を承けて、地上管制席にプッシュバックを要求する。それと同時に、客室乗務員はドアモードを変更し、反対側のドアを担当している客室乗務員とドアモード変更の相互確認を行う。
このように、アクロバティックな運用変更を行ってまで地上管制席へのプッシュバック要求を早めた理由は、言うまでもなく定刻運航の為です。出発機や到着機が集中する時間帯においては、5秒・10秒といったプッシュバックの遅れが、5分・10分といったタキシングや離陸の遅れに繋がります。更に、北風時であれば第2ターミナルビルを利用するANAやADOがC滑走路(RWY 34R)への着陸を要求する事も多く、これら着陸機の割り込みがあれば、離陸は更に遅れる事となります。伊丹空港の門限を抱えるJAL1935便にとっては、これらの遅延は全てボディーブローのように効いてくるのです。
本来ならば、JAL1935便のように門限と戦う便のみならず、全ての出発便において、搭乗時刻までに搭乗口に来なかった乗客は皆置き去りにして出発するというのが定刻運航の為のスタンスです。しかし、JGC会員を置き去りにしようものなら、「JGCカウンターで待たされた」だの「サクララウンジが利用出来なかった」だのといったケースとは比較にならないくらいのクレーム(と言うよりも単なる罵倒)が現場に浴びせ掛けられる事になります。しかも、東京=大阪などの新幹線競合路線では、JALの運賃収入にこれらJGC会員が相当程度の貢献をしているのも確かですから、無碍に積み残しを発生させる事も出来ません。結果、時間遵守感覚に乏しいJGC会員と門限に厳しい伊丹空港との間で、JALの運航現場・地上現場が板挟みになっているのです。
因みに、本来はサクララウンジ・JALラウンジの類においては一切の出発案内をしないものですが、実際には出発案内どころかBy Nameでの呼び出しが日常的に行われています。これは、ラウンジ利用者への便宜的措置などというものではなく、少しでも出発を早める為の苦肉の策です。勿論、こんな形で呼び出しを食らうのは、本来ならば恥であるはずなのですが、増長したJGC会員には恥の概念などありませんから、何食わぬ顔で搭乗口に向かうだけです。
○定刻運航を確保する為に
では、これら遅延行為をなくし、定刻運航を確保すると同時にドアモード変更ミスなどのようなオペレーションミスを防ぐには、どんな対策が必要なのでしょうか。ここでは、
の順に、リスク因子及びその対策を検討します。
1.国土交通省のなすべき事
定刻運航確保の為に国土交通省が最も成すべき事は、首都圏における空港・空域容量の確保です。しかし、これは一朝一夕に出来る事ではなく、設備投資も高額になる事から、喫緊の課題であるという事は出来ません。それよりも、航空会社に出発時刻の遵守を促すとともに、チェックイン締め切り時刻や搭乗時刻に遅刻した乗客へのペナルティを明文化すべきです。確かに、機内での携帯電話使用や乗務員への暴力行為などに比べれば、搭乗時刻への遅刻はある意味「微罪」かも知れません。しかし、実際にこうした遅延行為がきっかけでドアモード変更ミスなどの問題が生じているのですから、航空を管轄する省庁として、国土交通省も何等かの対策を講じるべきです。
それと同時に、剰りにも厳格な伊丹空港の門限運用を緩和すると同時に、門限となっている21:00という時刻そのものの見直しも検討すべきでしょう。もし、どうしても21:00という門限の運用を緩和する事が罷り成らないというのであれば、2006年2月16日に開港する神戸空港や、2007年供用開始予定の第2滑走路によって本格的に24時間運用が出来るようになる関西国際空港に「大阪の空の玄関」の役目を全面委譲し、伊丹空港を廃港する事も検討すべきでしょう。JALやANAは伊丹空港の廃港に反対するかも知れませんが、伊丹空港がなければないで神戸空港や関西国際空港が利用されるまでですし、それが不便だという人は新幹線などの代替交通機関を利用するまでです。
2.JALのなすべき事
一方、JALが定刻運航確保の為になすべき事ですが、これは出発時刻の運用を厳格にする事です。米国同時多発テロ直後の混乱期*8であればいざ知らず、平時において5分も10分も遅刻するような乗客を甘やかす必要などありません。乗り慣れているはずのJGC会員であればなおさらです。専用手荷物検査場を使えるJGP会員が専用ラウンジでビールを呷っていたなどというのは論外で、こんな乗客は問答無用で置き去りにしていくべきでしょう。どうせ、JAL1935便が出発した後でも関空行きのJAL1319便やJAL1321便がある事ですし、一度これらの便に強制振り替えされれば、少しはJGC会員も懲りるのではないでしょうか。
そして、剰りにも遅刻が目立つようなJGC会員については、JALはその資格を剥奪する事も検討すべきでしょう。現状、JALがJGC会員の遅刻状況を管理しているとは思えませんし、今後これを管理しようにも個人情報保護法との兼ね合いもあって難しいでしょうが、航空機の安全運航の為という理由があれば、ある程度の個人情報利用は許されるでしょう。JGC剥奪とまでは行かなくても、2回も3回も遅刻を繰り返したり、15分以上の大遅刻をしたりしたようなJGC会員に対して、JALは何等かの警告措置を行うと良いでしょう。或いは、これらのJGC会員に対して始末書の提出を求めるなんてのもいいかも知れません。
更に言うならば、JALはJGC会則を改正し、JGC会員に対して航空機の円滑な運航への積極的な協力を義務付けると同時に、その為に必要な一定水準の航空知識を常に有するよう求めるべきです。出発時刻や到着時刻の定義は勿論の事、主要空港におけるチェックインカウンター・手荷物検査場及び出発口の位置関係などは、JGC会員の一般教養として、啓蒙活動に励むべきでしょう。こうした啓蒙をお座なりに、種々のサービスや権利のみをJGC会員に与えていては、JGC会員が増長するのも当然です。
