五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

またぞろ出てきた「漫然と」というテクニカルターム

 3日遅れの締めは、このニュースで。

○カーブでのふくらみ走行は予測できたとして逆転有罪に

http://response.jp/issue/2006/0214/article79320_1.html

 有罪か無罪か、因果関係があるかないかについては、所詮私にとっては他人事なので、余り興味はありません。しかし、田中亮一裁判長の過失認定を読んで、またぞろ私は不快な気分になりました。

「カーブで外側にふくらんでくるのは予測ができる範囲であり、バイクの動きを注視することなく漫然と走行していた被告の運転は安全注意義務に反している」

 うわっ、また出たよ。交通事件には付き物の「漫然と」が(;´Д`)
 以前にも書きましたが、ただ「漫然と」と言うだけでは、加害者のどの部分に不注意があり、その過失がどの程度重いのかという事は全然判りません。過失の有無だけで有罪か無罪かを判断できる刑事裁判では「漫然と」の一言で片付いてしまうのでしょうが、交通工学の見地からしてみれば、その「漫然と」を分析する事が安全対策のスタートになるのです。或いは、量刑の軽重を判断する上では、刑事裁判上も「漫然と」の具体的な把握が必要であるというべきです。そういう意味で、カーブでの二輪車巻き込み事故という類似事例が多数発生しているであろう交通事件において、過失内容を「漫然と」で片付けてしまう事は、田中亮一裁判長のみならず、岩手県警盛岡地検の責任放棄であるといえるでしょう。
 本来、交通機関の事故については、それが私的交通であると公共交通であるとに拘わらず、警察(或いは検察)とは独立した専門の調査機関が必要です。航空事故や鉄道事故においては、既に航空・鉄道事故調査委員会が設立されていますが、それよりも遥かに事故件数・死傷者数ともに多い自動車事故については、何故かそれと同等の権限を有する調査機関が存在しません。一応、自動車事故についても「交通事故総合分析センター(イタルダ)」なる調査機関は存在するようですが、その知名度の低さを考えれば、自動車交通安全への貢献度も知れてこようというものです。

○(財)交通事故総合分析センター

http://www.itarda.or.jp/

 現在、道路特定財源一般財源化しようとする動きがありますが、そんな余裕があるのであれば、先ずはイタルダの調査力・発言力増強に投資すべきでしょう。イタルダの存在或いは提言が認知されない限り、日本の自動車事故件数が減少する事はないでしょう。そして、自動車事故の件数分、またぞろ「漫然と」という判決文が繰り返されるのです。