五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

JTA新北九州参入への疑問

 結局、2日待ってみても、新たなニュースソースはこれだけでした。

○来年3月開港の新北九州空港、国内線は1日20往復

http://kyushu.yomiuri.co.jp/keizai/ke_05121901.htm

 取り敢えず、関門通信のデマではなさそうだという事だけは分かりましたが、あとは精々B737-400*1が使われそうな雰囲気が濃厚だというだけで、結局はプレスリリース待ちというのが現状です。時刻を調べようにも、まだJTA新北九州線なんてAXESSにはファイルされていないでしょうから、16MAR KKJOKAとSENDしたところでNOT FOUNDとなるだけです。
 こんな状況でJTA新北九州線の論評なんかしても仕方がないのでしょうが、取り敢えず以下の5つに可能性を絞って、それぞれの疑問点に触れていきます。

  1. B737-400が昼間に那覇=新北九州を1往復する。
  2. B737-400が深夜・早朝に那覇=新北九州を1往復する。
  3. A300-600Rが深夜・早朝に新北九州=那覇を1往復する。
  4. B737-446が深夜・早朝に新北九州=那覇を1往復する。
  5. B767-346が深夜・早朝に新北九州=那覇を1往復する。

 一応、可能性の高い順に並べてみました。深夜・早朝に就航する可能性が低いと見ている辺り、私も全然関門通信を信用していませんね。


1.B737-400が昼間に那覇=新北九州を1往復する。

 一応、一番可能性が高いとすればこれなんでしょうが、果たしてJTAに昼間の新北九州線を運航するメリットがあるのか、私には疑問です。現在、JTAは那覇=福岡に1往復就航している他、JAL便としてもう1往復を運航しています。最新版(2006年2月)の時刻表を見る限り、この機材運用は

  1. NU0920 OKA 0800 → FUK 0935
  2. JL3605 FUK 1010 → OKA 1150
  3. JL3602 OKA 1245 → FUK 1420
  4. JL2566 FUK 1500 → KIX 1600
  5. JL2567 KIX 1700 → FUK 1815
  6. NU0929 FUK 1855 → OKA 2035

 となっているように思われます。JL3605/JL3602やJL2566/JL2567の部分は、那覇関空での機材入れ替えの可能性がありますが、少なくとも福岡については、この折り返しでほぼ間違いないでしょう。上記便以外には、B737-400は伊丹線に1往復、名古屋(中部)線に3往復入っているのみで、何れもJALエクスプレス(JEX)による運航であり、時刻も明らかにタッチアンドリバースの設定となっています。
 もし、JTAが新北九州線に参入する事になれば、上記機材運用は大きく崩される事になります。B737-4Q3の遊休機材を充当しての単純往復ならいいのですが、福岡線からの移管を含むとなると、JAL便運航での福岡=那覇や福岡=関空にも影響が出てしまいます。幾らJAL本体とは余り仲の良くないJTAとはいえ、未知数の新北九州線の為に福岡発着のJAL便をズタボロにするような事はしないでしょう。
 縦しんば、那覇→新北九州→那覇という単純往復だったとして、なお就航のメリットには些か疑問が残ってしまいます。前掲した読売新聞の記事には、こんな事が書かれています。

 日航グループの日本トランスオーシャン航空那覇市)は、修学旅行客らの需要が見込めると判断し、那覇間で1日1往復運航する。航空機はB737型機(約150人乗り)の予定。

 修学旅行客を受け入れるにしては、B737-400という機材は小さきに失するでしょう。まさか、150人分を全て修学旅行客に卸す*2なんて事はしないでしょうから、1便当たり搭乗可能なのは精々2クラス程度です。一般的な高校であれば、1学年は8クラスから9クラスはあり、生徒数も1学年当たり300人以上はいる事でしょうから、各クラスでかなり日程をずらす必要が出てきてしまいますね。更に、学校間での調整まで考えると、とても修学旅行向きであるとは言えません。福岡=那覇のように、JAL・ANAがそれぞれ相当程度の便数を飛ばしていて、初めて修学旅行セールスは成り立つのです。
 更に言うなら、修学旅行客を見込むのであれば、定期便でなくてもチャーター便で十分なのです。これならば、各校のスケジュールに合わせたきめ細やかな時刻設定が可能ですし、生徒数によってはA300-600RB747-146/SUDなどの大型機材を投入する事も可能になります。JTA(或いはJAL)としても、座席の売れ残りというリスクを抱えなくて済みますから、どうせ修学旅行客相手なら、定期便よりもチャーター便での運航を好む事でしょう。何せ、富山や高知でJTAは散々懲りているはずですからね。


