さて、3日間掛けてEXEの記事を書いている間に、こんなものが発表されていました。
○東京の地下鉄・湯島からロマンスカー、印象さわやかに
http://symy.jp/?uub(ウェブ魚拓+ウェブ精米)
プレスリリースのPDFはこちらです(つ´∀`)つ
○新型ロマンスカー・MSEの製造を決定
http://www.d-cue.com/program/info/data.info/1993_6852248_.pdf
もう、見事なまでに赤っ恥です⊂⌒~⊃。Д。)⊃
地下鉄直通車両という事で実用サイドにかなり振ってくるものと思いましたが、今回も岡部憲明氏の手によるデザイナーズロマンスカーになるとは思ってもみませんでした。とはいえ、外見以外はどちらかというとVSEよりもEXEのコンセプトを継承しており、その用途が馬車馬になるであろう事はほぼ確実です。要するに、「馬車馬 meets 岡部憲明」って感じですね。
因みに、「フェルメールブルー」とは、恐らくこんな色です。
○真珠の耳飾りの女
http://www1.megaegg.ne.jp/~summy/gallery/pearl_earring.html
プレスリリースの色と読売新聞記事の色とが剰りにも異なる為、この絵の色も含め、果たしてどれが正解となるのかは不明です。まぁ、ディスプレイ上の色と実機の色とは与える印象が大きく異なるという事は、スターフライヤーが厭と言うほど証明済みなんですけどね。
さて、そんな新型ロマンスカーMSEですが、プレスリリースを見るに付け、幾つかの謎が浮かび上がってきます。ある程度予備知識のある人なら、以下の2つはたちどころに感じる所でしょう。
- 先頭車両は非貫通でもよいのか?
- どうして4両編成は1編成しか製造しないのか?
- 平日昼間や土休日は何処で運用するのか?
以下、細かく検証してみる事にします。
1.先頭車両は非貫通でもよいのか?
一応、これについてはWikipediaに回答が載っています。
なお、上記の通り地下鉄等旅客車であっても前面貫通口は義務ではなくなったが、各社の乗入協定等で自主的に貫通口を設置するのがほとんどである。JR東日本E217系のように、トンネルの建築限界と車両限界の離隔距離が大きいこともあり後期の増備車から貫通口を廃止した例もある。
命題に対する結論は「非貫通でもよい」という事になるのですが、ここから先は更に2つのオプションがあります。
千代田線の建築限界は一般的な地下鉄のそれと同じですから、東京メトロとしては出来ればMSEにも非常用貫通ドアを設置してもらいたい所でしょう。更に言うなら、東京メトロ・都営地下鉄を運行する全ての車両は、例外なく非常用貫通ドアを設置しています。となると、ここはやはり全先頭車が共通仕様となる2番のオプションに落ち着く可能性が高いでしょう。
しかし、無名の工業デザイナーが手慰みに作画したデザインであるならいざ知らず、曲がりなりにも岡部憲明氏はポンピドゥー・センターや関西国際空港ターミナルビルなどの国際的実績を持つ著名デザイナーです。果たして、その岡部憲明氏が「地下鉄に乗り入れるから……」という理由で自身の作品に手を加えられる事を受け入れるかどうか、私は甚だ疑問でなりません。先頭車両が非貫通になるか否かは、デザイナーと運行現場との綱引きの結果によって決定される事となるでしょう。
2.どうして4両編成は1編成しか製造しないのか?
プレスリリースによると、MSEは以下の3編成が製造されます。
- 6両編成×2(12両)
- 4両編成×1(4両)
当然ながら、千代田線乗り入れ時は6+4の10両編成が組まれる事になるのでしょうが、ここで誰もが疑問に思うであろう事は、4両編成の数が6両編成よりも少ないという事です。更に突き詰めるなら、「どうして最初から10両固定編成にしないのか?」という疑問も浮かんできてしまいます。私にとっては、これが今回最大の謎です。
6両+4両という構成にしたのは、少なからず相模大野や小田原での分割運用を考慮した結果でしょう。現時点では、千代田線直通特急を何処まで走らせるのかという事は公表されていませんが、現在の「ホームウェイ」の例からして、町田止まりや相模大野止まりになる可能性はほぼゼロと言ってよく、最短でも本厚木まで、場合によっては小田原や藤沢まで直通する可能性があります。時間帯が早ければ、箱根湯本乗り入れの可能性まで出てくる事でしょう。
小田原行き・藤沢行きを併結するなら分割構造は必須ですし、箱根湯本へ乗り入れるには編成長を短くする必要があります。また、前掲記事で憑かれた大学隠棲氏が指摘する通り、「馬車馬特急」は分割併合できる方が何かと使い勝手がよくなりますから、この限りにおいて6両+4両という分割構造が採用された事は理解できます。しかし、なお「4両編成の方が少ない」という事に対する疑問は残ってしまいます。
この疑問を解決するソリューションは、以下の2つが考えられます。
- 途中駅で後ろ4両を切り離し、逆方向に向かう別の6両編成と併結する。
- MSEとEXEとを併結できるようにする。
MSEの頭数からして、1番の運用を採るメリットは殆どありませんから、私は2番になるのではないかと思っています。これならば、昼間や土休日にもMSEを小田急線内で働かせる事が出来ますし、EXEを含んだ馬車馬軍団の列車走行キロを総量抑制する事にも繋がります。少なからず箱根輸送に従事するという事であれば、今にもEXEの葛藤を繰り返しそうなデザイナーズロマンスカー路線を踏襲しているのにも納得です。
以上を踏まえてみるに、MSEは単なる「地下鉄乗り入れ用特急型車両」ではなく、「地下鉄乗り入れも可能な汎用馬車馬特急」と位置付けられているような気がします。3000形が小田急における通勤型車両の標準を定義したのと同様、MSEは小田急における特急型車両の標準を定義する事になるのでしょう。そして、3000形が何度もマイナーチェンジを繰り返していったのと同様、MSEもマイナーチェンジしながらその所帯を徐々に大きくし、そこで得られた実績をEXEの車体更新時にフィードバックする事になるものと思われます。
こうなると、今から若干危惧しておかなければならないのは、EXEが車体更新時にMSEと同様の塗装に変更される事です。過去に、LSEをHiSE色に再塗装した「前科」のある小田急の事ですから、10年後にはEXEがフェルメールブルーを纏っている危険性も決してゼロではないのです。勿論、MSEにおけるフェルメールブルーが利用者の不評を買うようであれば、逆に10年後にはMSEがハーモニック・パールブロンズを纏っている危険性もゼロではありませんが。