五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

自転車政策も自動車並みに引き上げろ

 続いて、こちらは今日のTBS「噂の!東京マガジン」からの話です。番組内の特集「噂の現場」で、暴走自転車*1の危険性について詳しく取り扱っていました。

○TBS | 噂の東京マガジン

http://www.tbs.co.jp/uwasa/

 私は、1ドライバーとしてSo-net blog時代から一貫して自転車への取り締まり強化を主張していまして、このブロハラにおいても、脚注を含めて既に3回は自転車問題に言及しています。

  1. そろそろアルコールの害を本気で考えるべきだ
  2. 自転車でも人を轢き殺せます
  3. ヒンジドア一撃必殺

 そして、今回の放送を受けて、改めて暴走自転車や違法駐輪への取り締まりを考えてみたいと思います。



 ……と言っても、結論なんてハッキリしているんですけどね。暴走自転車や違法駐輪を一掃するのに必要な制度は、以下の2つだけです。

  1. 自転車運転免許制度
    1. 交通反則通告制度
    2. 点数制度
    3. 違反歴別の免許更新
      1. 優良運転者
      2. 一般運転者
      3. 違反運転者
      4. 初心運転者
  2. 自転車登録制度
    1. 自転車ナンバープレート
    2. 自転車賠償責任保険制度
    3. 自転車検査・点検整備制度
    4. 違法駐輪取り締まりの民営化

 何の事はない、自転車法制の自動車への接近です。現在、自動車の交通違反に対する警察の取り締まりは多大な効果を上げているのですから、それと同じ労力とモチベーションとを自転車にも振り分けるだけです。これで、暴走自転車や違法駐輪は一掃できますし、自転車が大きな税源にもなります。何処かの環境ブサヨクがほたえる「自転車優先の道路行政」も、自転車自身が財源になれば簡単に実現しますね。
 では、これらの制度創設で本当に暴走自転車や違法駐輪が一掃されるのかですが、既に自動車で相当程度の成果を上げている制度なのですから、自転車においても同様の効果が期待できます。以下、順を追ってみていきましょう。


1.自転車運転免許制度

 現在、暴走自転車や違法駐輪が蔓延る大きな原因の一つに、道路交通法の罰則が全然適用されていない事があります。そして、その最大の理由は、自転車や歩行者の検挙は、自動車に比べると遥かに事務処理が煩雑である事です。それ故、自動車運転免許を持っている人も、或いはそうでない人も、「自転車や歩行者での違反行為なら検挙されない」という甘えや驕りを抱くようになっています。私自身も、一度自動車の運転席を降りれば、同様の甘えや驕りを抱いてしまう事があります。
 こうした甘えや驕りを許さず、自転車や歩行者であってもビシバシ違反行為を取り締まる為には、実効性のある取り締まりの徹底が欠かせません。そして、その事務処理の煩雑さに現場の警察官が検挙を躊躇する事がないよう、自動車と同様の交通反則通告制度を自転車や歩行者にも導入し、略式裁判などという面倒な手続きを経由せずに全ての処分を完了できるようにすべきです。既に、現場の警察官も青キップなら切り慣れていますから、自転車や歩行者の青キップを切るなど朝飯前でしょう。
 しかし、交通反則通告制度だけでは、千代田区の路上喫煙取り締まりと同様、「金さえ払えば違反してもいいんだろ?」という向きが出てきます。交通反則通告制度を導入する以上、違反者には罰金ではなく反則金が適用されるのが原則となりますから、当然にしてその金額は道路交通法上の罰金よりも低い水準に抑えられる事になります。更に、自転車や歩行者の反則金原動機付自転車のそれを上回る事も考えにくく、「金さえ払えば」という新手の甘えや驕りが出てくる危険性は十分にあります。それを摘み取る為には、交通違反の「常習犯」を道路交通から排除する点数制度の導入が欠かせません。前科の付かない反則金など、「常習犯」にとっては所詮一時の金に過ぎません。しかし、違反点数という形で免許に残る形となれば、少なくとも自動車並みには交通違反の「常習犯」は減ります。1回の違反行為で、少なくとも2年間*2は「常習犯」を縛り付ける事になるのですから、その効果は非常に大きいでしょう。

