五月原清隆のブログハラスメント

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JALが国内線ファーストクラスの詳細を発表

 今年12月からのサービス開始に向け、いよいよ情報も本格的に煮詰まってきました。

JAL、国内線「ファーストクラス」のサービス内容を決定!

JAL国内線 - ファーストクラス(機内サービス)

http://www.jal.co.jp/inflight/dom/f/

 2003年4月のJJ合併フェーズ1.5から4年8ヶ月の歳月を経て、漸くJASレインボーセブンにおける3クラス制がJAL全体で採用される事になりました。逆に言えば、JALが旧JASにおける3クラス制の正当性を受け入れるのに4年8ヶ月もの歳月を要したという事でもあり、これが実勢以上にイメージでANAに水を空けられている一因であるように思えます。
 今回の正式発表でポイントとなるのは、以下の6つです。

  1. ファーストクラス運賃ではなくファーストクラス料金を採用
  2. ファーストクラス料金は8,000円
  3. 普通運賃だけでなく一部割引運賃も事前予約対象
  4. 全時間帯で食事メニューを提供
  5. 羽田空港のダイヤモンド・プレミアラウンジを利用可能
  6. マイル積算率は区間マイルの50%

 既にRSS巡回先の他ブログで概要は語り尽くされている感があるので、私が詳述するのは以上のポイントに絞る事とします。


1.ファーストクラス運賃ではなくファーストクラス料金を採用

 これは、かなり意外でした。というのも、対抗するANAスーパーシートプレミアムで料金制ではなく運賃制を採用している所からして、当然JALも運賃制度からクラスJ以下とは別体系にしてくるものと思いましたが、クラスJとシステム的な差異を設けたくないという意図なのか、往年のスーパーシートの時と同様、普通席の運賃にファーストクラス料金を加算する形となりました。つまり、ANAスーパーシートプレミアムよりも門口が広いという事であり、プレミア戦略においてJALANAに後れを取っている事を吐露するような結果にもなっています。
 とはいえ、東京羽田=大阪伊丹という予約変更が頻繁に発生する区間でのサービスという事を考えると、国内線ファーストクラスのお得意様になるような旅客にとっては、運賃制よりも料金制の方が便利です。今年12月のサービス開始時点では、必ずしも東京羽田=大阪伊丹の全便にファーストクラスが設置されているのではありませんから、航空券とファーストクラス料金券をと分割して発行できないと、変更したい便にファーストクラスの設定がない場合、航空券の再発行が必要になってしまいます。これは、変更したい便のファーストクラスが満席だった場合でも同じ事ですが、予約変更の度に航空券の再発行なんて事になっては、その手間を忌避する上級顧客がクラスJ以下や他社便を選択してしまい、JALのも目論見が崩れ去ってしまう事になります。
 また、料金制を採用していれば、ファーストクラス設定便と非設定便とが混在した予約記録を作成する事も容易になります。往復割引や回数券の類についても、ファーストクラス利用部分のみ料金別精算とする事が出来るので、ビジネス客にとってはANAよりも使い勝手がいい事でしょう。現在、1日14往復の内13往復までがB777-246で運航されている*1東京羽田=大阪伊丹とは異なり、東京羽田=札幌千歳や東京羽田=福岡ではB747-446DB767-346も運航されますから、ANAのようにスーパーシートプレミアムだけ運賃を別建てにする事もままならなかったのでしょう。東京羽田=福岡については、B777-289の改修が終わってしまえばどうにかなるとしても、東京羽田=札幌千歳からB747-446DA300-600Rを駆逐する事は不可能でしょうから、両路線においてファーストクラスは「あったらラッキー」程度の存在になるのでしょう。


2.ファーストクラス料金は8,000円

 まぁ、こんなものでしょう。3クラス制でANAを迎え撃つ以上、ファーストクラス利用時の運賃をANA以下に設定する訳にはいきませんし、だからといって剰りにも高い料金にしてしまっては、ANAスーパーシートプレミアムだけでなく東海道新幹線グリーン車にも勝てなくなってしまいます。当初は「プラス10,000円程度」と言っていたのが8,000円に落ち着いたのは、往年のスーパーシートの時と同様、スーパーシート料金に区間*2を導入する含みを持たせる為でしょう。
 問題は、この8,000円という追加料金を払う旅客がどれだけ存在するかです。スーパーシートプレミアムの当日追加料金が5,000円、東海道新幹線のグリーン料金が5,150円*3という中、8,000円という追加料金は決して安くありません。ファーストクラスのサービスよりもファーストクラスというステータスを求める向きにしても、現状は殆どが東海道新幹線グリーン車を利用しています。既存のクラスJ利用者だけでなく、これら他社サービスの上得意客にどれだけ8,000円を払わせたくなるかが、JALのサービス戦略の見せ所でしょう。


