五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

JAL国際線の勇気ある撤退

 2ちゃんねる航空板にあった噂は本当でした。

日航、国際4路線撤退へ/関空−ロサンゼルスなど

日航、4国際線撤退へ 広島―ソウルなど

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200601200001.html

 関空厨としては憤懣やる方ありませんが、どれもこれもイールドが低い路線ばかりですから、寧ろ撤退の決断が遅過ぎたというべきでしょう。まぁ、4路線とはいっても、広島=ソウル、小松=ソウルの撤退は既報ですから、今回新たに撤退が発表されたのは、

 の3路線です。この内、大阪=ブリスベンシドニーは「撤退を検討」という一歩手前の状態ですが、これも来年3月での撤退は必定と見ていいでしょう。何せ、全くといっていいほどビジネス需要が存在しない為、飛ばしても飛ばしても儲からないんです。過去に以遠権を行使して大阪=シドニーに本格参入しようとしていたノースウェストも、今頃は「やっぱり運輸省に従ってシドニー線を断念しておいてよかった」と胸を撫で下ろしている事でしょう。



 さて、大阪=ロサンゼルス線が撤退となると、俄然クローズアップされてくるのが、機材運用での関連性が非常に深い大阪=ロンドン線です。今回の報道では、大阪=ロンドン線の去就について何も触れられていませんでしたが、大阪=ロサンゼルス線が撤退となる今年10月には、何等かの動向がある事でしょう。取り敢えず、現時点で思い付くのは、以下の4つです。

  1. B777-246ERに機材変更し、現在のデイリー運航を維持。
  2. FクラスのないB747-446に機材変更し、現在のデイリー運航を維持。
  3. Fクラスのある現行機材のまま、現在のデイリー運航を維持。
  4. 大阪=ロサンゼルス線の撤退と同時に、大阪=ロンドン線も撤退。

 以下、順番に検討していきます。


1.B777-246ERに機材変更し、現在のデイリー運航を維持。

 4つの中で最も自然なのが、この選択肢です。一部未確認情報によれば、大阪=ロンドン線にもシェルフラット機材が投入される予定との事ですから、それがこのB777-246ER(コンフィグ:W50)という事になれば、万事丸く収まるでしょう。Fクラスの設定こそなくなりますが、既に欧州系航空会社でもCYの2クラス運航という事例は増えてきていますし、抑もビジネス需要の多くない関空路線においてFクラスを設定する必要性そのものが殆どありません。ロンドンには既に成田路線でB777-246ERB777-346ERともに就航実績がありますし、運航経費もB747-446よりも大幅に安くなりますから、JALにとってもB777-246ERへの機材変更はメリットが大きいでしょう。まぁ、些かCクラスが多過ぎるのではないかとは思いますけどね。
 この選択肢における最大の課題は、何処からB777-246ERを捻出してくるかという事です。幾らB777-346ERが順次デリバリーされてくるとはいえ、それによる玉突きでB777-246ERが余ってくるとも思えませんし、縦しんば2機単位で余ったとしても、それは成田発着の長距離路線に優先して投入される事でしょう。JALにおいては、シェルフラットシートは有償C客向けの主力商品として扱っている節がありますから、有償C客が殆どいない関空路線にシェルフラット機材を投入しても、余りメリットはないのです。
 まさか、大阪=ロンドン線用のB777-246ERを捻出する為に、就航したばかりの名古屋=パリ線から撤退するなんて事はないでしょうかね。これならば、機材繰りは見事に辻褄が合いますし、間合い運用となっている名古屋=プサン線も他に十分な代替機材が存在します。既に、セントレアではアメリカン航空が就航から半年そこそこで撤退するという事例がありますから、JALが名古屋=パリ線から撤退しても何の不思議もありません。とはいえ、名古屋=パリ線と大阪=ロンドン線とではどちらが儲かるかとなると、実はどっちも儲からないというオチであるような気がしますが。


