五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

相変わらず続いている新北九州空港アクセス鉄道の高望み

 スターフライヤー関空に転進しようとしている頃、北九州市長はこんな事を言っています。

北九州市長、空港への鉄道整備に強い意欲

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 はい、電卓を用意。

九州運輸局と県が設置した外部委員会が、採算性が確保できる鉄道利用者数を1日当たり6,000人と試算している。

 1日当たり6,000人という事は、年間換算すると219万人となり、新北九州空港ターミナルビルの年間処理能力である150万人を40%以上も上回ってしまいます。当然ながら、空港利用者の全員が鉄道を利用するという事はありませんから、最低でも2012年度の需要予測である328万人くらいに達しないと、新北九州空港アクセス鉄道は採算割れに陥るという事です。スターフライヤー4号機が北九州空港ではなく羽田空港をベースとし、他の航空会社による新規就航も望めない現状においては、年間150万人という数字ですら実現は困難であり、アクセス鉄道など夢のまた夢です。北橋健治市長も、アクセス鉄道に現を抜かしている暇があるのなら、2007年度の需要予測である283万人という公約を実現する事に全力を注ぐべきです。



 因みに、最も可能性が高いとされる在来線新門司案の検討結果には、技術的に色々とツッコミが可能です。

1.所要時間10分で毎時4本の確保は無理

 毎時4本という事は、上下線合わせて毎時8本の列車が単線上を行き来する事になります。60÷8=7.5ですから、新線建設延長である14.6kmを全列車が7分30秒以内に駆け抜けるスジにでもしない限り、途中で列車交換待ちが発生してしまう事になります。一応、640億円という事業費には交換設備が含まれているようですが、今度は所要時間10分という数字が最低2分から3分は延びてしまう事になります。
 それでも、全列車がきちんとダイヤ通りに運転されてくれれば問題はないのですが、長距離列車が数多く走る鹿児島本線は、それだけ列車遅延のリスクも高くなり、新北九州空港アクセス鉄道の列車もその影響を受ける危険性が高まります。綱渡りのようなダイヤを設定している路線においては、たった1分の遅延でも大幅にダイヤが乱れる原因となり、無理に回復運転しようとすれば信楽高原鐵道列車正面衝突事故やJR福知山線脱線事故のような大惨事を引き起こします。アクセス鉄道が航空会社と連帯運送契約を結ばない以上、列車遅延による航空機への乗り遅れは乗客の自己責任になりますから、慢性的に遅延するようなアクセス鉄道は旅客の選択肢に入らないのです。

2.表定速度100km/hの実現は困難

 アクセス列車は小倉から空港までの16.6kmを10分で走破する事になっています。表定速度にすれば99.6kmとなり、これはJRの特急列車ですらなかなか実現されない高水準です。当然ながら、運行車両の営業最高速度は最低でも130km/hは必要になるのですが、JR九州には130km/h走行が可能な近郊型車両は存在しません。特急型車両にしても、3本も4本も新北九州空港アクセス鉄道に供出できるほどの余剰車は存在しません。
 となると、新北九州空港アクセス鉄道の開業に当たっては、130km/hで営業運転が可能な車両を新造しなければならないという事です。TX-2000系や223系2000番台の例からすると、車両価格は1両当たり1億7000万円程度になるでしょうから、2両編成だと3億4000万円程度になります。小倉=北九州空港のみを単純往復するとしても最低4編成は必要ですから、総事業費には最低でも13億円強の車両製造費が加算される事になるのです。
 一応、130km/h運転や所要時間10分を諦め、817系相当の車両で手を打てば、1両当たりの単価は1億円にまで下がります。この場合、予備車も含めると5編成が必要となり、車両製造費の合計は10億円という事になります。但し、JR九州の813系と共通運用を組めるようになりますから、鹿児島本線福北ゆたか線や現在妄想中構想中の洞海湾横断鉄道への直通運転もし易くなります。神戸新交通のように、ここは所要時間10分を諦めてでも現実的な数字を狙いに行くべきでしょう。

3.所要時間10分では優位性がない

 一見、小倉駅から北九州空港まで10分で着けるのは魅力的に思われますが、それはあくまでも小倉駅近辺から北九州空港を利用しようとする人だけです。実際には、ここに小倉駅までのアクセス時間小倉駅での列車待ち時間も含まれますから、空港までの実質所要時間は平均で30分前後、間の悪い人だと1時間近く掛かってしまう事になります。京急が「品川から羽田空港まで14分」と謳っても、実際に出発地から羽田空港まで20分以内で到着できる人が殆どいないのと同様で、殆どの空港利用者にとって10分という所要時間は画餅になってしまうのです。
 それでも、福岡空港のように安価でかつ多頻度の列車運行があったり、新千歳空港のように鉄道利用の所要時間が圧倒的に速かったりすれば、まだアクセス鉄道の存在意義も少しはあります。しかし、北九州空港の場合、北九州市内から自家用車で30分も走れば空港に着いてしまいますし、運賃面でも1日390円という北九州空港の駐車料金には勝ち目がありません。また、新千歳空港のように冬季の積雪で自動車の運行が困難になる事もなく、年間を通じて自家用車によるアクセスは容易です。これでは、正真正銘「待たずに乗れる」自家用車でのアクセスに勝ち目はなく、新北九州空港アクセス鉄道を利用しようという利用者は殆どいない事でしょう。
 では、東京からのインバウンド需要ならどうなるかという話ですが、これまたそんなに可能性はありません。というのも、単に首都圏から小倉駅を目指すのであれば、福岡空港利用でも北九州空港利用でも大差はないからです。新幹線利用による地上交通費の差も、東京=福岡線と東京=北九州線との実勢運賃差で相殺されてしまいます。



 こうして見ると、北九州市の調査報告で唯一信用してもいいのは、この部分だけです。

全てのケースとも40年以内での償還は厳しい

 だったら最初から造るな( ´゚д゚`)