2.B737-400が深夜・早朝に那覇=新北九州を1往復する。

 関門通信はこの説を推していますが、実に眉唾ものです。深夜・早朝に運航するとなれば、新北九州空港の運用時間を考慮すると、

  • NU098 OKA 2340 → KKJ 0130+1
  • NU091 KKJ 0515 → OKA 0710

 といった感じの時刻になるのでしょうが、果たしてこんな時刻でどれだけの乗客が集まるのでしょうか。新北九州空港のバスアクセスが全然期待できないのは勿論として、自家用車利用にしても、1時過ぎに新北九州空港から運転して帰るのはかなり酷です。時刻設定がハードになる分、沖縄での現地滞在時間は長く取る事が出来ますが、現状でもアウトバウンド早朝発・深夜着には繁忙期でも特便割引が設定されている事を考えれば、定期便として飛ばすほどの需要があるかどうか、甚だ疑問です。どうせ深夜便で売り出すのであれば、スカイマーク那覇線のように、新北九州深夜発・早朝着のダイヤに設定すべきでしょう。
 ここで、前掲記事の通り「修学旅行客を見込んで」との事であれば、このダイヤ設定はなおさら疑問が深まります。まさか、スクールバスが深夜・早朝に生徒の自宅を1軒ずつ回っていくのでもあるまいし、集合や解散に当たっては保護者の送迎が必要不可欠になってしまいます。小中学校であれば徒歩圏で収まるかも知れませんが、それならそれで今度は防犯上の課題が出てきます。何れにしても、修学旅行での深夜・早朝便の利用は、保護者への過大な負担が前提となるのであり、決して推奨されるべきものではありません。
 もう1つ、修学旅行での利用について疑問を挙げるとするなら、那覇出発までの時間の過ごし方です。23時近くともなれば、観光・文教施設は軒並み閉まってしまいますし、かといって長時間那覇空港で待たせておくというのも他の旅客にとっては迷惑です。ここで、「夜の松山で遊んでこい!」と言い切れる豪放磊落さを兼ね備えた学校ならばいざ知らず、「夜間に生徒を繁華街に行かせるのはちょっと……」という反応をする大抵の学校にとっては、生徒も学校も時間を持て余すばかりでしょう。別に、小人閑居して不善を為すとまでは言いませんが、全行程を消化したのであれば、生徒をとっとと帰らせるに越した事はありません。旅行期間が長くなればなるほど、学校側のリスクも大きくなるのです。


3.A300-600Rが深夜・早朝に新北九州=那覇を1往復する。

 北九州圏域の利用者にとって最も便利なのが、このパターンです。既に、那覇深夜便の需要はスカイマークが季節運航で示した通りであり、時刻設定や価格戦略さえ間違えなければ、一定の顧客層を確保する事が出来ます。また、このパターンであれば、新北九州空港でナイトステイする機材を有効活用する事が出来ますから、余程低イールドになる売り出し方をしない限り、航空会社にとってもある程度の利益が見込めます。
 ここで、A300-600Rを持ってきたのは、JALが3月16日からナイトステイさせる可能性が最も高い機材だからです。歴史的経緯からして、羽田=新北九州は主として日本航空ジャパン(旧JAS)が運航する事になるのでしょうが、この路線が主として北九州アウトバウンド需要に支えられている事を考慮すれば、最大の需要が見込まれる羽田発夜便・新北九州発朝便には、岡山や出雲と同様、ある程度のキャパシティを持った機材が投入される事が予想されます。B777-289新北九州空港にナイトステイさせるほど機材に余裕がありませんから、残る大型機材となるとA300-600Rしかないのです。近い将来に新北九州空港へ就航するギャラクシーエアラインズもA300-600RP2Fを導入するという事も、忘れてはいけません。
 しかし、これはこれで大きな疑問が残ります。それは、JTA便名でA300-600Rが投入される事などあり得ないというものです。羽田=宮古の夏期輸送でJALのB767-346をウェットリースする事はありますが、B777-246A300-600Rのウェットリースという前例はありません。同様に、MD-81やMD-90のウェットリースというのも、JTAにおいては前例がありません。もし、B737-400やB767-346以外の機材で運航するのであれば、最初からJTA便ではなくJAL便での運航となっていた事でしょうし、メディアによる報道も「JALが新北九州=那覇線に就航」となったはずです。やはり、A300-600Rの可能性は低いのでしょうね。


