五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

スターフライヤーがANAとのコードシェアで関空撤退を撤回

 結局、例のニュースはこういうオチになりました。

スターフライヤー 関西便も11月から全日空と共同運航

http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200808070025a.nwc

 要するに、関空撤退と意気込んでみたはいいものの、北九州空港発着路線の開設のしようがなかったという事でしょう。勿論、関空枠を返上しようなどというスターフライヤー国土交通省が羽田発着枠で便宜を図ってくれる訳もなく、かといってこれ以上羽田=北九州線を増便しても徒に搭乗率の低下を招くだけです。そして、ANAにジャンピング土下座するような格好で、やっとこさ1年越しのコードシェアが実ったといった所です。
 そのANA自身、損切りする形で関空からは大々的に撤退している最中なのですから、今回のコードシェアにおいては、スターフライヤーの座席はかなり安く買い叩かれている事でしょう。どう高く見積もっても、就航時のコードシェア不調でヤケクソ発売した関西空港就航記念運賃を上回る事はなく、やさしさライセンス発動で6,500円、本気でANAスターフライヤーの足許を見ているなら5,000円まであり得ます。しかも、羽田=北九州線コードシェア直後の月報で露呈した通り、売れ残った座席はスターフライヤーに買い戻させているのですから、ANAは追加投資ほぼゼロで濡れ手に粟のボロ儲けです。そんなボロ儲けを甘受せざるを得ないほど、今のスターフライヤーは追い込まれているのでしょう。



 さて、今回のコードシェアによる利用者への影響ですが、従前からSFJ便として利用している旅客にとっては、却って不便になる可能性が大です。というのも、今回のコードシェア開始に伴って、

  • 北九州線:第1ターミナル発着
  • 関空線:第2ターミナル発着

 と、利用するターミナルビルもモノレール駅も変わってしまうからです。旅客の利便を図るなら、今回の関空コードシェアを機に北九州線もろとも第2ターミナル発着に移行すべきなのですが、敢えて関空線のみ第2ターミナル発着としたのは、減便しながらも自社運航便を継続するANAの都合*1によるものです。第2ターミナルビル開業直後は、従来の習慣で第1ターミナルに向かってしまったANAの旅客が地下連絡通路を第2ターミナルに向かって猛ダッシュする光景がよく見掛けられましたが、それと同様の事が、11月以降のSFJ便旅客において見られる事になるのです。
 乗客だけでなく、スターフライヤー自身にとっても、第1ターミナル・第2ターミナルそれぞれで地上設備・人員を確保しなければならず、二重投資で余計な出費を迫られる事になります。唯でさえ、搭乗率の伸び悩みや燃油価格の急騰で財務事情が覚束ない所、人件費の高い東京において二重投資していては、2008年度においても赤字脱出は夢のまた夢です。そんな二重投資を呑んででも関空線の座席を買ってもらわなければならないところに、現在のスターフライヤーの窮状が見て取れます。



 尤も、そこまで無理をしたところで、今後スターフライヤー関空線がまともなユニットレベニューを上げられるかとなると、私には甚だ疑問です。今回の一連の騒動によって、スターフライヤーは関西経済界を完全に敵に回しましたから、縦令ANA便名であっても、進んでスターフライヤーに乗ろうとするビジネス客は、今後激減の一途を辿る事でしょう。政財界に限らず、一般の旅客に対しても、関空撤退という報道が流れた事により、スターフライヤーはその企業イメージを大きく落としています。どうせANAに土下座して座席を買ってもらうんだったら、その交渉は関空撤退の報道が流れる前に済ませておくべきであり、撤退しても機材の使い途がないからANAに土下座というのでは、あべこべもいいところです。抑も、機材そのものを減らす事が出来ない以上、撤退なんてのは機材の転用先に目処を付けてから見当すべき話であり、闇雲に撤退へと邁進したスターフライヤーの所業は、航空業が装置産業であるという事を失念した愚行中の愚行です。こうして、撤退も出来ず、徒にイメージも収益もダウンさせるところが、やはりスタフラのLQCたる所以でしょう。
 取り敢えず、スターフライヤーが今からでも関西での信頼を回復しようとするのなら、自社運航の関空線を倍増させて、ANA利用者に関空線の選択肢を追加提供する事です。それでも、近々全てののぞみがN700系での運行に切り替わる東海道新幹線には勝ち目がありませんし、マイル乞食を相手にするにしても、利便性に勝る伊丹利用が今後もマジョリティであり続ける事でしょう。スターフライヤーの早朝・深夜便がニッチでしかあり得なかったのと同様、東京=大阪の旅客流動において、関空利用なんてのは所詮ニッチでしかあり得ないのです。そんなニッチと心中するのか、或いは傷口を拡げる前に会社を畳むのか、どちらがより懸命な判断なのかは、敢えてここで書くまでもないでしょう。

*1:羽田=関空線の場合、関空発着国際線の機材送り込みという用途がある為、低イールドだからといって簡単に廃止できるものではありません。尤も、ANA関空発着国際線から全面撤退すれば、自然と羽田=関空線を自社運航する必要もなくなるのですが。