五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

JAL2404便が乱気流に遭遇

 日本航空706便事故の裁判の陰で、こんな哀しい事故も起こっていました。

○乱気流で乗務員4人けが 鹿児島発、伊丹行き日航

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○乱気流で日航乗務員4人軽傷

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 乗客に負傷者がいなかったというのがせめてもの救いですが、揺れが予想される飛行条件下における客室乗務員の安全確保が等閑にされているという現状が改めて浮き彫りになってしまいました。「JAL706便で係争中なのに……」などと言う気は毛頭ありませんが、遺族感情を徒に悪化させてしまったであろう事は想像に難くありません。DC-10福岡空襲の時といい今回といい、JALにおける航空事故の間の悪さは驚異的というべきでしょう。



 最近のJAL便では、機長または先任客室乗務員による巡航中のPA*1で、予定到着時刻だけでなくシートベルト着用サイン点灯予定時刻も乗客に伝達される事が増えてきました。着陸準備を円滑に実施し、到着遅延を減らす為には、シートベルト着用サイン点灯予定時刻を伝達し、乗客に定時運航への協力を依頼する事が必要不可欠です。事前予告の必要性については以前にも書いた通りなのですが、少しずつそれが広まってきたのは、一乗客としても嬉しい限りです。
 これも繰り返しになってしまいますが、乱気流に対する安全度は、

 運航乗務員>乗客>>>>>客室乗務員

 の順番であり、客室乗務員のみが極端に乱気流による死傷のリスクに晒されているのです。というのも、

運航乗務員
運航中は原則として常時シートベルト着用。また、コックピットの各種計器類や地上機関との各種無線通信によって、周囲の気象条件を他の誰よりも早く入手する事が可能。
乗客
着席している限り、常にシートベルト着用可能。化粧室利用中などでなければ、基本的に乱気流での上下動による負傷は回避可能。
客室乗務員
巡航中は、機内サービス実施の為、着席している事は殆どない。また、シートベルト着用サイン点灯後であっても、機内の安全確認をしてからでないと着席できない。

 という差異があり、シートベルトによる安全性の享受が制限されているからです。勿論、客室乗務員を保安要員と割り切って、一切の機内サービスを実施しなければ、客室乗務員にもある程度の安全性は保障されるのでしょうが、何処かのスカイマークでもあるまいし、とてもそんな事が実行に移されるとは思えません。
 とあれば、運航乗務員に求められる事は唯一つ、客室乗務員が着陸準備を実施する余裕時間を確保して、早めにシートベルト着用サインを点灯させる事です。PAにおけるシートベルト着用サイン点灯予定時刻は、恐らくフライトプランにおける降下開始時刻または進入開始時刻を基に設定しているのでしょうが、航空機に乗り慣れない旅客の一般的な感覚は「シートベルト着用サインが点灯するまでは客室乗務員に用件をお願いしてもよい」というものであり、客室内の最終的な着陸準備はシートベルト着用サイン点灯後にならないと着手できないケースもままあります。これは即ち、機内サービスのオーダーストップから揺れの発生する危険性がある運航への移行リードタイムがゼロであるという事であり、とても客室乗務員の安全など確保されるはずもありません。勿論、乗客に対して「携帯電話の電源OFF」や「シートベルト常時着用」と同列に着陸準備リードタイムの認知徹底を図るという事も同時に必要となるのですが、安全確保の実効性を考えれば、やはりシートベルト着用サインの点灯に優るものはありません。
 乱気流の遭遇に際して真っ先に負傷するのは、機内における航空会社と旅客との接点となる客室乗務員です。その客室乗務員の安全を確保するのは、運航乗務員の責任であると同時に、その運航乗務員を監督する航空会社の責任でもあります。定期航空協会や国土交通省においても、乱気流遭遇時の客室乗務員の安全確保について、法令制定を含む具体策を提示すべきでしょう。

*1:Public Announcementの略です。所謂「機内放送」なのですが、通常のオーディオプログラムにインターセプトを掛けて放送されるのが特徴です。この時、デジタル式のオーディオスイッチにおいては、チャンネルに「PA」と表示されます。