五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

新北九州空港のトホホな経済効果

 特に予定もない日曜日ですし、たまには航空ネタで何か書かなきゃなぁと航空系掲示板やブログの類を巡回していたところ、こんな記事が目に留まりました。

百里空港は鹿島鉄道を救えるか? Cassiopeia Sweet Days/ウェブリブログ

http://nozomi.at.webry.info/200510/article_32.html

 勿論、この記事は百里空港に関するものなのですが、私の目が向かったのは、百里空港でも鹿島鉄道でもありません。

 どういう根拠で経済効果が4.8倍になるのかという気もするのですが、一から空港を作るよりは絶対安上がりに決まっていますから、神戸空港新北九州空港に比べれば大きくなるのでしょう。

 という行を見て、私は「おっ、遂にのぞみくんもアンチ新北九州空港の仲間入りか?」などと独りほくそ笑んでいたのですが、それが私の勝手な思い込みである事は、5秒後には判明しました。何の事はありません、引用元記事で神戸空港新北九州空港の経済効果が比較対象になっていただけです。

○空自百里基地:民間共用化、県が利用促進懇話会 計画、利便性など説明 /茨城

http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/ibaraki/news/20051022ddlk08010378000c.html

 この4.8倍という経済効果の信憑性もかなり疑問ですが、それにしても驚いたのは新北九州空港の経済効果です。誰が試算したのか知る由もありませんが、新北九州空港の経済効果が建設費+維持費の1.9倍しかないというのですから、アンチ新北九州空港の私もビックリです。それも、開港から5年10年などといったスパンでの話ではなく、50年も空港を使い続けての経済効果がこれだというのですから、流石の私も開いた口が塞がりません。まぁ、こういう経済効果は得てして過大に評価されるものですが、それでも1.9倍という事は、それだけ新北九州空港には事業正当性がないという事です。



 ところで、この1.9倍という数字、一体建設費や維持費を何処まで勘定に含めているのでしょうか。新北九州空港の建設費については3説あり、それぞれの金額は以下の通り異なっています。

  1. 空港整備事業費のみ(約1,024億円)
  2. 空港整備事業費+港湾整備事業費(約3,380億円)
  3. 空港整備事業費+港湾整備事業費+連絡道路整備事業(4,000億円以上)

 当然ながら、私は新北九州空港を公平に評価する立場から3番の説を採用していますが、本来はこれに加えて東九州自動車道の建設費も総事業費に含めるべきであると考えています。単に東九州自動車道新北九州空港アクセスに必要不可欠であるというだけでなく、道路公団民営化とクロスオーバーするこの時期に、民営化会社に敢えて建設費という負債を置き土産にしていく必然性も必要性もないからです。開通区間といい開通時期といい、東九州自動車道新北九州空港の為に間に合わせで建設された事は明らかなのですから、他地区との公平性確保の為にも、この区間の事業正当性は新北九州空港と一体不可分に評価すべきです。
 話を元に戻すと、1.9倍という数字は、新北九州空港に大きく凭れ掛かるジレンマとなります。建設費を1番とすれば、新北九州空港の経済効果は1,000億円もないという事になりますし、建設費を3番とすれば、「海上空港としては非常に安価」という新北九州空港盲信派のマントラを自己否定する事になります。つまり、新北九州空港に与えられる評価は、「安いばかりでろくに経済効果もない無駄空港」か「何だかんだで他空港と同様に税金をバカスカ注ぎ込む無駄空港」かの二択なのです。どちらに転んでも、「無駄空港」という結論に変わりはありません。単に、麻生渡&末吉興一の手練手管で、こうした無駄がなかなか露見していないだけの事です。
 惜しむらくは、今から納税者が新北九州空港の無駄に気付いた所で、新北九州空港建設事業を中止に追い込める可能性が限りなくゼロに近いという事です。遂に開港まで半年を切ってしまった新北九州空港において、心ある納税者がせめて出来る事はといえば、新北九州空港の需要予測と利用実績とを見比べて、如何に新北九州空港が無駄であったかを見極める事です。そして、単に「やっぱり無駄空港だったね」と振り返るだけでなく、麻生渡なり末吉興一なりといった新北九州空港推進派首長にキッチリとケジメを付けさせる事です。いい加減、日本の納税者も「責任の取り方」「責任の取らせ方」という事に長けてこなければ、いよいよ日本経済は完全に崩壊するまでです。



 それにしてもお粗末なのは、新北九州空港推進協議会の出鱈目かつ手前味噌な建設費比較です。

新北九州空港の特徴

http://www.qbiz.ne.jp/yumeq/gaiyou/tokucyo.html

 この【滑走路長1kmあたりの建設費】という資料では、新北九州空港の1km当たり建設費が500億円以下であるかのように書かれていますが、例によってとんでもないまやかしです。この図の下の方を見ると、小さな文字でこんな事が書かれています。

資料:「エアポートレビュー」「エアポートハンドブック」「新聞情報」「定期航空協会」などより
※建設費の範囲は同じでない

 「新聞情報」「定期航空協会」などという資料名が出てくる香ばしさも堪りませんが、何よりも注目すべきは※以下です。この図は、誰が何処からどう見ても空港建設費の比較資料なのですが、その比較となるべき建設費の範囲が空港によってまちまちだというのであれば、こんな比較資料には何の意味もありません。総事業費3,140億円の神戸空港新北九州空港の4倍に書かれている所を見る限り、こちらは空港島の造成費や連絡道路建設費なども含めた、本当の「総事業費」で計算されているようです。

神戸空港WebSite-財政計画-

http://www.city.kobe.jp/cityoffice/39/030/zaisei.htm

 こうした手前味噌にも口あんぐりとなってしまうのですが、それにもまして無茶苦茶なのは、海外空港の扱われ方です。この図を見る限り、第二バンコクやマレーシア(恐らくクアラルンプール)は海上空港であるかのように思えますが、スワンナプームもセパンも内陸部にある陸上空港です。

コロラド州

http://www.ts-network.ne.jp/~swan/USANP/IDXs/Map/CO/map00.htm

 経済効果云々の前に、新北九州空港盲信派には一般常識から叩き込んだ方がよさそうでorz