4.B737-446が深夜・早朝に新北九州=那覇を1往復する。

 非常に可能性は低いですね。この時刻を実現する為には、羽田→新北九州の最終便や新北九州→羽田の始発便をB737-400で運航しなければならないのですが、これでは些かキャパシティが不足してしまいます。一番稼げる時間帯にB737-400では、剰りにも弱気すぎるでしょう。
 近隣空港からB737-400をフェリー? んなアホな。


5.B767-346が深夜・早朝に新北九州=那覇を1往復する。

 あり得ません。
 以上、終わり。



 以上を考えるに、どれも胡散臭く、果たして採算が合うのか疑問だらけのJTA新北九州線ですが、確実に採算ベースに載せる方法が1つだけあります。それは、福岡県や北九州市補助金を集る事です。要は、ギャラクシーエアラインズの時と同じ方法ですね。
 新北九州空港は、「24時間発着可能な海上空港」というのを宣伝文句にしています。実際には、管制上の都合で運用時間は早朝5時から翌深夜2時までになるんだそうですが、深夜・早朝の発着が売りになる事に変わりはありません。実際、スターフライヤーはこの運用時間を前提とした想定ダイヤを繰り出しています。
 ところが、この深夜・早朝便というのは余り大きな需要ではありません。現在、日本には新千歳・羽田・中部・関空・佐賀・那覇という6つの深夜運用可能な空港が存在しますが、前述のスカイマーク那覇深夜便を除き、定期旅客便が成立した事例はゼロです。佐賀の場合は元々貨物目的なので特殊ですが、それ以外の空港については、今直ぐにでも深夜旅客便を開設できるにも拘わらず、各社とも就航させていないのが現状です。
 新北九州空港は、これらの空港に続く深夜運用可能な空港です。しかも、空港建設の意義として、この「24時間空港」を前面に押し出しています。つまり、新北九州空港の深夜・早朝便が失敗する事は、即ち新北九州空港の事業正当性をも否定する事になるのです。既に「年間328万人」というウソがバレつつある昨今、「深夜便の失敗」でトドメを差される事は、新北九州空港盲信派としては何としても避けたい事態なのです。
 とあれば、新北九州空港のウソを守りきる為にも、スターフライヤーやJTAの深夜便は何としても成功させなければならないのです。新北九州空港の自我を守る為なら、深夜・早朝便への補助金など安いものでしょう。新北九州空港盲信派に必要なのは、実質的な利益よりも表見上の実績なのです。
 もし、JTA(或いはJAL)がこうした北九州サイドの足下を見て、端から補助金狙いで新北九州に参入しようとしているのであれば、なかなか強かな航空会社であると言えましょう。何せ、赤字のリスクゼロで夜中に遊んでいる機材を飛ばせるんですからね。お座なりにやっても補助金ガッポシ、根を詰めれば新規マーケット開拓と、JTAにとっては損する要素が存在しないのです。
 はてさて、深夜・早朝便という匕首を喉元に突き付けられた格好の新北九州空港ですが、これをどう切り返してくるのか、今後の展開が楽しみです。っていうか、その前にプレスリリースですねorz

*1:これも、JTA B737-4Q3なのかJAL B737-446なのか不明なんですけどね。どっちも共通運用になっているはずなので、区別するだけ無意味かも知れませんが。

*2:一説によると、羽田=石垣・宮古といったJTA離島路線では、座席数の80%程度が旅行会社に卸され、個人運賃として発売される座席数は精々30席程度なんだそうです。もし、この説が本当だとすれば、桃月学園の修学旅行なら全クラス同時……はちょっと厳しいかも知れませんね。