ゴールデンウィークも終わり、航空会社が挙ってプレスリリースを出してきました。
○平成18年度 ゴールデンウィーク お客様ご利用実績
○2006年度 ゴールデンウィーク期間 輸送実績(4/28〜5/7)
○ADO 2006年度 GW期間の利用実績について【PDF:19キロ】
○2006年度 GW旅客輸送実績(4/28〜5/7)
http://www.starflyer.jp/starflyer/press/press_20060508.html
スカイネットアジアについては、盆暮れ正月やゴールデンウィークといった期間での集計を行っていないらしく、月次実績以外のプレスリリースは公表されませんでした。航空輸送統計年報においても、ゴールデンウィークという断面の1次資料は提供されないだけに、気になる部分なんですけどね。
さて、今回の目立ったポイントは以下の3つです。
- JALの輸送実績はANAにそれほど大きな差を付けられていない。
- スカイマークへのネガティブキャンペーンは思った程効いていない。
- スターフライヤーは新規航空会社として明らかに惨敗している。
以下、具に見ていきます。
1.JALの輸送実績はANAにそれほど大きな差を付けられていない。
こういう数字が出揃ってきた時、読売新聞や勝谷誠彦のようにJALを叩きたくて仕方がない面々は、挙って「ANAは混雑していたのにJALはガラガラ」と書き立てるものです。しかし、JAL・ANA両社の数字を見比べてみると、実はそんなに大差がなかったりします。
国内線に関してはほぼ互角、国際線でも誤差の範疇といった感じであり、体感的な有意差は殆どありません。精々、支那大陸線で10%の差が付いているくらいのもので、これとてJALへのネガティブキャンペーンの寄与率は誤差の範疇でしょう。
因みに、国内線に関して見る限り、JAL・ANAとも3席に1席は空いている計算となっていますが、これは民族大移動のベクトル*1が偏っている為であって、いざ搭乗しようとすればかなりの確率で満席御礼に遭遇するであろう事は、日別・方向別輸送実績を見れば分かる事です。平日のビジネス需要は東京インバウンドが殆どを占めますが、休日の観光需要は東京アウトバウンドが殆どなんですね。更に言うと、この数字は東京発着路線以外も含んでいますから、地方空港同士を結ぶ便などの慢性的な低調も反映されてしまっているのです。こんな所からも、ヒト・モノ・カネの東京一極集中が見て取れます。
2.スカイマークへのネガティブキャンペーンは思った程効いていない。
今回、最も意外だったのは、スカイマークのロードファクターがおしなべて好成績だったという事です。3月・4月とあれだけマスゴミ総出のネガティブキャンペーンに晒されたにも関わらず、蓋を開けてみれば3路線トータルで80.9%という立派なロードファクターでした。その内訳は、以下の通りです。
- 羽田=福岡線:78.3%
- 羽田=神戸線:96.3%
- 羽田=札幌線:76.6%
就航前からボロクソに言われ続けてきた札幌線でさえ、ドル箱の福岡線並みにロードファクターを叩き出し、神戸線に至っては最早脅威としか言いようのない数字です。やはり、航空会社が挙ってボッタクリ運賃に移行するゴールデンウィークであればこそ、普通運賃の低廉な新規航空会社が競争力を増すという事なんでしょうね。要するに、往復4万円からの価格差があれば、ある程度のサービスや安全性には目を瞑ってでも安い航空会社を利用するという客層は少なからず存在するという事です。
因みに、スカイマークへのネガティブキャンペーンを追い風にしたAIR DOは、当然ながらスカイマークを上回る90.6%というロードファクターを叩き出しました。路線別の内訳は、以下の通りです。
まだ観光シーズンの到来していない女満別線が足を引っ張ってしまった感じですが、ドル箱の札幌線が96.0%というほぼ完璧なロードファクターを叩き出して、トータルでも90%超えという偉業を達成した形です。果たして、知床の観光シーズンとなる8月には、どんな数字が出てくるんでしょうかね。
3.スターフライヤーは新規航空会社として明らかに惨敗している。
まぁ、これは順当といえば順当な感じですね。東京=北九州の専業会社なので、この路線の67.8%というロードファクターが、そのままスターフライヤーとしてのロードファクターにもなります。まぁ、JALやANAよりは若干上回っているのですが、国内線輸送実績で全社比較してみれば、その惨敗は明らかです。
これを見る限り、AIR DO・スカイマークとスターフライヤーとの間には越えられない壁が存在するという事であり、それは即ちスターフライヤーの惨敗をも意味するのです。特に、ゴールデンウィークは普通運賃の低廉な新規航空会社が躍進する千載一遇の機会であり、ここでまともな数字を叩き出せないという事は、スターフライヤーは新規航空会社として失格であるという事に他ならないのです。
ここで、新北九州空港盲信派は、以下のようなエクスキューズを並べ立ててくる事でしょう。
- 東京=北九州は日本でも名うてのビジネス路線なので、大型連休においては却って需要が減少する。
- スターフライヤーは就航から日が浅く、特に首都圏での認知度が低い。
- 他社にない早朝・深夜便を運航している為、それが全体の足を引っ張っている。
これらのエクスキューズが何れも反論になり得ないのは、ブロハラの過去記事でも指摘してきた通りです。しかし、何よりもこれらのエクスキューズを簡単に論破してくれるのは、スターフライヤーの日別・方向別輸送実績です。
- 羽田→北九州(下り)
- 4/28:70.4%
- 4/29:82.5%
- 4/30:64.6%
- 5/1:47.0%
- 5/2:82.2%
- 5/3:95.8%
- 5/4:57.0%
- 5/5:62.3%
- 5/6:67.5%
- 5/7:76.8%
北九州→羽田(上り)
-
- 4/28:51.4%
- 4/29:53.8%
- 4/30:39.0%
- 5/1:35.8%
- 5/2:59.3%
- 5/3:71.2%
- 5/4:56.9%
- 5/5:87.2%
- 5/6:98.9%
- 5/7:97.7%
この数字を見る限り、ゴールデンウィーク期間中は首都圏在住の観光客が多く利用したと解釈するのが妥当であり、スターフライヤーは他の航空会社と同じ土俵に立っているのです。それでもなお大手航空会社並みのロードファクターしか稼げないという事であれば、スターフライヤーの経営方針に根本的な瑕疵が存在するという事なのでしょう。そして、その瑕疵の中にはスターフライヤーが北九州空港に就航している事も含まれるのです。
こんな事を今更言っても仕方がないのですが、スターフライヤーが東京=札幌線を運航していれば、98%超えという伝説に残るロードファクターを稼ぎ出す事も夢ではなかったでしょうね。運賃が高止まりになるゴールデンウィークだからこそ、付加価値の高いスターフライヤーはJALやANAよりも有利になるというものであり、「安かろう悪かろう」のスカイマークvs「一味違うホスピタリティ」のスターフライヤーという構図が東京=札幌線の競争を盛り上げていた事でしょう。尤も、新千歳空港が24時間供用されている事を考えると、スターフライヤーが無謀な早朝・深夜便の運航を強行して自滅というシナリオになる可能性も否定できませんけどね(;´Д`)
以上、長々と各社のロードファクターを比較してきましたが、実はここで表に出ていない数字が1つあります。それは、クラスJやスーパーシートプレミアム、国際線ビジネスクラスの路線別ロードファクターです。これを見比べれば、日頃言われている「ビジネス需要」の存在・不存在がかなりハッキリするんですけどね。
*1:高校時代は「ヴェクタ」という表記を好んで使用していたのですが、同好の士は殆どいませんでしたね。