さて、相変わらずプレスリリースが流れてこない全日空・スターフライヤーのコードシェアですが、今回のコードシェアに対するブロゴスフィアの見方は大きく2つに分かれます。
当然ながら、アンチ新北九州空港の私は後者の見方を採っているのですが、ここで重要なのは、ANA北九州便の旅客は何処からシフトしてくるのかという事です。これをどう考えるかによって、全日空とスターフライヤーとのコードシェアは肯定的にも否定的にも受け取れるのです。
ANA北九州便のシフト元には、以下のケースが考えられます。
ここで注意すべきは、理想の旅客シフト元がスターフライヤー・全日空・北九州空港で三者三様となっている事です。
スターフライヤーの目論見は、当然ながら従来のANA便利用者を北九州空港に呼び込む事です。新北九州空港開港によって福岡空港や山口宇部空港から移転して来なかった旅客は、少なからずJALマイレージバンクやANAマイレージクラブといったFFPの影響を受けています。JMB会員は既に一定数がJAL北九州便を利用しているであろう事を考えれば、残る顧客需要はAMC会員という事になりますから、座席の販売責任を全日空に押し付け、なおかつAMC会員への認知度向上にも繋がるコードシェアは、スターフライヤーにとって一石二鳥なのです。或いは、FFPの利便性で仕方なくJAL北九州便を利用していた旅客がシフトしてきてくれれば、スターフライヤーにとっては最高形でしょう。
しかし、全日空にとっては、徒に自社の福岡便や山口宇部便から旅客がシフトする事は、決して望ましい事ではありません。縦しんばコードシェア北九州便がそこそこのロードファクターを叩き出したところで、その分福岡便や山口宇部便のロードファクターが悪化するのであれば、全日空がスターフライヤーとコードシェアするメリットは相殺されてしまいます。全日空における目論見は、ろくに使えないFFPしかないスターフライヤーを利用し続ける顧客忠誠心の極めて高い旅客を根刮ぎ自社に取り込む事であり、その序でにJALvsANAの文脈でJAL北九州便からシフトを起こせればめっけもんといった感じでしょう。FFPに釣られて新幹線からシフトしてくる層を掘り起こせれば、なお好都合です。
では、北九州空港自身は何を考えるかといえば、これは当然ながら近隣空港や新幹線からの旅客の取り込みです。スターフライヤーと全日空とのコードシェア開始によって選択肢が増える事自体は北九州空港にとっても望ましい事なのですが、ここでSFJvsANAvsJALの不毛な三つ巴ゼロサムゲームが繰り広げられたところで、北九州空港が得るものは何もありません。寧ろ、過当競争によって3社ともイールドが悪化し、減便や撤退という結末に辿り着くという最悪のシナリオさえ見えてしまいます。となれば、北九州空港における最高形は、全日空が福岡や山口宇部の需要を自主的に北九州へとシフトさせる事です。「あわよくば自社便運航」というのが、北九州空港の偽らざる本音でしょう。
さて、見事なまでに同床異夢な全日空とスターフライヤーとのコードシェアですが、私は恐らく全日空の目論見がピタリと填るのではないかと思っています。というのも、全日空が自社の福岡便や山口宇部便の旅客をわざわざ減らすような営業を展開するとは考えられない為、自然とコードシェア北九州便のセールス範囲は北九州市周辺に限定されてしまうからです。しかも、従来のANA福岡便ユーザーはセールスの対象外になるのですから、全日空が何処から旅客需要を調達してくるかは最早自明というべきです。
勿論、周辺空港のANA便利用者においても、「最寄りの北九州空港が使えるのなら、是非そちらで」という向きが存在する可能性はあります。しかし、一度北九州空港を利用してみれば分かりますが、北九州市内から北九州空港というのは思ったほど近くなく、下関市や北九州市西部であれば却って北九州空港の方が不便なくらいです。慣れないルートでの体感距離は慣れたルートよりも長く感じるものですから、「やっぱり福岡空港の方がいいや」と、却って北九州空港見切りを付けられてしまう危険性の方が高いでしょう。
では、従来の福岡空港や山口宇部空港に存在しなかった早朝・深夜便は……と思ったら、全日空がスターフライヤーとコードシェアするのは昼間便のみなんですね。単純なナイトステイ便という事であれば、既に福岡便でも山口宇部便でも設定がありますから、敢えて北九州空港まで来る必要性はありません。強いて可能性があるならSFJ91便なのでしょうが、羽田発21時以降でなければならないという旅客は最初からスターフライヤーを利用していますから、結局はゼロサムゲームという事になりそうです。
となると、今後スターフライヤーが辿るべきシナリオは、以下の通りになりそうです。
- コードシェアの開始により、単価の高いビジネス客がFFPの便利な全日空へと流出する。
- 全日空に足元を見られて、座席買い取り価格をSTAR28並みの低水準に据え置かれる。
- イールドの悪化したスターフライヤーに、ドールキャピタルマネジメントなどの機関投資家が見切りを付け、損切りの株式売却に走る。
- 全日空が安価でスターフライヤーの株式を取得し、子会社化する。
- B737-781の就役で玉突きされたA320がスターフライヤーに押し付けられ、全日空の別働隊として不採算路線を運航する。
- スターフライヤーの赤字は相変わらず福岡県や北九州市が補助金で穴埋めする。
「マリーシア航空」との異名を取る全日空の事ですから、既にここまでのシナリオは構築済みであると考えた方がいいでしょうね。
【2007-04-13 追記】
私が記事を投稿した直後に、プレスリリースが公開されたようです。