2.自転車登録制度

 自転車や歩行者の違反が後を絶たないもう一つの理由は、その匿名性です。自動車の場合、車両の前後にナンバープレートを装着していますから、そのナンバーさえ判ってしまえば、それが何処の誰なのかは警察署に行けばたちどころに判ります。しかし、自転車や歩行者は、ナンバープレートにある自動車登録番号のように、ユニークキーを晒しながら通行しているのではありません。その昔、何処かのうどん屋さんが「旗を建てて全裸で街を歩き回っているキチガイの類」なる名言(迷言?)を残していますが、少なくともプライバシーに関する限り、ドライバーは常に全裸も同然なのです。
 流石に、歩行者にナンバープレートを持たせる訳には行かないでしょうが、自転車であればナンバープレートの装着は不可能ではありません。自転車の運転者については、自転車運転免許制度の導入で匿名での逃げ切りは防止できますが、自転車そのものについては、やはり別途ユニークキーとなるものが必要になります。そこで、自転車にもナンバープレートを装着をさせ、違反行為の逃げ切りを阻止する事が必要になるのです。
 実際、1958年までは、自転車や荷車などの軽車両にもナンバープレートが装着されていました。

○引抜式ナンバープレート

http://www.rokko.or.jp/users/negi/20176/

 一応、現在でも自転車のユニークキーたり得る自転車防犯登録制度なるものは存在するのですが、防犯登録が義務化されているのに罰則がなかったり、登録標章が小さすぎて遠目では登録番号が識別できなかったりと、自動車登録制度に比べると剰りにもお粗末なものです。

○自転車防犯登録

http://www.bouhan-net.com/

 自転車用の防犯グッズが増えてきている今日、別に引抜式ナンバープレートである必要もないでしょうが、交通違反取り締まりを含む犯罪捜査に寄与する為にも、自転車ナンバープレートの復活は必要不可欠でしょう。
 そして、自転車登録制度の普及は、3つの付加価値を齎します。1つは、自転車税や自転車賠償責任保険などの効率的な徴収、また1つは、車検制度の導入による自転車の安全水準の確保、もう1つは、違法駐輪の実行者ではなく所有者に対する摘発です。これと同時に、違法駐輪の取り締まりも民間委託してしまえば、駅前の違法駐輪は根絶される事でしょう。
 自転車税は、1958年に「道路財政への寄与率が低い」という事で廃止されてしまいましたが、過去には市町村税として立派に機能していました。

○日本の自転車税の歴史

http://www.cycle-info.bpaj.or.jp/japanese/history/topix01.htm

 この当時でたったの年間200円では、そりゃあ事務処理の方が高く付くかも知れません。しかし、現在において自動車税と同水準の年間30,000円以上を課税すれば、確実に事務処理以上の税収を齎します。自転車の総量抑制にもなりますし、反則金収入と違って正々堂々と予算計上出来ますから、いい事尽くめです。
 更に、自転車税と同時に自転車賠償責任保険も導入し、自転車事故による損害を公的に保証する制度が出来れば、万が一の歩車事故の際にも、少しは被害者が報われる事になります。この徴収と同時に、自動車と同様に定期的な点検を義務付け、整備不良の自転車を根絶できれば、或いは暴走自転車による事故の減少に寄与できるかも知れません。そして、これらの「法定費用」が自転車利用者に重くのし掛かれば、少しは自転車利用者も「道路交通の一員」としての自覚を持つようになる事でしょう。