3.利用客(特にJGC会員)のなすべき事
最後に、JAL利用客、特にJGC会員についてですが、これは最低限航空機の定時運航を妨げる遅延行為をしない事です。特に、JGC会員について言うならば、他の旅客の範たれという事です。「たかが多頻度顧客にモラルなど……」という向きもあるかも知れませんが、増長するJGC会員に最も欠けているのは、JAL職員や他の旅客に見られているという意識でしょう。
件のドアモード忘れについて、林氏は以下のように書いています。
客室乗務員には、この操作は、なかば習慣のように染み付いているはずだ。「客室乗務員はドアモードの変更をお願いします・・・」。誰でも聞くアナウンスであり、相互確認が常識。そのアナウンスがない。頻繁に航空機を利用するユーザーも、違和感を覚えるはずだ。何故、誰も気がつかないのか。食事前に、手を綺麗に洗う、食後に歯を磨く習慣のようなものをしないことに、プロとして誰もそわそわしなかったのか。
ここで言う「頻繁に航空機を利用するユーザー」とは恐らくJGC会員の事でしょうが、このニュースに初めて接した時、私も同じ事を思いました。と言うよりも、客室乗務員のミスを責める前に、この便に乗り合わせていたJGC会員を責めたくなるくらいでした。JGC会員たるもの、ドアモードの何たるやくらいは知っていて当然ですし、ましてやドアモード変更のアナウンスがなければ、他の乗客よりも早くその異変に気付くべきです。
この便はB767-300という機材で運航されましたが、この機材でドアモード変更の操作が最もよく見える81ACの座席は、JGC会員のみが事前座席指定出来る枠として確保されています。東京=札幌という幹線であれば、この座席にはほぼ確実にJGC会員が座っていた事でしょう。別に、私はこのドアモード変更ミスについて何等当該便の客室乗務員を免責する心算はありませんが、少なくとも同便に搭乗していたJGC会員、特にドアモード変更操作が見える位置に着席していたJGC会員については、客室乗務員と同様、この事件に関して責任を感じるべきでしょう。
私自身、恥ずかしながらJGCの末席に潜り込む泡沫会員であると同時に、様々なJGCの特典を享受していますから、JGCそのものがなくなる事や、サービス・権利が縮小される事には反対です。しかし、JGC会員が己の不遜な行為によって迷惑を掛けているのであれば、私も同じJGC会員の1人として、その結果としての特典縮小を甘受しなければなりません。JALだって、慈善事業でJGCを運営しているのではありませんから、JGCの存続がJALの利益に反するようになれば、JALは何の躊躇もなくJGCを廃止する事でしょう。その事を、JGC会員は肝に銘じておくとともに、JALの経営に貢献しているからこそのJGCであるという事も理解しておくべきでしょう。
他の旅客よりも航空について熟知し、他の旅客の範となる振る舞いが出来るからこそ、JGCはJGCたり得るのですし、それ故にJGC会員は他の旅客よりも様々な面で優遇されているのです。JGC会員は、一連のJALによる不祥事を他人事として見るのではなく、自分自身の行為がこれら不祥事を呼び起こす事にならなかったか、今一度自省すると同時に、今後のJAL利用における自戒とすべきでしょう。
*1:実際には、騒音対策の為、既存のB滑走路とは7.5度のオフセットとなっています。その背景には色々な政治的要因があるのですが、今回の本論とは関係ない為、ここでは割愛します。
*2:この地元調整をお座なりにした結果が、「成田闘争」や大阪国際空港訴訟です。どちらの空港も、その時のツケが回ってきて、現在では非常に不自由且つ歪な空港運営を強いられています。
*3:JAL15往復+ANA14往復です。この他、羽田=関空では、JAL7往復+ANA7往復+SKY4往復=18往復が就航しています。
*5:別名「航空憲法」とも言われる、日本における大手航空会社3社の営業テリトリーを細かく区分けした運輸大臣通達です。どのような区分けをしたのかというと、
・日本航空(JAL):国際線及び国内幹線
・全日空(ANA):国内線全般及び国際チャーター便
・東亜国内航空(TDA):国内ローカル線及び国内幹線(経営体質が整い次第)
この通達は、昭和45年(1970年)に閣議決定され、昭和47年に実際に伝達が行われました。その後、昭和60年(1985年)に撤廃されるまで、十数年間の間、日本の大手航空会社3社を雁字搦めに縛ってきました。時期としてはオイルショックからプラザ合意までの間にほぼ相当しますが、結果としては、この間の日本の航空会社における競争及び成長を大きく阻害する事となってしまいました。それによる慢性的な高コスト体質が今になって苦労の種になっているのは、見ての通りです。
*6:この措置自体は、別にJGC会員でなくても出発時刻の迫っている乗客全員に執られます。但し、あくまでも特例措置であり、本来であれば余裕を持って手荷物検査を済ませておくべきである事は、言うまでもありません。ましてや、JGCになるほどJALを利用しているのであれば、自分の利用する時間帯にどれだけ手荷物検査場が混雑しているか、予め計算に入れて行動すべきでしょう。それが、スマートな乗客というものです。
*7:平たく言うと旧JALです。
*8:私は、米国同時多発テロが発生した4日後の2001年9月15日に羽田空港からJAL便に搭乗しましたが、この時は手荷物検査場の待ち時間が1時間近くにもなるという異常事態で、出発便も軒並み30分から1時間近く遅延していました。当時は、JALもANAも現在の第1ターミナルを利用していましたから、その混雑も一入でした。