五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

スカイマーク、新北九州空港に殴り込み

 とんでもないニュースが飛び込んできたので、本日執筆予定の記事は明日以降に全て繰り下げます。

○「羽田=新北九州線」に参入表明!

スカイマーク、羽田―新北九州線に参入

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050823AT1D2303823082005.html

 スカイマークは、何処まで本気なんでしょうか? アンチ新北九州空港の私でなくても、スカイマークの突然の参入表明には、心配になる向きも多い事でしょう。ひょっとしたら、総選挙での女刺客ブームに触発されたんでしょうかね。



 スカイマークの新北九州就航は前々から噂されてきましたが、まさか本当に就航を表明するとは吃驚です。しかし、それ以上に吃驚なのが、羽田発着枠の追加申し込みをしないとされている事です。まぁ、2ちゃんねる航空板の新北九州空港スレに載っていた記事のソースが不明なので、本当に追加申し込みをしないのかどうかは不明ですが。
 因みに、新北九州空港スレに載っていた記事は以下の通りです。

スカイマーク、羽田〜新北九州線を計画

就航表明3社目、来年3月16日から1日4便
羽田発着枠、追加申込せず自社保有分で調整

 スカイマークエアランズは8月23日、来年3月16日から同日開港予定の新北九州空港羽田空港を結ぶ新規路線に就航する計画を表明した。現在保有するB767型機かB737型機を使用して1日4往復程度を運航する予定。羽田空港の発着枠については、新規航空会社に優遇される発着枠の新たな追加申し込みは行わず、自社保有枠のなかで総合的に検討するという。
 同社は現在、羽田空港から福岡線に1日9便、鹿児島線徳島線関空線へそれぞれ4便ずつ計21便(コードシェア便除く)を運航している。加えて、来年2月16日から羽田〜神戸線へ1日8便で就航する計画(羽田発着枠数は確定されていない)。新北九州線の就航を実現するには、羽田空港の発着枠確保が必要となるため、就航中の路線のなかで減便を行うものと思われる。この際、北九州とは地理的に近い福岡線の減便が濃厚だ。また、新北九州線でのダイヤは深夜早朝便を加えることによって、羽田発着枠確保のための他路線減便の規模を抑えることも考えられる。
 羽田〜新北九州線は、現在も北九州空港との間に路線を持つJALグループのほか、新規航空会社のスターフライヤーが乗り入れを表明している。

 スカイマークが何も言わない内から福岡線の減便と決め付けている当たり、如何にも関門通信テイストが漂ってきますが、現時点では関門通信には何の記載もありません。或いは、2ちゃんねらーの新北九州マンセー厨が捏造した記事という可能性もあります。少なくとも、現時点では*1スカイマークB737保有していませんから、その点に限って言えば、この記事は勇み足です。



 さて、鳴り物入りスカイマーク新北九州参入表明ですが、私はかなり疑って掛かっています。那覇線のように、一度は羽田発着枠まで申請しておきながら就航を取り下げた*2例もありますし、羽田=青森や大阪=福岡のように、参入早々撤退した例もあります。国土交通省の中でも、スカイマークは「オオカミ少年」呼ばわりされているとの噂がありますし、余りこのプレスリリースを本気にしない方がいいかも知れません。
 そんなこんなで、現時点での私の予想を以下に列挙しておきます。

◎本命:単なるブラフ

 私が一番濃厚だと踏んでいるのは、スカイマークが何事もなかったかのように就航表明を取り下げ、新北九州参入を無かった事にするシナリオです。スカイマークは、就航表明による各界の反応を見て、新北九州空港開港によるスカイマーク福岡線への影響を見極めようとしているのではないでしょうか。そして、やはり新北九州に参入した方が良さそうだという事になれば、来年開設する神戸線が軌道に乗った頃に、改めて参入計画を立てる事でしょう。
 スカイマークスカイネットアジアなどの新規航空会社にとって、羽田発着枠は生命線です。1便分でも多く枠を確保したい所に、増枠の見込みもなく新規路線を開設する事など、先ず考えられません。スカイマークにしろスカイネットアジアにしろ、或いはAir DOにしろ、新規路線開設の歴史は、同時に羽田発着枠拡張の歴史でもあります。羽田発着枠の追加申し込みと同時に新規路線開設の発表を行うなら兎も角、現有の発着枠内で遣り繰りするなど、狂言でもなければ、単なる自殺行為でしかありません。
 現在、スカイマーク保有している羽田発着枠は21便分です。福岡線就航当初に比べれば格段に増えましたが、それでも羽田においては「たかが21便分」でしかありません。その中から、新北九州用に4便分も抜き取るとなれば、他路線の競争力への影響は必至です。何処かの路線を廃止するのでもなければ、下手すると既存路線と新北九州線とで共倒れになってしまう危険性があります。
 2005年8月ダイヤでは、羽田=福岡の各社便数は以下の通りです。

