五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

日航機ニアミス事故で管制官に無罪判決

 新北九州空港ばかりネタにしている今日この頃ですが、一方でこんなニュースがあった事も見逃せません。

日航機ニアミス、管制官2人無罪・システム不備など示唆

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060320AT1G2002720032006.html

 この刑事裁判についての論評はPAXさんに譲るとして、こんなもので有罪判決が出てしまっては困ります。管制官とTCASの指示とでどちらを優先させるかについては、ICAOでさえルールが確定していなかったのです。そして、この事故を受けて、双方の指示が相反する場合はTCASを優先させるというルールがICAOでも明文化されたのです。
 今回の事故は、日本においては前例もなければルールもないケースだったのです。もし、ICAOにおいてこうしたケースでのオペレーションが明文化されていれば、それに違反した当事者は過失責任を問われて然るべきでしょう。しかし、明確なオペレーションが存在しない状況下における事故においては、過失責任を問うなどナンセンスですし、刑法学上の常識である「刑罰の不遡及」にも馴染みません。そういう意味で、安井久治裁判長が「航空管制システムや制度の不備が事故につながった」と指摘したのは当然であり、日本航空国土交通省はこの判決を重く受け止めるべきでしょう。
 ただ、「本件で管制官や機長の個人の刑事責任を追及するのは相当でないように思われる」というのであれば、無罪判決まで持ち込むのではなく、オービス裁判の時のように公訴棄却の判決を言い渡すべきでしたね。確かに、公訴棄却ではなく無罪判決としておけば、本件について一事不再理効が発生しますから、籾井康子・蜂谷秀樹の両被告人が重ねて起訴される心配はなくなります。しかし、航空・鉄道事故調査委員会の報告書が出てきている状況下で、検察側が新しい証拠を見付けられるような事は先ずありませんから、公訴棄却判決でも両被告人が特別に不利益を被る事はありません。この点、まだまだ安井久治裁判長も交通事故が発生したら先ず個人責任を追及するという日本の悪習から脱け切れていないようです。
 まぁ、交通事故における「犯人捜し」が横行する背景には、日本の法制度の不備にも問題があります。現行刑法においては、業務上過失致死傷を追及できる相手は事故を発生させた当事者だけですが、これを雇用者である企業或いはその経営者に対しても追及できるようになれば、直接当事者だけを血祭りに上げる悪習も幾ばくかは改善されます。実際、公共交通機関における事故など、その企業や組織そのものの問題により発生するケースがかなり多いのですから、こういう所で「真犯人」を追及できるよう、刑法改正に踏み切るべきでしょう。それが、昨年ずっと続いた交通事故に対する反省というものです。



 なお、公訴棄却と無罪判決とでの一事不再理に関しては、こんな話もありました。

○「青い裁判官」

http://homepage3.nifty.com/k-896g/newpage5-2-01.html

 あら、北原白秋ったらお盛んだったのね(;´∀`)