3.普通運賃だけでなく一部割引運賃も事前予約対象

 国内線ファーストクラスの事前予約が可能なのは、以下の運賃です。

 これまた、実に意外な設定です。シャトル往復割引や4回回数券といった普通運賃系の運賃に座席制限が課される一方で、特便割引1や特便割引7といった予約変更不可運賃でも事前予約が可能になるのですから、予約変更の可否だけで予約クラスを機械的にJクラスとLクラスとに分けていたクラスJとは大幅にコントロールが異なります。恐らく、特便割引1の度重なる値上げにより、従来特便割引1を利用していた私用客の多くが4回回数券に流れた影響なのでしょう。
 となれば、12月以降の座席コントロールで予想されるのは、シャトル往復割引以下の枠を大幅に絞り、ファーストクラス利用者をシャトル往復割引ではなく通常の往復割引に誘導する事です。東京=大阪は、繁忙期やピーク期でも往復割引が設定される数少ない区間ですが、シャトル往復割引との差異が少ない為、往復割引が非常に目立たない路線となっています。今年10月以降、シャトル往復割引が値下げされて4回回数券の1片道分よりも安くなりますから、いよいよ往復割引の存在意義そのものが問われる事になってしまいますが、JALはこんな形で往復割引の付加価値を設定してきました。果たして、シャトル往復割引や4回回数券での予約を制限しなければならないほどファーストクラスが埋まるのか、現時点では何とも言えませんが、来年3月くらいまでは観察する価値がありそうです。


4.全時間帯で食事メニューを提供

 これは、何となく予想が付きました。スーパーシート機内食が簡素化されてからも、その機内食を目当てにスーパーシートを利用する旅客は決して少なくありませんでした。今回、普通席プラス8,000円という従来の2倍の料金を設定した以上、食事提供時間帯以外の便においても、茶菓変わりのサンドイッチではなく、きちんとした「食事」を提供しなければ、こうした機内食目当ての旅客を獲得できないからです。
 スーパーシート時代*6、食事提供時間帯は以下の通り定められていました。

朝食提供時間帯
9:00以前に出発する便
昼食提供時間帯
12:00から13:00までの間にブロックタイムが30分以上含まれる便
夕食提供時間帯
17:30から19:30までの間に出発する便

 この時間帯に含まれるか否かで、配給されるエサ提供される食事が貧相な弁当になるかスーパーに行けば200円程度で売っていそうなサンドイッチになるかが決まっていた為、食事提供時間帯の前後でスーパーシートの予約率が大きく異なっている事もありました。現在、短距離路線を除くクラスJでは全時間帯で茶菓が提供されていますから、茶菓やサンドイッチではクラスJとの差別化が図れなくなってしまうのです。
 それを踏まえて、国内線ファーストクラスにおいては、以下の通り食事提供時間帯が再定義されています。

