五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

日本のIT業界は「再生」するか?

 取り敢えず、今日はこんなネタでお茶を濁しておきます。

○みんなで考える日本のIT再生計画

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20051124/225083/
 ここでは、主要なテーマとして以下の4つが挙げられています。

  1. なぜIT業界に集まる学生が減っているのか?
  2. 世界に通用するソフトウエアが存在しないのはなぜか?
  3. 国内企業の収益が回復しているのにもかかわらず、ユーザー企業のIT投資が増えない理由は何か?
  4. IT業界を盛り上げるためどのような国策や教育改革が必要か?

 実際にIT業界で働いている人間として、上記のテーマには何れも強い違和感を抱かざるを得ません。というのも、この記事を執筆した戸川尚樹氏が、IT業界を何か特別なステータスがある業界だと勘違いしているからです。そりゃあ、日経コンピュータで記事を書いていれば、少しはIT業界に肩入れしたくなるのも解りますが、所詮IT業界なんてのは製造業の一種でしかないんです。



 要するに、システムエンジニアプログラマーなんてのは、工具をパソコンに持ち替えた職工なんです。日経やら何やらに持て囃されて、IT業界の人間自身も思い上がっている節がありますが、ハッキリ言ってシステムエンジニアなんてのは自動車工場の季節労働者と大差ありません。それぞれの仕事は、相互に何等貴賎の別はなく、本来は同等に評価されるべきものです。そういう意味で、現在のIT業界は、あらまほしき評価よりも過当に高い評価を受けているというべきです。
 結局の所、IT業界の実力や評価を高めたいというのであれば、製造業及びその従業員の全体的な実力や評価を高めるしかないのです。「ITプロフェッショナル」なる存在を「工具がパソコンになっただけのブルーカラー」と正しく再評価した上で、ブルーカラーそのものの評価を全体的に高めていく事でしか、IT業界の底上げなど起こり得ないのです。IT業界に従事する人間がその思い上がりを改めない限り、永久に理想と現実とのギャップは埋まらない事でしょう。
 労働者や野次馬記者が思い上がっているのを尻目に、IT業界の経営者層は、着々と「ITプロフェッショナルの正当な評価への回帰」を進めています。そろそろ、IT業界に対する幻想を誰かが打ち砕かなければ、その内こんな現実がIT業界にも訪れる事でしょう。
自動車絶望工場 (講談社文庫)

自動車絶望工場 (講談社文庫)

 創価学会の回し者が書いた本を紹介するのも、なかなか気が引けるんですけどね(;´Д`)

 ……という話を踏まえた上で、4つの主要なテーマに対する私の回答を提示しておきます。

1.なぜIT業界に集まる学生が減っているのか?

 IT業界に対する幻想が覚め、所詮「ITプロフェッショナル」というものが職工の1類型に過ぎないという認識が普及したからです。大卒で工夫や鉱夫になろうとする向きが少ない以上、それらと同等であるIT業界の志望者が少なくなるのも当然です。

2.世界に通用するソフトウエアが存在しないのはなぜか?

 日本のような弱小国において、世界に通用する製品が存在しないのは当然です。寧ろ、トヨタやホンダが海外で収益を上げている事こそが異例であり、「それならIT業界も」と考えるのは思い上がり以外の何物でもありません。コンピュータのように言語対応以外でのローカライズが殆ど不要な世界では、国際規模で既に展開されている製品を利用した方が、何かと安上がりになります。デファクトスタンダードを握れなかった時点で、日本に浮上の目はありません。

3.国内企業の収益が回復しているのにもかかわらず、ユーザー企業のIT投資が増えない理由は何か?

 IT投資の必要がないからです。所詮、IT投資も一種の設備投資であり、既存の情報システムで対応できるのであれば、敢えて新規に情報システムを立ち上げる必要などありません。寧ろ、バブル崩壊以降、各企業が人員や設備の無駄を徹底的に排除したからこそ、今日の収益回復があるとも言えるのです。当然、その「無駄」の中には、ろくに使えない情報システムも含まれます。

4.IT業界を盛り上げるためどのような国策や教育改革が必要か?

 別に、盛り上げる必要はありません。強いてやるのであれば、第二次産業への回帰及び第二次産業そのものの地位向上です。しかし、今後の日本において第二次産業が飛躍的に発展する可能性はほぼゼロですから、相対的な第二次産業の地位向上とは即ち第三次産業の衰退であり、それは日本そのものの国力の低下をも意味します。自らを第二次産業であると認識できない業者を駆逐する為にも、IT業界に対しては盛り上げよりも締め付けの方が必要でしょう。

 というのが、私の考え方です。何だかんだで定年までいそうな業界に対する発言ではありませんね。それが、ブロハラクオリティ。