五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

中国南方航空も新北九州へ

 何なんですか、この1週間の就航表明ラッシュは(;´Д`)

中国南方航空が乗り入れ表明

http://kanmontuusin.morrie.biz/item/410

 開港半年前になってから日和見の如く就航表明したところで、果たしてちゃんと顧客開拓する事が出来るんでしょうかね。まぁ、新北九州空港盲信派の面々は「需要ならちゃんとあるから心配するな」とか言い出すんでしょうが、その需要予測が甘くてズッコケている空港は国内外に数多あります。とは言え、補助金さえ出していなければ、少なくとも航空会社がズッコケるのは自己責任の範疇ですが。



 しかし、日刊スポーツ九州にしろ関門通信にしろ、何故に支那側の就航地を上海だと考えるんでしょうかね。そりゃあ、確かに中国南方航空(CZ)のチャーター便就航実績は上海*1だけですが、プログラムチャーターと呼ぶには程遠い単発もののチャーター便で、当然ながら観光客メインです。

北九州空港概要

http://www.kitakyu-air.co.jp/info05.htm

 ある程度航空に見識のある人ならば、中国南方航空の拠点が上海ではなく広州だという事は知っているでしょう。実際、現在中国南方航空が運航している日本線には、中国北方航空(CJ)の吸収合併により引き継いだ路線を含め、上海発着のものは1便もありません。

中国南方航空 日本発着路線2005年度夏季運航スケジュール

http://www.cs-air.jp/2005timetable.html

 その殆どが、広州・大連・瀋陽*2からの就航であり、一部にはハルビン長春からの就航もあります。特に、広州線については、東京・大阪・福岡の3都市にデイリー就航していて、東京・大阪ではJAL運航便のコードシェアも含めてダブルデイリーです。
 一方、福岡=上海線はというと、中国東方航空(MU)がダブルデイリー、中国国際航空(CA)とJAL(JL)とがデイリーで、合計すると1日に4便も就航している計算になります。これだけあれば、福岡都市圏は勿論の事、近隣の北九州都市圏や佐賀都市圏からであっても、上海へ行くのにそう不便はしないでしょう。また、福岡=上海線は堅実に収益を上げられるようで、JALに至っては10月からの福岡国際線大縮小においても唯一上海線だけは残しているくらいです。たった1路線の為だけに国際線拠点を残すコストを考えれば、福岡=上海線の収益はかなりのものでしょう。
 そんな福岡=上海線を前にして、上海線定期就航の実績が全くない中国南方航空が、新北九州でどれだけの事が出来るというのでしょうか。週に2便や3便の就航では、とても利便性で福岡線に歯が立ちませんし、だからといってデイリーにするほどの需要もないでしょう。福岡線との競合を避けて広州=新北九州線での就航に振り替えたところで、今度は広州=福岡の自社便と食い潰し合ってしまいます。就航させる「方針」だけで終わるのであれば話は別ですが、僅か半年の準備期間で就航するには、新北九州は剰りにも無謀な就航地設定でしょう。



 もう1つ、中国南方航空の新北九州就航には大きなハードルがあります。それは、日支政府間の航空協議による発着枠増です。国際定期航空においては、物理的な空港の発着枠だけでなく、二国間の同意による政治的な発着枠の問題も解決しなければならないのです。

○日中航空協議、また物別れに

○上海発着枠拡大の日中協議物別れに

http://www.chunichi.co.jp/00/cko/20050826/ftu_____cko_____001.shtml

 日本は上海の発着枠増を、支那は成田や羽田の発着枠増を、それぞれ要求しているのですが、双方とも自国の発着枠増を渋っている状態で、当面は事態が進展する見込みがありません。こんな情勢の中、支那が成田や羽田の発着枠増を引き出す為にキープしている上海の発着枠というカードを、たかが新北九州如きで切るはずもありません。まさか、「新北九州=上海線を認めてやるから、成田や羽田の発着枠を寄越せ」と言ったところで、日本側がそんな要求を呑むとは思えません。
 罷り間違って、日本側がこの要求を呑んで、新北九州=上海線の開設と引き替えに羽田枠や成田枠を放出しようものなら、北九州市はANAや中京・関西経済界から売国奴と罵られる事でしょう。まぁ、「北京愛国・上海出国・広州売国」とも言いますから、売国都市同士仲が良くってよろしいとかいう冗談は言えるかも知れませんが、新北九州からセントレアへの定期便就航を期待している北九州サイドは、余り中京経済界を敵に回さない方がいいと思うんですけどね。対支強硬派の葛西敬之が中京経済界の実権を握るような事があれば、真っ先に北九州は粛正の対象になる事でしょう。
 しかし、名古屋=上海線や大阪=上海線のデイリー運航確保を見越して、発着枠拡大が担保されるまでは新北九州への就航を拒否するなどという芸当、電球ハゲには先ず無理でしょうね。「国益」っていうのは、つまりこういう事なのですが。

*1:これには、北九州空港の設備制約も関係があります。現北九州空港の滑走路長は1,600mですから、搭載できる燃料にも限りがあり、場合によっては広州まで航行するだけの燃料を搭載する事が出来ないかも知れません。チャーター便就航実績を見れば分かりますが、今までの就航地は何れも至近距離と呼べるような都市ばかりです。

*2:奉天」と言った方が分かり易いとかいう人、かなりオーバーエイジです。