朝食帯
9:00以前に出発する便
中間帯
9:00から17:00までの間に出発する便
夕食帯
17:00以降に出発する便

 この中間帯において、軽食だけでなく「甘味類、もしくは重箱弁当」も選べるようになっています。この重箱弁当がスーパーシートプレミアムの昼食と同等以上であれば、提供時間帯が広い分、少なくとも食事面ではANAを一歩リードしたと言っていいでしょう。出来れば、ですかいシリーズも軽食メニューに加えて欲しいところです。
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 尤も、機内食目当ての旅客など、毎回8,000円をキッチリ落としてくれるとはいえ、運賃部分も含めて考えた場合のイールドが決して高いとは思えないような気もしてなりません。修行僧の類であれば、「8,000円も払うくらいならもう1レグ」と敬遠してくれるでしょうが、僧侶によるファーストクラス利用であれば、運賃部分はバーゲンフェアやIITで、空席発生便を狙って当日アップグレードなんて事もありそうです。こうした旅客でファーストクラスが埋め尽くされるようになるのであれば、JALのプレミア戦略そのものが大失敗だったと言わざるを得ません。
 序でに言うと、東京羽田=大阪伊丹における水平飛行時間は多くても30分前後ですから、ゆっくり食事している時間などありません。場合によっては水平飛行時間が15分前後なんて事もありますから、そんな中で慌ただしく有名店との提携メニューを頂いたところで、余りその有難味を噛み締める暇もないでしょう。何処かの高砂親方ではありませんが、「食事なんか要らないからゆっくり寝かせろ」と言い出す客も少なくないはずです。旧スーパーシート時代には、こうした旅客に対する茶菓の持ち帰りサービスがありましたが、ファーストクラスにおいてどんな扱いとなるのかは、今から注目したいところです。


5.羽田空港のダイヤモンド・プレミアラウンジを利用可能

 ラウンジ利用そのものは想定の範囲内でしたが、そこで利用できるようになるのがサクララウンジではなくダイヤモンド・プレミアラウンジだというのは想定外でした。とはいえ、曲がりなりにも「ファーストクラス」を名乗る以上、空港ラウンジも最も格式が高いものを使えて当然と言うべきであり、ファーストクラスにダイヤモンド・プレミアラウンジへのアクセス権限を付与するのも、至極真っ当*7であると言うべきです。そして、その他空港でのラウンジアクセスも踏まえれば、スーパーシートプレミアム運賃利用者でもsignetにすら入室できないANAに対する大きなアドバンテージでもあります。「ファーストクラスの上客はラウンジに入っている暇などない」と指摘する向きもありますが、それを言い出すとファーストクラスの全サービスが無意味になってしまいますから、ここでは敢えて考えない事とします。
 こうなると、今から気になるのは伊丹空港へのダイヤモンド・プレミアラウンジの設置です。今年4月に18番搭乗口側の2階サクララウンジが改装された時、ここがダイヤモンド・プレミアラウンジになるのではないかと予想する向きもありましたが、結果としては単なるリニューアル工事でした。となると、残るは3階サクララウンジのリニューアル待ちといった所ですが、今のところダイヤモンド・プレミアラウンジ設置の話は聞こえてきません。羽田空港に次いでJML・JGP会員の利用者が多く、国内線ファーストクラス設置便も就航するのですから、そろそろダイヤモンド・プレミアラウンジを設置してもよさそうなものです。


6.マイル積算率は区間マイルの50%

 安っΣ( ̄□ ̄;)
 確かに、旧スーパーシート時代は区間マイルの25%でしたから、料金比を考えれば妥当な水準です。また、国際線においては、ファーストクラス運賃での積算比率は区間マイルの150%ですから、国際線と国内線とのバランス*8も取れています。しかし、クラスJですら区間マイルの10%が付与される事を考えると、この50%という加算率は些か低すぎる*9感が否めません。旅客が実際に支払う運賃の差額で考えるなら、100%くらいは積算してもいいでしょう。
 なお、2008年度のJALマイレージバンク(JMB)におけるサービス内容が未定なのか、マイル交換による国内線ファーストクラスの利用については、以下の文言を除いて一切の記載がありません。

JMB「FLY ON プログラム」の特典について

JMB「FLY ON プログラム」において、ファーストクラスへのアップグレード等の特典の設定はございません。

 ここで記載されているのは、国際線アップグレード特典と同様の特典を用意しないという事だけであり、国内線特典航空券の対象クラスにファーストクラスを加えたり、FLY ON プログラムのサービスステイタス保持者にファーストクラス券を支給したりする事については、なお留保されている状態です。国内線ファーストクラスの格式を維持する為には、これら特典の一切を排除するというのも一つの選択肢ですが、国際線ファーストクラスですら特典航空券で搭乗可能なのですから、来年1月までには国内線ファーストクラスに関するJMB特典が発表される事でしょう。
 あくまで推測ですが、JMBにおける国内線ファーストクラス特典は以下のようなものになると思われます。