  • JAL:20便/日
  • ANA:16便/日
  • SKY:9便/日

 この路線、スカイマークは9便というかなりの多さを持っているからこそ、ある程度の認知度や利便性を確保する事が出来ています。しかし、もしここでスカイマークが減便したとなると、認知度や利便性の低下は不可避です。唯でさえJALやANAに圧されている中、自ら減便するような事をしては、わざわざJALとANAとの狭間に埋没しに行くようなものです。
 普通の経営者であれば、ここで敢えて減便するなどという選択肢を取る事はないでしょう。やはり、参入の王道としては、2009年完成が予定されている羽田再拡張後に、各路線とも十分な便数を保った上で、改めて新北九州参入を表明するのが筋でしょう。そうでなくても、開港半年前近くになってからの就航表明では剰りにも準備不足ですし、事務的に参入が間に合うかどうかすら不明です。
 更に、スターフライヤーのように地元財界の後ろ盾があるのでもなければ、JALのように長年の就航実績があるのでもなし、かといってANAのように充実したマイレージ制度もないのですから、落下傘候補スカイマークが新北九州参入でシェアを確保できる見込みはありません。個人客・ビジネス客を取り込めなければ、イールドの低い団体客・観光客を相手にせざるを得ませんから、新北九州参入は却って自縄自縛に陥る危険性すらあるのです。
 もう1つ、東京側から見た場合、スカイマークの新北九州参入は異常な事態を引き起こします。それは、ろくに実績もない路線に、小型機ばかりで19便から22便分、或いはそれ以上もの発着枠を割り当ててしまうという事です。現在、羽田発着枠で20便分以上の割り当てがあるのは、何れも幹線または準幹線であり、その殆どが大型機または中型機での運航となっています。未だに日本各地*3から羽田への増便要求が収まらない中、新空港というだけで小型機ばかりポーンと22便分も放出するのであれば、他地方にとっては堪ったものではありません。国土交通省も、この辺の事情はよく理解している事でしょうから、場合によっては国土交通省から新北九州への就航をストップされる危険性もあります。
 

○対抗:現路線から少しずつ発着枠を摘む

 もし、スカイマークが本当に新北九州へ参入するのであれば、最も可能性の高いのが、各路線から発着枠を少しずつ掠め取る事です。例えば、福岡線から2便分、徳島線関空線から1便分、といった感じです。或いは、福岡線・徳島線から2便ずつという可能性もあります。
 しかし、何れの方法を取るにせよ、減便によって既存路線の競争力を減殺する事は、上述の通り、自殺行為に他なりません。便数でアドバンテージを取られる怖さは、ANAから禅譲された路線を守りきれなかった青森線で厭と言うほど実感しているはずです。そして、その時の教訓があったからこそ、スカイマーク徳島線で4便態勢を維持しようと努力したのでしょう。
 福岡線での他社との便数比較は上記の通りですが、その他の路線となれば、スカイマークが減便すれば、それが自殺点かつ決勝点です。流石に鹿児島線を減便するような事はないでしょうが、徳島線関空線が2便態勢なんて事になれば、それはスカイマーク撤退へのカウントダウンです。まぁ、関空線もJALとのコードシェアがありますから、おいそれと減便するような事は出来ないんですけどね。

△穴:福岡線を思い切って4便減らす

 これは、スカイマークが余程新北九州空港を買い被っていない限り、先ずあり得ないでしょう。幾ら新北九州空港の開港によって北九州圏域の利用者が福岡空港から戻ってくるとはいえ、便数半減はやりすぎです。それに、福岡線がたったの5便という事になってしまっては、往年の東亜国内航空よろしく、本当に幹線では目立たない存在になってしまいます。
 新北九州空港へは、スターフライヤーが1日9便から12便を飛ばす予定ですし、何事もなければJALも4便態勢を維持したまま新北九州空港へと移転するでしょう。そんな所にスカイマークが4便ぽっち飛ばした所で、新北九州空港では決して最大勢力にはなり得ないのです。「シフト客を狙って……」などと便数まで福岡から一気にシフトしてしまっては、それこそ虻蜂取らずというものです。福岡でもニッチ、新北九州でもニッチでは、折角軌道に乗り始めた経営を大きく脱線させる事になりかねません。

