もう1つ、航空ニュースです。
○羽田空港の発着枠、12月から1日14便増へ
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050827i501.htm
元々、この14枠増は今月から実施される予定でしたが、相次ぐ管制トラブルを承けて自民党が国土交通省に横槍を入れた結果、増枠の実施が延期されていました。
○羽田の増便、今夏は見送り・トラブル続発で
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20050522AT1F2100J21052005.html
猪瀬直樹なんかは、これでも「ヒースローやガトウィックに比べれば、羽田の発着枠はスカスカだ」と言い出しそうなものですが、A滑走路もB滑走路も使用方向が限られている現状では、こういう少しずつの増便が限界でしょう。ノースバード*1をやろうにも、RWY 16RにILSを設置できなければ、とても使い物になりません。っていうか、RWY 16RにILSを設置できるくらいなら、最初からRWY 16LにILSを設置していますね。大崎や品川に高層オフィス街が広がり、東京タワーや六本木ヒルズ森タワーなどの超高層建築が相次いでいる現在、16Rだろうが16Lだろうが、北側からの計器進入は設定不可能でしょうが。
取り敢えず、現時点では航空会社別の割り当ては未確定で、
- 国内線:10枠
- 大手航空会社:5枠
- 新規航空会社:5枠
- 国際線:4枠
- 羽田=金浦シャトル便:4枠
という枠組みだけ決定しています。既に、日航・全日空・大韓・アシアナの4社が公用機枠を暫定的に利用して就航している金浦線については、今回の発着枠割り当てがそのまま現状追認となる事でしょう。しかし、国内線枠については、JALvsANA、スカイマークvsスカイネットアジアvsAIR DOvsスターフライヤーのそれぞれで、激しい綱引きになる事が予想されます。まぁ、国土交通省の事ですから、「関空便に使います!」って断言すれば、その場で発着枠の当確を出しそうな気がしますけどね。
今回の羽田増枠によって、今年4月の羽田発着枠再配分と合わせて、新規航空会社には合計25便が確保された事になります。一方で、新規航空会社から出ている発着枠の申請を見てみると、
となっていて、合計すると26枠になってしまい、何処かを1枠削らなければならなくなってしまいます。果たして、何処を削るのかという事について、今回も幾つか予想を立ててみました。
◎本命:スターフライヤーが8枠以下に抑えられる
まぁ、順当な結論でしょう。何の実績もない新規航空会社がいきなり9枠もくれと言ったって、国土交通省がすんなりと認めるはずもありませんし、認めたら認めたでスカイマークやAIR DOから依怙贔屓だと批判されるのは目に見えています。そうでなくても、スターフライヤーには既に6枠も羽田発着枠を留保しているのですし、その分だけ羽田発着枠という貴重な資源を無駄にしている事になります。幾ら最後発の新規航空会社とは言え、国土交通省もこれ以上スターフライヤーを甘やかす訳にもいかないでしょう。
抑も、深夜・早朝が3枠とは言え、いきなり1日に9往復も就航しようという事自体、スターフライヤーはかなり贅沢です。現在、羽田=北九州にはJALのMD-87(乗客定員:134名)が1日4往復しているだけであり、年間利用者数は精々30万人程度です。そこに、スターフライヤーはいきなり現在の輸送力の倍以上もの輸送力をぶつけようというのですから、これにはアンチ新北九州空港の私でなくたって、「ちょっと待てよ」と言いたくなるでしょう。就航当初こそ、ご祝儀相場でそこそこ利用客がいるかも知れませんが、開港効果が薄れる頃には、輸送力過剰による弊害が次々と露呈してくる事でしょう。
ましてや、1日12往復の就航ともなれば、単純計算で現状の輸送力の3倍です。それに加えてJALの4往復+スカイマークの4往復なんて事になれば、たとえ全てが小型機だとしても過当競争は不可避ですし、JALやスカイマークが中型機を導入した日には、福岡線を上回る不毛な消耗戦に陥る事請け合いです。スカイマークの就航を考えなくても、やはりスターフライヤーは昼間6便の状態でスタートするのが妥当であり、それ以上の発着枠については、スターフライヤーの実績を見てから判断しても遅くないでしょう。
○対抗:スカイマークが7枠に抑えられる
この可能性も十分にあります。スカイマークが就航を目論んでいる神戸線には、JALもANAも揃って就航を表明しています。それぞれの便数は未確定ですが、最低でも1日に4便ずつは就航する事でしょうから、スカイマークと合わせると1日16便という大所帯になってしまいます。とあれば、発着経路や旅客シフトなどでの関空への影響も考慮して、国土交通省が神戸空港の総量規制を行う事は十分に考えられます。
とは言え、関空線で苦戦しているスカイマークの事ですから、仮に7枠しか配分されなかったとしても、関空線から1枠を回して8便分を確保しに行く可能性は残されています。この場合、関空線を3便だけ残すという事は考えにくいですから、新北九州線への割り当てや福岡線の増便などで3便分も使い切り、関空線からは完全撤退する事になりそうです。或いは、スカイマークが「神戸線8便が認められないなら関空線から削りますよ」と国土交通省に詰め寄るかも知れません。こうなると、あとは神戸と北九州との綱引きになるんでしょうね。