 これらを見るに、自転車法制の自動車水準への引き上げは様々なメリットを齎すのですが、行政の腰が重いのか、未だに自転車は実質的に野放しとなったままです。そんな中、独自の政策に乗り出したのが、区内で痛ましい死亡事故を発生させた東京都板橋区*3です。板橋区が2003年4月1日から施行している「東京都板橋区自転車安全利用条例」は、今日の「噂の!東京マガジン」でも取り上げられていました。

○東京都板橋区自転車安全利用条例

URLは長いので省略

 この条例、悪質な自転車利用者には「指導又は警告」を行う事が出来るのですが、肝心の罰則がありません。何故かというと、上位法である道路交通法に罰則が存在する為、条例では同類の罰則を制定できないからです。

○自転車---道交法で取り締まらないなら、区で条例を作ってみました

○乱暴自転車 命も奪う

http://www.tokyo-np.co.jp/miyako-np/main/main030307.html

 板橋区は、様々な世代に自転車安全運転の講習を実施したり、その受講者には小学生も含めて独自の自転車運転免許証を発行したりと、なかなか自転車行政に関しては積極的なのですが、警察庁国土交通省の「行政不作為」に泣かされた形となっています。現場の警察官が、「ノルマ」に追われて自動車の交通違反ばかりを取り締まり、自転車や歩行者の交通違反を等閑にしているが故、こういう独自の優れた条例が殺されてしまうのです。
 そんな状況の中、果敢に罰則制定へと挑戦している自治体もありました。東京都武蔵野市です。武蔵野市が検討している条例は、道路交通法に拠らずとも暴走自転車に罰則を適用する事が出来るようなものでした。

○“は”は半可通の“は” - 暴走自転車に罰則

○なおたくぅ〜。のひとり言: 暴走自転車ぁ〜!?

http://f59.aaa.livedoor.jp/~naotaquu/morio_n/?id=1116329431

 しかし、土屋正忠前市長が衆議院議員バケラッタしてしまった今、この罰則条例はお蔵入りするのが関の山でしょうね。



 取り敢えず、現場の警察官においても、確実に暴走自転車への問題意識は芽生えつつあります。

○大森警察署 のん記: 第1回…暴走自転車

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/2/omori/nonki.htm

 あとは、この大森警察署のような問題意識がきちんと道路行政に反映させるよう、十分な法整備をするだけです。自転車や歩行者に対する法制がきちんと整備される事を望むとともに、その法制が現在の「ドライバーいじめ」となるような一種の化かし合いにならないよう、監視する事も必要でしょう。そして、交通安全に寄与する為の自転車法制が、そのまま「自転車利権」とならないよう、その運用には十分注意すべきである事は、言うまでもありません。

【2005-10-02 追記】
 自転車の傘差し運転について、tablets404さんの「ぷるたぶ日記帳」のコメント欄で、こんなものが紹介されていました。

さすべえ

http://www.unite-i.co.jp/

 こりゃ使えるかも_〆(。。)メモメモ…
 はてなダイアリーのキーワードって、こんな時に役に立つんですね。

*1:これ、暴走とすべきか珍走とすべきか難しい部分もありますが、ここでは純粋な「暴走」が問題になっているので、今回は暴走としました。勿論、単なる「暴走」ではなく、そこに示威的行為が含まれれば、それは暴走ではなく珍走という事になります。どちらも一律に取り締まるべきである事は当然です。

*2:これは、あくまでも現行の自動車向け点数制度を前提とした話ですが、過去2年間に無事故無違反であった者は、違反の時から3ヶ月を無事故無違反で経過すれば、その違反点数は加算されません。これが、過去1年間に違反した事がある者だと、違反点数は違反の時から3年間残り続ける事になります。それ故、真っ当なドライバーであれば、少なくとも2年間は無事故無違反に努めるようになります。まぁ、ドライバーの取り締まりには色々と特殊事情があるので、必ずしも同様の法制や現象が自転車でも再現されるとは限りませんけどね。

*3:はいそこ、埼玉県板橋村とか言わないように。