五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

スターフライヤーが早朝・深夜便を減便

 遂に、スターフライヤーも決断しましたね。

○早朝・深夜便 11月から減便 スターフライヤー

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/20060825/20060825_005.shtml

 本当は冬ダイヤに切り替わる10月から減便したかったのでしょうが、恐らく諸方面との調整が間に合わなかったのでしょう。ベリー貨物で何とかユニットレベニューを稼ぎ出したかったのでしょうが、貨物輸送事業が実現する目処さえ立たない現状では、飛ばすだけケロシンの無駄といった所でしょうね。
 さて、スターフライヤーの早朝・深夜便が首都圏で受け入れられなかった理由ですが、これは実に単純明快です。首都圏在住者にとって北九州空港利用のメリットが皆無だったからに他なりません。そうでなくても、羽田発早朝便・羽田着深夜便は航空会社にとって鬼門だというのに、よりによって目的地・出発地が北九州などという首都圏在住者に何の魅力もない都市では、ロードファクターを稼ごうとする事自体が無駄な努力というものです。
 確かに、SFJ71便を利用すれば、他のどんな航空便よりも早く九州に上陸できますし、SFJ92便を利用すれば、九州・山口での滞在時間を最大限確保する事が出来ます。しかし、早朝におけるたかが30分程度のアドバンテージなど、北九州空港から目的地までの移動時間で費えてしまいますし、SFJ92便を利用しなければならないほど九州での滞在時間を確保したいという需要など、全航空需要の中においてはニッチ中のニッチです。スターフライヤー新北九州空港の中の人は「早朝・深夜便によって周辺地域からの需要も取り込める」などと息巻いていた事でしょうが、首都圏在住者の視点からすれば、そうした考え方は正に井の中の蛙なのです。
 実際、惨憺たる搭乗率しか残せていないSFJ71/92便に対して、北九州アウトバウンド需要だけを考えていればいいSFJ93/70便はそこそこの搭乗率を稼ぎ出しています。その内、どれだけの乗客が高イールドの運賃で乗っているのかは知れた話ではありませんが、早朝・深夜の航空需要を見出したという点では一定の評価を下すべきでしょう。スターフライヤーにおける失敗の根本は、北九州アウトバウンドの視点に終始し、首都圏在住者の需要を見極めようとしなかった事なのです。今回の減便は、少なくともスターフライヤー自身が現在の早朝・深夜便戦略が間違っていた事に気付いたという事なのですから、今からでもやり直すチャンスはあるという事です。
 では、スターフライヤーが再生するにはどうすればいいのかというと、これまた単純な話です。沈み行く泥船である新北九州空港に見切りを付け、羽田空港発着路線を拡充させる事です。何だかんだ言って、日本の国内航空需要はその半数以上が首都圏を発着するものなのですから、それをみすみす見逃す手はありません。スターフライヤーは、「City of Kitakyushu」というドグマティズムで自縄自縛になっています。飛ばせば飛ばすほど赤字になるSFJ71/92便を今まで飛ばし続けていたのも、このドグマティズムによる所が大なのでしょうが、漸く減便という勇気ある撤退が出来たのですから、これを機会にスターフライヤーは「City of Kitakyushu」というドグマティズムから自らを解放すべきでしょう。
 スターフライヤーが機体の「City of Kitakyushu」という文字を塗り潰し、羽田空港を拠点とした着実な発展を望んだ時、それこそがスターフライヤー再生の転機であり、同時に新北九州空港の「終わりの始まり」となるのです。


2006-08-28 追記】
 そういえば、西日本新聞の記事で重要な部分に触れ忘れていました。

早朝・深夜便は現在、4便が運航しているが、同社の試算によると、減便後、残る2便に利用者が移ることで早朝・深夜の搭乗率は約3.5%改善するとしている。

 ダウト( ´゚д゚`)
 この4便というのは、言うまでもなく羽田アウトバウンドのSFJ71/92便及び北九州アウトバウンドのSFJ93/70便を指しているのですが、前者の2便を減便した所で、その需要が後者の2便に移る事など考えられません。
 その理由を考えるには、現在SFJ71/92便を利用する層がどういう需要であるかを考えれば済む話です。私が考えるに、この2便の利用者は、以下の客層に絞られます。

  1. 九州での滞在時間を極限まで確保したい首都圏在住者
  2. 兎に角首都圏=九州を安く移動したい暇人
  3. 突発的にこの時間帯で移動しなければならなくなったビジネス客

 先ず、1番については、移転先はSFJ93/70便ではなく、福岡空港発着の始発・最終便です。確かに、前日移動するか当日移動するかの違いでしかないのですが、首都圏在住者であればSFJ71/92便利用時の羽田アクセスのお寒い事情はよく理解しているので、結局は前後泊が必要になるのなら、わざわざ宿泊費の嵩む羽田空港近辺に宿泊するのではなく、ホテルの相場もこなれている北九州市内に宿泊すれば済むSFJ93/70便を利用します。逆に言えば、首都圏在住者でなおSFJ71/92便を利用する客層というのは、SFJ93/70便を利用できない事情があり、なおかつSFJ71/92便を利用するに必要十分なアクセスを確保できている需要なのです。そういう旅客に「SFJ93/70便を利用して下さい」などと誘導したところで、それは全く説得力を持ちません。どうせ移動するなら、よりSFJ71/92便に時間帯が近いJALANAの早朝・深夜便を利用する事でしょう。
 次に、2番についてですが、これまたSFJ93/70便へ移動するかとなると疑問符が付きます。というのも、北九州アウトバウンドの需要である程度のロードファクターが見込めるSFJ93/70便と、兎に角座席を埋めてもらいたくて仕方がないSFJ71/92便とでは、当然ながら割引運賃の価格弾力性には大きな差異がありますし、実際に10月のSTAR28ではその差異が700円という運賃差に現れています。11月以降、SFJ93/70便の運賃水準をSFJ71/92便と同程度に維持するというのなら話は別ですが、これが出来ないという事であれば、この客層はとっとと他の航空会社に逃げる事でしょう。折しも、東京=福岡ではJALANA・SKYの3者が入り乱れて割引合戦を繰り広げていますから、ここでスターフライヤーが少しでも隙を見せるような事があれば、あっという間にここの客層は掻っ攫われてしまいます。
 そして、3番についてですが、これは説明の必要はないでしょう。この客層にとっては、「現にその時間帯に便の設定がある」という事こそ重要なのであって、他の時間帯の便には一切存在価値はないのです。9時5時で働くサラリーマンに「昼間の電車で通勤しろ」と言っているようなものであって、筋違いにも程があります。
 以上で見た通り、SFJ71/92便については、廃止すればその分だけ旅客を逸走させるという結論になります。まぁ、それを踏まえた上での「3.5%」なのかも知れませんけどね。