五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

なかなか見えてこない100ドルPCの用途

 今週に入ってから、ソニー・NEC・富士通と、PCの春モデルが続々と発表されてきました。残念ながら、私の期待は空回りした為、今年後半のWindows Vista&Conroe待ちといった感じなのですが、この時期になると、面白いパソコンが登場します。それは、マサチューセッツ工科大学が開発した、所謂「100ドルPC」です。
 この100ドルPCに関して、nikkeibp.jpにこんな記事がありました。

○「$100ノートパソコン」は世界をどう変えるか?

http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/news_commentary/060111_100pc/

 100ドルPCについては、昨年から色々と報道はあったのですが、これらの報道を目にする度に、私はそこはかとなくOLPC*1に違和感を覚えていました。そして、この記事によって、その違和感の正体が分かりました。それは、100ドルPCを何に使うのか、皆目見当が付かないという事です。



 この100ドルPCには、ブラウザやメールソフト、ワープロといったアプリケーションソフトがプリインストールされ、OS標準でP2Pにも対応しているんだそうです。なるほど、これだけの機能があれば、そこそこ立派なPCであるとも言えるのですが、問題はそれらのソフトの使い道です。当然の事ですが、ソフトウェアは目的ではなく手段であり、そのソフトウェアによって何が実現されるのかという事が重要になってくるのです。
 OLPCは、この100ドルPCを発展途上国の子供達に向けて提供しようとしています。なるほど、パソコンを持てる者と持たざる者とのデジタルデバイドを解消しようという精神は誉めるべきです。しかし、この100ドルPCによって子供達の生活が豊かにならなければ、100ドルだろうが10ドルだろうが、PCは無用の長物になってしまうのです。ちょうど、日本のオッサンにとってPCがソリティア専用機となっているようなものです。
 上記の記事にしろ、或いは先行するCNET Japanなどの記事にしろ、この100ドルPCによって子供達に何を実現させてあげようとするのか、その用途や目的といった視点が欠けています。発展途上国の子供達がインターネットにアクセスできる事によって、どう発展途上国の生活水準が向上するのでしょうか。或いは、子供達がワープロソフトを手にする事によって、どう子供達の生活が豊かになるのでしょうか。「1人1台」というモットーを掲げている以上、子供達の生活に根付かないソリューションの提示など、何等意味を持ち得ません。単に「発展途上国の子供達がPCを使えるようにする」だけであれば、1人1台にする必要などなく、学校に十分な台数のPCを導入すれば事足りるのです。

 パソコンは、非常に汎用性の高い機械です。テレビやエアコンと異なり、その用途は決して限定されていません。しかし、汎用性が高いからこそ、パソコンの導入には目的意識が必要なのです。パソコンを何に使うのかという事をハッキリさせておかなければ、あっという間にパソコンは唯の箱と化してしまいます。
 上記の記事においては、支那における携帯電話の爆発的な普及を引き合いにして、ネットワーク・インフラ整備の容易さを説いています。しかし、黎明期の携帯電話ほど用途がハッキリしている機械もなく、それだけ利用者も目的意識がハッキリしているものです。その支那においてすら、最近ではショートメッセージの利用が定着してきており、端末の多機能化が既定路線となりつつあります。

北京市民の5割が「ショートメッセージは不可欠」

○中国の携帯電話、普及型とインテリジェンス型に二極化の傾向

http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/flash_rss/419160

 日本における家庭用ビデオデッキの普及にしたって、洗濯屋ケンちゃんを見るという目的意識がなければ、到底実現され得なかった事でしょう。i-modeを始めとした携帯電話によるインターネット接続の一般化も、出会い系サイトの普及あってこそです。
 まぁ、100ドルPC導入のモチベーションをエログロナンセンスに求めるなど、MITは決してやらない事でしょう。しかし、発展途上国の子供達に対しては、PCを所有する喜びだけでなく、PCを生活に役立てる喜びを教えてあげなければならないのです。発展途上国の生活と100ドルPCというITとが融合した時、100ドルPCは真の普及を迎える事でしょう。そうなれば、世界で1億人のユーザーというのも、夢ではなくなるかも知れません。

*1:One Laptop per Childの略です。要するに、「全ての子供にパソコンを」って事ですね。