△穴:徳島線から撤退する

 これも福岡線減便と同じくらいにあり得ない話ですが、一応オプションとして提示しておきます。というのも、神戸から徳島へは時間距離も費用距離も近く、場合によっては神戸線徳島線の客を大きく食い取ってしまう危険性があるからです。そうなった時に、元グリーンスタジアム神戸ネーミングライツを取得してまで営業に力を入れている神戸線と、元々ANAから禅譲されただけで、これといって旨味のない徳島線とのどちらを取るかと言えば、これは問答無用で神戸線でしょう。スカイマークの事ですから、神戸線の就航を期に思い切って徳島線から撤退するというシナリオも、或いは起こり得るかも知れないのです。少なくとも、その可能性はゼロではありません。
 まぁ、スカイマークが体良く徳島線から撤退すれば、他の好きな路線に発着枠を振り向ける事が出来ますし、場合によっては神戸線へのアシストとなるかも知れません。現在、徳島からは関空へのリムジンバスが出ていますが、これで神戸空港へのリムジンバスも出るという事になれば、いよいよ徳島線の運休は現実味を帯びてきます。南海グループのバス戦略が、ともすれば新北九州空港へのキラーパスとなるのです。

×大穴:JALと発着枠を交換する

 これは、単なるおふざけです。まぁ、ネタの一種として読み流してくれればいいのですが、笑い話としてはこんなのもありかなぁと。
 現在、羽田=北九州には、JALが4便就航しています。一方、羽田=関空には、スカイマークがやはり4便就航しています。スカイマーク関空線の搭乗率は芳しくなく、JALとのコードシェアによって何とか座席を埋めている状態です。
 幾ら最近のJALがトラブル続きだとはいえ、何だかんだで固定客・ビジネス客の取り込みについては、JALの方がスカイマークよりも遥かに上を行っています。新北九州空港の開港まであと半年近くですが、このままの状態で開港・就航を迎えても、スカイマークは相変わらず固定客・ビジネス客の取り込みに苦労し、JALやスターフライヤーに大きく水を空けられる事でしょう。悪夢の搭乗率19%も、この準備不足では再現の危険性が十分あります。
 そこで、関空コードシェアのよしみで、JALに新北九州線をまるまる禅譲してもらうのです。たとえスカイマーク運航であっても、JAL便名が付くのであれば、それなりにJAL派の人間が利用するという事は、関空線で実証済みです。JALとしても、地元財界がスターフライヤー一辺倒で、長年北九州路線を維持し続けてきたというプライドがズタズタにされていますから、或いは北九州から撤退してやりたいと思っているかも知れませんし、そんな時にコードシェア実績のあるスカイマークが新北九州に参入してくれるというのは渡りに船でしょう。
 しかし、幾ら何でもいきなり撤退というのはド派手ですし、国土交通省から横槍が入る危険性も十分にあります。そこでJALが取るべき策が、スカイマーク関空線を引き取って、表見上は発着枠の交換にする事です。これならば、スカイマークも採算性の低い関空線から堂々と撤退できますし、JALは関空線の11便態勢を維持する事が出来ます。国土交通省にしても、2007年の関空2期供用を間近に控えている今、JALの関空線増便を無碍に却下する事は出来ないでしょうから、この発着枠交換は成功する可能性があります。これならば、三方丸く収まるというものです。



 そんなこんなで、5つくらい今後のシナリオを予想してみました。アンチ新北九州空港の私としては、これがブラフだったら面白いなぁと思いつつ、密かに期待しているのは大穴の発着枠交換だったりします。やはり、関空線はJAL便でクラスJに乗りたいですからね。JALの中の人も、関空線はクラスJだけが異常な速さで埋まっていくという事は重々承知のはずですから、むやみやたらとモノクラス便を関空に投入するというヘマはしないと信じていますが。

*1:但し、神戸就航と同時にB737-800を導入する事は既に決定済みですので、2006年3月現在であれば、B737保有機材に勘定するのは間違っているとは言えません。

*2:その後、期間限定の深夜便という形で、那覇参入は実現しています。但し、通年運航・毎日運航や、昼間時間帯の運航となると、その実現は相当先の話になりそうです。

*3:但し、富山を除く。