さて、配置の問題は日本の空港でも起こっています。その最たるものが、今日開港を迎えた茨城空港でしょう。
○【レポート】首都圏の北の玄関口!? 茨城空港が開港 - 定期便2本のみで2,000万円の赤字か
○ローコストへの取組み:茨城空港
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/kuko/low_cost/index.html
特に注目すべきは、プッシュバックも搭乗橋も使わない事により、就航する航空会社の用意すべき地上態勢を軽便に抑えられる事です。これは、「地上職員を常駐させたくない」というスカイマークの意向に沿ったものでもあるのでしょうが、海外の空港ではLCC専用ターミナルにPBBが1本もないなんてのはよくある話で、今更PBBの撤廃が話題になる日本の方が異常と言うべきです。尤も、これは現在の日本にLCCと呼ぶべき航空会社が1つもない事と無関係ではなく、それ故に茨城空港は「茨の道」を歩かされる事になるのです。
現在、日本には「新規航空会社」と呼ばれる航空会社が幾つかあります。世間一般には、以下の5社の事を指すでしょう。
- スカイマークエアラインズ(SKY)
- 北海道国際航空(AIR DO/ADO)
- スカイネットアジア航空(SNA)
- スターフライヤー(SFJ)
- フジドリームエアラインズ(FDA)
この5社の中に、欧米やアジアで云うLCCに該当する航空会社は1つもありません。何故なら、どの航空会社も大都市の混雑空港をその運航拠点としているからです。羽田空港をその拠点としている4社は言うに及ばず、FDAについても過密空港として知られる福岡空港に就航しているのですから、そう大差はないでしょう。海外のLCCであれば、福岡空港ではなく北九州空港や佐賀空港に就航し、それでいて平然と福岡発着を宣う事でしょう。それが、LCCのLCCたる所以であり、時として「LQC」と揶揄される理由でもあります。
羽田空港は、東京都心部から最も近い所にある空港であると同時に、日本一多くの旅客や発着がある空港でもあります。当然、着陸料や地上施設利用料もそれなりに高い水準となり、JALやANAといった大手航空会社にとってはコスト増大の大きな要因とすらなっています。そんな空港を拠点とするばかりか、既に獲得している発着枠を既得利益として死守し、更には拡大しようとしているのが、現在日本で「新規航空会社」と呼ばれているLQCの姿なのです。
スカイマークが羽田=福岡の運航を始めてから、既に10年以上の歳月が経っています。以降、幾つものフォロワーが羽田空港を運航拠点とした事により、日本における「新規航空会社」は、羽田発着で大手航空会社と運賃競争するのが一種のスタンダードになってしまいました。勿論、当時は羽田空港・成田空港の他に定期航空路線が就航可能な空港はなく、羽田発着を余儀なくされた面はあります。しかし、「もっと安く使える空港が欲しい」という声が「新規航空会社」から上がった事は遂になく、寧ろ羽田空港における発着枠の追加配分を要求しているというのですから、既にLCCとしての本質は失われている状態です。
もし、茨城空港の開港がこうした「新規航空会社」の開業よりも前であれば、幾許かのチャンスはあったかも知れません。しかし、スタフラまでもが羽田空港に就航している今日、「新規航空会社」に茨城空港の用途を考えてもらう機会は、そう残されていない事でしょう。となれば、茨城県及び茨城空港に残された方法は1つ。
自分達で茨城空港ベースの航空会社をつくる。
静岡空港もそんな感じだったんですし、真面目に航空会社設立は考えてみるべきでしょうね。勿論、それが成功するかどうかまで、私は保障できませんが。