五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

ANAマイレージクラブが大幅なプログラム改訂

 さて、本題にするはずのネタが、すっかり小ネタに追い遣られてしまっています。

ANAマイレージクラブが新しくなります

http://www.ana.co.jp/pr/07-1012/07-111.html

 ざっと読んだ限りでは、主要な改訂ポイントは以下の3つです。

  1. マイルの有効期限の変更
    • (旧)マイル獲得年の2年後の12月31日まで
    • (新)マイル獲得月の36ヶ月後の末日まで
  2. 国内線特典航空券のマイレージテーブルの変更
    • (旧)全期間・全路線で往復15,000マイル均一
    • (新)シーズナリティ・距離別に応じて12,000マイルから21,000マイルまで変動
  3. プレミアムメンバーの資格認定基準の変更
    • (旧)プラチナポイント・搭乗回数の何れかのみでエリートステータス取得可能
    • (新)新設のプレミアムポイント(≒プラチナポイント)のみで資格認定

 これを端的に解釈すれば、プログラム改訂で泣く人・笑う人は概ね以下に示す属性の人々となる事でしょう。

  • 泣く人
    1. 短距離路線で搭乗回数を稼いでプラチナ(PLT)を取得してきた人
    2. 貯まったマイルを専ら東京⇔沖縄の特典航空券に交換していた人
  • 笑う人
    1. マイル積算率100%の運賃で国内中長距離を頻繁に利用していた人
    2. 北海道や沖縄へ行くのに乗り継ぎが必要だった地域に住んでいる人

 実際には、これ以外にも色々と泣き笑いがあるので、主要な改訂ポイントについて詳しく見ていく事にします。


1.マイルの有効期限の変更

 これは、全ての利用者にとって純粋に改善であると言えます。現在、獲得マイルの有効期限は最長で3年間(1月に獲得したマイル)であり、2月以降に獲得したマイルの有効期限は35ヶ月未満でした。それが、今回の改訂で最低でも36ヶ月間はマイルが保障される事になりますから、10月や12月に獲得したマイルでも正味3年間しっかり有効になるのです。1月獲得分のマイルについても、やはり有効期限が従来の翌々年12月末から1ヶ月延びて3年後の1月末になるのですから、全期間を通してプログラム改訂の恩恵を受ける事になります。
 ただ、残念だったのは、最終利用月ではなく個々の獲得月を基準に計算しているという事です。米系航空会社であれば、「最後にマイルを獲得/利用した月から起算して18ヶ月間有効」という設定もあり、FFPのアクティブメンバーである限り、ライトユーザーであっても最終的にはマイルの恩恵を受ける事が出来ます。しかし、今回の改訂を読む限り、従来は年1回だったマイル消滅のトランザクションが月1回に増加するだけですから、結局は3年間で10,000マイル以上集めないと何にも恩恵を受けられないという事になります。折角3年間という有効期限を見直したのですから、ここは是非最終利用月ベースでの計算にして欲しかったものです。


2.国内線特典航空券のマイレージテーブルの変更

 これは、長距離路線を利用する人にとっては改悪となりますが、本土での利用と割り切れば、現状と大して変わる所はありません。というのも、新しいマイレージテーブルは、従来の往復15,000マイルを基準として作成されているからです。新しいマイレージテーブルは、以下の4ゾーン×3シーズンに分けられています。

全旅程の合計区間マイル ローシーズン レギュラーシーズン ハイシーズン
600マイル以下 11,000 12,000 15,000
601マイル以上1,600マイル以下 12,000 15,000 18,000
1,601マイル以上2,000マイル以下 14,000 18,000 21,000
2,001マイル以上4,000マイル以下 17,000 20,000 23,000

 ここで、単純往復が1,601マイル以上、即ち片道801マイル以上になるANA国内線は、以下の4路線のみです。

  1. 東京⇔沖縄(984マイル)
  2. 名古屋⇔沖縄(809マイル)
  3. 札幌⇔福岡(883マイル)
  4. 仙台⇔沖縄(1,130マイル)

 特に、仙台⇔沖縄線を利用していた人にとっては、ローシーズンですら必要マイルが2,000マイルも上がるのですから、大きな改悪でしょう。一方で、東京⇔能登や東京⇔庄内といった地味に高い近距離路線を利用する向きにとっては、レギュラーシーズンでも恒常的に3,000マイル安く特典航空券を獲得できる事になりますから、今回の改訂は改善と受け取られる事でしょう。但し、日本においては、こうした近距離路線は得てしてJRとの競合で特割が安く設定されている為、余り特典航空券の有難味を感じられませんが。
 それよりも確実に今回の改訂で恩恵を受けるのは、ANA直行便の存在しない2空港間を行き来する人々です。マイレージテーブルが単純に合計区間マイルのみで規定されるようになった為、途中に乗り継ぎがあろうとなかろうと、片道2,000マイル以内の行程なら往復20,000マイルで特典航空券を利用できます。札幌乗り継ぎ道内各地や福岡乗り継ぎ対馬・五島福江、沖縄乗り継ぎ宮古・石垣など、北海道や九州・沖縄の離島を利用する時は勿論、仙台⇔大阪⇔宮崎といった大都市空港での乗り継ぎ時にも、新しいマイレージテーブルは大きく活用される事になります。先島への直行便を廃止したANAですが、これで少しは宮古・石垣への旅行もしやすくなる事になります。
 なお、ローシーズンというのは、4月・12月・1月・2月の閑散期のみに設定されているものであり、年間で90日もありませんから、この時期に特典航空券を安く交換できると言われても、そんなに有難味はありません。一方、ハイシーズンというのは、ゴールデンウィークや盆暮れ正月など、従来は国内線特典航空券がブラックアウトしていた時期の話ですから、どれだけ特典枠が用意されるのかは別として、どうしても繁忙期に特典航空券を利用したい向きにとっては、却って朗報なのかも知れません。但し、どさくさに紛れて従来でも特典航空券を利用できた春休み期間がハイシーズンに繰り込まれているのだけは、明らかな改悪でしょうが。