  • 国内線ファーストクラス特典航空券
    • 往復:30,000マイル
  • 国内線ファーストクラス券
    • FLY ON DIAMOND(JML):8枚
    • JGC PREMIER(JGP):6枚
    • FLY ON SAPPHIRE(JMG):4枚
    • FLY ON CRYSTAL(JMX):2枚

 旧スーパーシート時代と同様、国内線ファーストクラス券2枚で国際線1区間のアップグレードに利用可能な形となり、同時に国際線アップグレード券の支給が廃止されるのでしょう。更に、クラスJ券まで支給停止となる危険性もありますが、個人的にはクラスJ券4枚よりも国内線ファーストクラス券2枚の方が嬉しいので特に問題ありません。クラスJ導入時には、JMGやJMXに対する国内線料金券の支給を金額ベースで半分に減らしたのですから、そろそろ支給水準を引き上げてもよい頃でしょう。



 以上、色々と国内線ファーストクラスについて見てきましたが、取り敢えず私のスタンスは以下の通りです。

JMXに国内線ファーストクラス券が支給される場合
来年4月に東京羽田=大阪伊丹で体験搭乗。コストパフォーマンスが高ければ、羽田空港の専用セキュリティゲートを利用できる東京羽田=福岡に特便割引7で有償搭乗。
JMXに国内線ファーストクラス券が支給されない場合
チェックインと同時にアップグレードが可能な時のみ、東京羽田=福岡で利用。

 普通席→クラスJにおける1,000円のコストパフォーマンスに比べると、クラスJ→ファーストクラスにおける7,000円のコストパフォーマンスはどうしても見劣りしてしまいます。それに、私が最もよく利用するJAL101/138便については、将来的にもファーストクラスが設置されないであろうB777-346*10での運航が予想されますから、抑もファーストクラスにお目に掛かる機会そのものがなさそうです。せめて、B747-446Dにでもファーストクラスが設置されてくれれば、東京羽田=沖縄那覇の利用時に指名買いする可能性もあったんですけどね。
 となると、残る期待はB787-346にファーストクラスが設置される事くらいですが、B777-246より40cmも狭い客室幅に2-2-2アブレストを確保するのは非常に困難ですから、1人掛けファーストクラス座席でも開発されない限り、亜幹線や地方路線にファーストクラスが導入される事はなさそうです。まぁ、B787-346が真っ先に駆逐するのはA300-600Rですから、現状よりも悪化する事はありませんけどね。

*1:残り1往復(JAL101/138便)は、B777-346での運航です。

*2:幹線スーパーシート料金が4,200円均一になる前の話です。

*3:実際には、指定席特急券ではなく自由席特急券の購入で済む為、指定席特急券との差額は5,000円未満になってしまいます。

*4:人知れず「身体障害者割引」から改名されています。

*5:東京羽田=大阪伊丹には設定がありませんから、これは来年以降の東京羽田=札幌千歳や東京羽田=福岡を見越しての設定でしょう。

*6:ANAスーパーシートプレミアムでも、凡そこの食事提供時間帯が踏襲されています。但し、夕食提供時間帯は開始・終了とも30分ずつ繰り下げられ、現在では18:00から20:00までの間に出発する便となっています。

*7:抑も、空港ラウンジはFFP上級会員ではなくファーストクラス利用者向けに提供されたのが始まりですし、羽田空港のラウンジも元々はスーパーシート利用者向けに設置されたものです。JASに至っては、JJ合併フェーズ1.5によってレインボーシートが消滅するまで、スーパーシート利用者に対するラウンジアクセスを死守し続けました。そういう意味では、上級会員が易々とラウンジアクセスを確保している現状の方が異常であると言うべきなのかも知れません。

*8:因みに、ビジネスクラスの場合は区間マイルの125%ですから、これまた旧スーパーシートとのバランスが取れている事になります。但し、国際線ビジネスクラス航空券の国内区間ではスーパーシートに搭乗できませんでしたが。

*9:とはいえ、ANAスーパーシートプレミアムに至っては、全路線でプラス100マイル均一ですから、それよりはマシと言えなくもありませんが。

*10:B777-346は、B747-146B/SUDB747-346SRを代替する目的で導入されていますから、自然とメインターゲットは個人旅客ではなく団体旅客に向かってしまいます。クラスJの座席数でB777-346B777-246を下回っている事からも、両者の役割が見て取れます。