五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

JALのB777-300、逆推力装置の安全ロックを解除し忘れて運航

 今回は、流石にJALが悪いとしか言いようがないのですが。

日航、逆噴射装置が作動しない状態で旅客機を運航

○逆噴射、働かず 新千歳に着陸時 日航機、整備ミス

http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20050727&j=0022&k=200507273558

 まぁ、日航機羽田沖墜落事故(所謂「逆噴射」)を知る人であれば、「JALに逆噴射なんか使わせるな」とか言い出しそうなものですが、やはり本来動く事が想定されているものが動かないというのは安全上大きな問題があります。性能上は逆推力装置が不作動でも問題なくても、逆推力装置が作動しないという事に起因する精神的パニックが事故を引き起こす危険性があるからです。

○事故No,19820209ja 通称:日本航空羽田沖墜落事故

http://www004.upp.so-net.ne.jp/civil_aviation/cadb/disaster/accident/19820209ja.htm

 だからといって、こんな誤解を招く見出しを付ける記者のセンスにも、それはそれで問題があるのですが。

日航機、逆噴射できない状態で飛行

○羽田発新千歳行き日航機、逆噴射不能のまま飛行

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050726i316.htm

 飛行中に逆噴射出来る状態であれば、それはそれで設計上の大きなミスですし、前掲の羽田沖墜落事故においても、飛行中に逆噴射を作動させる事が出来るという設計仕様が事故の大きな引き金となっています。まぁ、何処かの「ジャーナリスト崩れの邦人タレント」も日記で言及しているようですが、半可通の人間が航空ネタで記事を書くと赤っ恥を掻くという事ですね。尤も、本人が恥を恥とも思わなければ、どうしようもない話なのですが。
 因みに、聞きかじった話によると、航空機の着陸性能は、フルリバースではなくリバースアイドルでの逆推力装置利用を前提にしているんだそうです。実際、着陸時のブレーキにおける逆推力装置の寄与率は高々7%前後という話もありますし、何事もなければ滑走路長は余るのが普通*1なんですから、管制指示違反や食器トレー未収納などに比べれば、逆推力装置の不作動なんて、ある程度危険性は低いんですけどね。勿論、危険性が低いからやってもいいという事ではありませんが。
 で、これは蛇足ですが、敢えて不謹慎を承知で言うなら、こんなミスを羽田→新千歳で起こしてくれるのは非常に勿体ない話です。どうせミスするなら、成田到着便、それも16L*2の時にやれっていうんですよ。うまい事反対派農家に突っ込んでくれれば、JALにとっても怪我の功名というものです。新千歳や羽田でオーバーランしても何にもなりません。まぁ、伊丹や福岡でオーバーランしたら廃港運動が湧き上がりそうですけどね。

*1:これまた聞きかじりですが、航空機の着陸滑走距離は、実際の着陸性能の1.67倍程度に余裕を持たせているんだそうです。つまり、実際にはカタログ値の60%の長さもあれば着陸できる事が殆どで、法的には2,500mの着陸滑走距離が必要な航空機なら、実運用上の着陸滑走距離は1,500m程度だという事です。
とは言え、法的な着陸滑走距離にはそれなりの意味があり、「実際には1,500mもあれば着陸できるんだから、2,500mもの滑走路は必要ない」という事にはなりません。着陸滑走距離は、悪天候やイレギュラーなどを見込んだマージンを含む長さですから、そのマージンを縮める事は、即ち安全運航上のゆとりをも奪う事になります。
佐高信との痴話喧嘩でお馴染みの某作家が、自身のメールマガジン「日本国の研究」で、「羽田空港の滑走路なんか半分も使われていない」などと宣っていましたが、ある意味滑走路の半分は使われなくて当然なんです。燃料も貨物もいっぱいいっぱいに積んでいる長距離国際線ならいざ知らず、たかが国内線程度で3,000mの滑走路を使い切ってしまう方が異常です。こんな調子だから、道路公団改革で官僚のいいように踊らされてしまうんですね。本人が改革者気取りだというのが、端から見ていて非常にイタいのですが。

*2:B滑走路(暫定滑走路)を南向きに着陸する場合の滑走路です。オーバーランし過ぎると、空港反対派農家に突っ込んでしまいます。