五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

都電の試運転で追突事故

 という事で、今日も時差を追い掛けていきます。

都電荒川線で試運転中の電車が追突…急ブレーキで26人負傷

http://www.sanspo.com/shakai/top/sha200606/sha2006061405.html

 このニュースについては、勝谷誠彦ピンボケ講釈を垂れ流しているのですが、ここで真に議論すべきは、追突事故の責任が誰にあるかという事ではなく、追突事故を予防する為には何が出来るかという事なのです。まぁ、「A級戦犯」を血祭りに上げるのを「文化」とする日本においては、こういうアプローチは専門家以外持ち得ないんでしょうけどね。
 昨年のJR福知山線脱線事故で初めてATS-Pなるものの存在を知った一般の方々においては、「路面電車にもATS-Pを搭載すればいいのではないか」とする向きもあるかも知れませんが、路面電車の保安システム構築はそんなに簡単ではありません。東急世田谷線広島電鉄宮島線のように全路線が専用軌道であれば、普通鉄道と同等の保安設備をほぼそのまま流用出来ます。しかし、都電荒川線阪堺電車のように本格的な併用軌道を抱え、広島市ほどに軌道面への車両乗り入れが規制されていなければ、保安システム外の阻害要因によって路面電車の安全性などあっさり阻却されてしまいます。この事については事故発生直後にのぞみくんも指摘している所なのですが、こんな欠陥品、とてもシステムとは言えませんね。
 話をもう少し分かり易くすると、ATS-Pで飛び込み自殺は防げないというのと同じ事です。JR中央線の東京口は、日本で最もATS-Pを使いこなしているであろう区間ですが、度重なる人身事故で屡々運転がストップしてしまいます。ATS-Pは、地上信号式の保安システムとしては世界の頂点にあるであろうシステムですが、そんなATS-Pですら、たかが人間1人の飛び込みにすら全然対応出来ていないのです。ましてや、人間よりも巨大な運動エネルギーを持つ自動車になど、とても現在の保安システムでは太刀打ち出来ないのです。
 取り敢えず、思い付きの対策としては、ATS-Pの減速カーブに前方レーダーを組み合わせたものでしょうかね。路面電車の前方に障害物レーダーを設置し、その障害物までの距離と減速カーブとを照合して、常用最大制動での限界を超えたら非常制動を掛けるというものです。しかし、開発にはかなりコストが掛かりそうな上、右折車の飛び出しにはほぼ無力なのですから、なかなか導入を検討してくれる事業者はいない事でしょう。プリクラッシュセーフティーとして少しでも減速できた方が云々なんてのは、乗客・乗員の全員がシートベルトをするようになってから初めて議論すべき性質のものです。