△穴:公用機枠から1枠を暫定捻出する
本末転倒というか元の木阿弥というか、余り増枠の意味がなくなってしまうような気もしますが、新規航空会社の意見を最大限尊重するのであれば、こういう方法もあります。元々、羽田=金浦シャトル便の増便はこの増枠を前提としたものですが、増枠が遅れたが為に暫定的に公用機枠を利用していた経緯があります。逆に言えば、公用機枠は暫定的に定期便で使える幾ばくかの余裕があるという事ですから、更なる羽田増枠が実施されるまでの間、暫定的に新規航空会社に使わせるというのはアリでしょう。
この場合、新規航空会社の羽田枠要求は何れも満額回答という事になりますが、これは新規航空会社にとっては大きなプレッシャーにもなり得ます。たとえ経営不振に陥っても、スカイマークやAIR DOが就航した当初のように「羽田発着枠が足りないから経営が軌道に乗らない」という言い訳が使えなくなるからです。もし、全社とも満額回答という結果になった場合は、今までよりも一層新規航空会社各社の経営能力が問われる事になるでしょう。
×大穴:JALから更に1枠を取り上げる
JALが顔色を変えて怒りそうですが、昨今の相次ぐトラブルを考えれば、国土交通省やマスゴミからこういう意見が出ても不思議ではないでしょう。確かに、「危険なJALなんかに使わせるくらいなら、新規航空会社に使わせた方が余程有効な羽田発着枠の使い方だ」と言われては、JALはそれに対抗するだけの論拠はありません。しかし、新規航空会社に満額回答する為に予定外の発着枠取り上げを行うという事が定着すれば、JALだけでなくANAにとっても堪ったものではありません。新規航空会社と同様、大手航空会社にとっても羽田発着枠は貴重な存在ですし、発着枠取り上げの煽りを食らって減便される都市にとってはいい迷惑です。
また、このタイミングでJALの発着枠を取り上げるなどという事をすれば、JALが報復的な減便を行う事も考えられます。その筆頭が関空線の減便ですが、他にも神戸線や北九州線など、国土交通省への嫌がらせとも取れるような減便の候補は幾つかあります。更には、スカイマークやスターフライヤーが新北九州に参入する事を承けて、発着枠減これ幸いと一気に北九州から撤退なんて可能性まであります。こうなっては、北九州市にとってはとんだ災難です。まぁ、新北九州空港にスターフライヤーが12往復も就航すれば十分でしょうから、これはこれでいい結果かも知れませんね。
×大穴:AIR DOが2枠に抑えられる
あり得ません。以上、終わり。
まぁ、スターフライヤーの昼間9枠が認められないであろうという事は、新北九州空港盲信派の関門通信でも自覚しているらしく、今日付でこんな記事が掲載されていました。
○どうなる? 新北九州空港羽田線
http://kanmontuusin.morrie.biz/item/405
この記事においては、今まで「あり得ない」と言い切ってきたJALの完全撤退にも言及しているなど、何時にもなく弱気です。まぁ、一方で「中部国際空港への就航は確実と言われている」などという新しい妄想を垂れ流していますから、妄想度としてはプラスマイナスゼロってところでしょうか。これで、「スカイマークの参入表明はやはりブラフだった」という可能性も考えられるようになれば、現状認識としては何とか及第点を出せるんですけどね。
【2005-08-29 追記】
大手航空会社の配分は、JALが2便、ANAが3便でした。
○羽田空港の発着枠、10月から14便増・新規組に5便配分
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050829AT1F2901S29082005.html
どうせ事業改善命令で差を付けるんだったら、たったの1便ぽっち差を付けるんではなく、5便まるまるANAに付けるか、JALから更に4便か5便くらい発着枠を取り上げてANAに割り当てるくらいの事をすればどうですかね。そうすれば、JALも思い切って何処かの地方都市から撤退できるというものです。例えば北九州線とか三沢線とか。
それにしても、気になるのはこの部分。
スカイマークエアラインズなど新規3社は、路線拡大などのために、来年3月までに20便分の発着枠を要望している。
さて、忘れ去られた新規航空会社は何処でしょうか?(;´Д`)
*1:羽田空港のA滑走路に北側から進入する着陸方法の事です。つまり、Runway 16Rへの着陸という事です。一時期、国土交通省がノースバード運航の実用性を調査していましたが、VFR(有視界飛行方式)での就航率確保が難しい事から、小型機定期便のノースバード実用化は見送られました。
詳しくは、以下のサイトを参照して下さい。
○東京国際空港北側進入(ノースバード運航)について
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha01/12/121012_2_.html