五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

スカイマーク、まさかの鹿児島撤退

 先ずは、こんなビックリニュースから。

スカイマーク鹿児島〜羽田線撤退へ、全便を新北九州線に

スカイマーク撤退へ 「裏切られた」/鹿県内反応

http://www.373news.com/2000picup/2005/09/picup_20050916_2.htm

 一応、関門通信のニュースソースも。

スカイマーク、鹿児島から振り替え

http://kanmontuusin.morrie.biz/item/417

 ええ、帰宅してから大石英司先生のブログで知った大馬鹿野郎はこの私です。長崎でJEXの事なんか書いている場合ではありませんでしたねorz



 さて、スカイマークの新北九州殴り込みについて、私は以前「流石に鹿児島線を減便するような事はないでしょうが」と書きましたが、まさかその鹿児島線が減便どころか撤退というのには、驚きどころか、今でも信じられないくらいです。伊丹・新千歳・徳島・関空とズッコケ続きのスカイマークにおいて、羽田=鹿児島は羽田=福岡に次ぐ優等生なのですが、これをバッサリ切ってしまおうというのですから、最早スカイマークは気が触れたとしか言いようがありません。或いは、これはスカイマーク自滅へのカウントダウンなのかも知れません。
 とは言え、よく考えてみると、スカイマークが鹿児島を撤退の選択肢にした事にも、一応の説明は付きます。今回、福岡便の減便が行われなかったという事は、スカイマーク内部においては、「新北九州の発着枠捻出は、減便ではなく撤退で行う」というのが既定路線だったのでしょうが、いざ撤退しようとなると、

徳島
JALのシングルトラックになってしまう為、公正取引委員会がいい顔をしない。
関空
就航から1年未満での撤退では、関空の顔に泥を塗る事になってしまい、国土交通省を敵に回す事になる。

 という問題がある為、一番波風が立たず、役人に目を付けられなくて済む方法は、鹿児島からの撤退だったのです。
 羽田=鹿児島であれば、現在既にJALが7往復、ANAが6往復就航していますから、スカイマークが撤退したからといって、直ぐに競争がなくなる訳ではありません*1。また、JALもANAも中型機ないし大型機での運航であり、B767-300で4往復しているだけのスカイマークは、鹿児島では埋もれた存在になりつつあるのも確かです。こんな中、B737-800への機材リプレースが進み、羽田=鹿児島もB737-800での運航という事になれば、スカイマークの存在感はいよいよ小さくなります。そういう意味では、早めの撤退という選択肢もある意味「アリ」なのでしょう。
 しかし、関西においては関空・神戸・徳島、九州においては福岡・新北九州と、近接地域に複数路線を就航させるとは、スカイマークは気が触れたというよりもバカですね。「近接空港を競争させる事により、航空会社としてのベネフィットを大きくする」などという不遜な事を考えているのだとしたら、夜郎自大もいい所です。JALやANAほどの規模があるのなら別段、スカイマークレベルであれば、分散よりも集中の方が大事です。商圏が重なる空港にそれぞれ就航した所で、空港間競争によるベネフィットを享受する前に、自社便同士のゼロサムゲームで両路線とも疲弊してしまうのが関の山でしょう。その疲弊を運賃に転嫁するような事があれば、利用者は一気にそっぽを向いてしまいます。運賃の安さで売ってきたスカイマークだからこそ、その安さを放棄する事は市場が許さないのです。



 ともあれ、今回の鹿児島撤退により、さしもの「オオカミ少年スカイマークも、いよいよ新北九州への就航を撤回出来なくなってしまいました。唯でさえ、戦略路線と位置付けるには剰りにも便数が少なく、開港半年前の就航表明で地元企業への営業活動も不十分な状況だというのに、鹿児島からの撤退でイメージダウンまでしてしまっては、いよいよ先発のスターフライヤーに勝てる見込みがなくなってしまいます。これで、スカイマークが新北九州からも敗走という事になれば、いよいよスカイマークの信用は地に墜ちます。その辺の危機意識をスカイマークが何処まで持っているのか、私は甚だ疑問でなりません。
 或いは、この鹿児島撤退こそが、上記の記事で私が指摘した「新北九州就航ブラフ」のトリガーなのかも知れません。当然ながら、スカイマークの鹿児島撤退には地元から非難や批判の声が相次いでいるのですが、こうした声に押されて鹿児島撤退を断念したという事にすれば、単に新北九州への就航を撤回するよりも、スカイマークのイメージは悪化しなくて済みます。自主的な撤退断念ではなく、公正取引委員会国土交通省が出てきての撤退断念という事になれば、なおの事スカイマークへの同情票が集まります。新北九州空港盲信派にとっても、スカイマークの就航撤回を国の所為に出来ますから、自慰するには都合がいいでしょう。
 もし、鹿児島撤退に関する種々の反応を予測し、剰え鹿児島政財界から更なる財政支援を引き出す事に成功したとなれば、スカイマークの「オオカミ少年」ぶりもなかなか強かな経営戦略であると言えましょう。とは言え、新北九州就航に至るまでのグダグダを見る限り、とてもスカイマークにそこまでの強かなブラフ戦略遂行能力があるとは思えないのですが。っていうか、そんなに強かなブレーンがスカイマークにいるのであれば、最初から羽田=関空なんかに就航しませんね。

 それにしても、今回のニュースソースは、報道する側にも報道される側にもいい感じのツッコミポイントがあります。
 先ずは、報道する側という事で、関門通信の記事から。

 スカイマークの不採算路線の撤退は、福岡―伊丹、伊丹―千歳(札幌)、羽田―青森線に続いて4番目。しかし鹿児島線は積極的撤退ではなく消極的撤退なのだから、羽田再拡張の後に復活する見込みが十分にある。

 撤退に積極的も消極的もないでしょうに。まるで、大本営発表で撤退を転進と言い換えているかのようです。それに、敢えて「消極的撤退」というのであれば、それは決して今回のような撤退劇を言うのではなく、「減便しても機材縮小しても一向に業績が回復せず、万策尽き果てての撤退」のようなものを指すと思うんですけどね。その典型例が、米国同時多発テロ直後の札幌線減便・新潟線運休から今般の関空線減便・福岡線運休に至るまでのJALホノルル線です。
 次に、報道される側という事で、南日本新聞の記事から。

 誘致の先頭に立った岩崎産業の岩崎芳太郎社長は「新規参入を国が認めたのは、主要地方路線の競争を促し利便性の向上を図ったもの。SKYの鹿児島線4便の国の認可は、SKYだからではなく鹿児島に認められたものだと思う。鹿児島線の枠をそのまま新北九州空港に持っていくのなら、枠を国に返せと言いたい」と批判した。

 その言葉、そっくりそのまま鹿児島商船に返ってきますね。岩崎産業は、スカイマークに何だかんだと文句を付ける前に、トッピーの運航をどう継続していくかを考えた方がいいと思うのですが。まぁ、鹿児島線の枠をそのまま新北九州空港に持っていくのなら、枠を国に返せ」という部分には、アンチ新北九州空港の私も同調してしまう部分もありますが。

*1:但し、JALとANAとがカルテルを組む可能性は残っていますが