2.FクラスのないB747-446に機材変更し、現在のデイリー運航を維持。

 B777-246ERの次に有力なのが、この選択肢です。現在、関空発着の国際線でFクラスの設定があるのは、ロサンゼルス線・ロンドン線の2つだけですから、機材運用が一体化されている以上、その片方が廃止になってしまえば、もう片方の路線だけでFクラスを設定し続ける意味もありません。しかし、B777-246ERとてそんなにJALでだぶついている機材ではありませんから、ここに2クラスのB747-446(コンフィグ:K51/K61)が出てくる可能性はある程度残されています。
 この選択肢における最大のメリットは、東南アジア線などの近中距離路線と機材運用を一体化できる事です。特に、バンコク線やデンパサール線などの復路が夜行便になる路線とセットにすれば、2機のB747-446で2路線を回せる事になります。勿論、実際にはこれに加えて整備期間中の予備機材なども必要になってきますが、B747-446なら幾らでも余っていますから、特に心配する事はなさそうです。
 ただ、ここで心配すべきは、ロンドン線においても間合い運用の近中距離路線においても、B747-446ではキャパシティオーバーになり過ぎやしないかという事です。唯でさえ全社的な機材のダウンサイジングが遂行されている中、幾らツアー客や特典航空券客に人気があるとはいえ、現在B777-246ERB767-346ERで運航されている路線にB747-446ほどの大きな機材を投入する必要があるのか、私は疑問でなりません。結局、航空運賃の世界においては、塵が積もってもゴミの山でしかないのです。


3.Fクラスのある現行機材のまま、現在のデイリー運航を維持。

 上記2つの選択肢に比べると、これは何の捻りもありません。しかし、あくまでも大阪=ロンドン線にFクラスを残そうという事になれば、現行機材(コンフィグ:K12)を残さざるを得ないでしょう。これだと、折角の3クラス機材が2日に1回は関空でおねんねという実に勿体ない事態が発生していまいます。そんな事をするくらいなら、成田発着のK51/K61を置き換えた方が、余程乗客にも喜ばれる事でしょう。
 強いてこの選択肢に実現の可能性を見出すとすれば、それは大阪=バンコク線との一体運用でしょう。現在のJALにおいて、欧米路線以外で唯一Fクラスの設定があるのは、成田=バンコク線のJO703/704便*1です。JALのoneworld加盟によって、スターアライアンスメンバーであるタイ国際航空とのコードシェアは終了する可能性がありますから、バンコク→大阪の夜行便をJAL(というよりもJALウェイズ)が自社運航する可能性も若干あります。K12が大阪=バンコク線に入るのであれば、この文脈に乗っかる形となる事でしょう。


4.大阪=ロサンゼルス線の撤退と同時に、大阪=ロンドン線も撤退。

 最後に、関空厨が最も恐れる事態です。4つの選択肢の中では大穴ですが、実は一番JALにとって都合がいいのは、この選択肢だったりします。何せ、お世辞にもイールドが高いとはいえない長距離路線を一気に2路線も廃止できるんですからね。これで、JALは長距離路線用のリソースを成田に集中させられる事になりますから、関東在住者のみならず、成田発着路線を利用する日本中の利用者にとって利便性が向上する事になります。
 この選択肢における最大の疑問は、「どうして大阪=ロサンゼルス線の撤退と同時に公表しなかったのか」という事ですが、これは単にJALへの風当たりを少しでも和らげようとする考え方があっただけの事でしょう。流石に、ロサンゼルス線とロンドン線との撤退を同時に発表したら、企業イメージ悪化以前に国土交通省からゴルァされるでしょうからね。羽田再国際化による成田発着枠の相対的価値下落を控えているJALにおいては、羽田発着枠の配分権を持つ国土交通省を敵に回す事は是非とも避けたい所でしょう。昨今のトラブル報道で風当たりが更に強まっている事を考えれば、なおさらです。
 もう1つの疑問は、「名古屋=パリ線を差し措いて大阪=ロンドン線の撤退などあるのか」という事ですが、これは考える必要もありません。どうせ、大阪=ロンドン線から撤退するような事態になれば、名古屋=パリ線も同時に撤退するからです。案外、今回の報道で大阪=ロンドン線の撤退がお預けになったのは、後で名古屋=パリ線の撤退と同時に発表するからなのかも知れませんね。



 以上、4つの選択肢を検討してきましたが、個人的にはB777-246ERへの置き換え&間合い運用でJAL1303/1320便に就航するというのが理想ですね。クラスJの座席数こそ純粋な国内線機材のB777-246には大きく劣る事になりますが、まともな国内移動でシェルフラットシートに座れるとあれば、その価値はかなりありそうです。どうせ、現在はMD-90なんかで運航しているんですから、キャパシティの問題もないでしょう。スカイマーク関空から撤退する事ですし、JALには関空路線の梃子入れをお願いしたいものです。
 とはいえ、成田以外の欧米路線全面撤退というオチも、それはそれで捨てがたいものがあるんですけどね。何せ、JALの路線網がスッキリしますし、東京一極集中という企業戦略がよりハッキリしてきます。どうせ、私が国際線を使う時は殆どが成田発着でしょうから、東京一極集中は寧ろ歓迎ですらあります。まぁ、どうせ国際線ではエコノミークラスにしか乗れないんですけどねorz

*1:便名を見て判る通り、JALウェイズによる運航です。