3.プレミアムメンバーの資格認定基準の変更

 これは、ANAマイレージクラブ会員にとっては、これからプレミアムメンバーになろうとする人にも、現在既にプレミアムメンバーである人にも、かなり大きな問題です。というのも、JGCさえ取得すれば生涯安泰*1JALマイレージバンクに対し、ANAマイレージクラブの場合は最低でもプラチナ(PLT)を維持していないと、SFC会員と雖も余りプレミアムメンバーとしての恩恵に与れないからです。それ故、JGCで毎年修行に励むのがJGCプレミアJGP)狙いのごく一部であるのに対して、SFCではPLT狙いの修行が比較的高頻度で発生する事になるのです。
 今回、プレミアムメンバーの資格認定基準を変更するに当たっては、特に以下の点で大幅な改訂がありました。

  1. 従来の搭乗回数による資格認定を廃止する。
  2. 上記の代替として、1搭乗毎に搭乗ポイント400ポイントを付与する。
  3. 旅割・超割スカイメイト割引及びIITは搭乗ポイント付与の対象外とする。

 ここに、ANAの修行僧殲滅に対する強い意志が見られます。特にANAが目の敵にしているであろう修行僧は、東京⇔大島・八丈島や福岡⇔対馬などの短距離路線でピストン修行しているドメスティック僧です。或いは、超割や旅割を狙い撃ちにするようなドメスティック僧も、やはり殲滅の対象となっています。以前、「STAR LINKに釣られてJALANAもバーゲン型運賃のマイル積算比率を50%に引き下げるのではないか?」と書いた事がありますが、搭乗ポイントの導入による超割・旅割の切り捨ては、それよりももっと苛烈な形で実現したと言うべきです。2ちゃんねるエアライン板では屡々社畜出張族vs自腹修行僧の醜い争いが繰り広げられていますが、今回の改訂は社畜出張族側に大きく擦り寄った結果となりました。
 これにより、ANA修行僧のメインストリームは、50,000プレミアムポイント狙いの海外発券やバーツラン、或いはバンコクシンガポール経由での欧州往復に変わりそうです。一応、ダイヤモンド(DIA)の資格認定には「ANAグループ便のみで50,000ポイント取得」という縛りが付いていますが、PLT以下についてはANAグループ便に1回も搭乗しなくても取得する事が可能ですから、今後ますますアジア各国のスターアライアンス加盟航空会社が修行僧の踏み台にされていく事になりそうです。まぁ、その場合は新たな禁則事項が増えてまたぞろ修行僧が殲滅されるだけの話ですが。
 因みに、東京⇔大阪で特割ピストン修行しようとした場合、PLTの取得には従来よりも5.5往復多い30.5往復が必要になります。ここ数年で東京⇔大阪の特割相場が大幅に向上している事を考慮すれば、余り効率的な修行ではないでしょう。それよりは、シャトル往復割引や4回回数券で修行した方が、最終的には安く付く事になりそうです。



 以上を振り返ってみた所、出てくる結論はどうしてもこれになってしまいます。
 大島ピストン修行僧m9(^Д^)プギャー
 まぁ、今更修行僧を切り捨てた所で、SFCスターアライアンスゴールドメンバーである限り、ANAスターアライアンス内での鼻つまみ者のままなんですけどね。ここで「年間20,000プレミアムポイント未満のSFC会員からNH*Gを剥奪する」なんて事になれば、さぞかしANAマイレージクラブは激しい祭になる事でしょう。

 因みに、巡回先ブログで本件に触れているのは、意外にも1ヶ所だけでした。

マイレージプログラム改定 Cassiopeia Sweet Days/ウェブリブログ

http://nozomi.at.webry.info/200710/article_2.html

 JALマイレージバンクが少なからずANAマイレージバンクに追随するのは必至でしょう。尤も、oneworldサファイアを維持する為には、平JGCでも毎年20,000FOPまたはFLY ONクリスタルが必要でしたから、回数基準の廃止はANAほど影響がないような気もします。一方で、JGCさえ取ってしまえば国内ではほぼ安泰だというのは、前述の通りです。まぁ、これからJGC修行を始めようとする人は、戦略の転換を迫られる事になると思いますけどね。
 個人的には、羽田=但馬便開設が実現するまでは、但馬修行を根絶やしにする回数基準廃止は先送りにして欲しいものです。私も、北近畿の日帰り観光搭乗回数の帳尻合わせで何回かお世話になっていますからね。

*1:尤も、最近のプレミアム指向の強化により、最低でもJGPくらい取得していないと安泰とは言えなくなってきましたが。