いい加減、スターフライヤーの話題にも触れておきます。
○スターフライヤー 羽田─関空就航決定 1日4往復、9月から
http://symy.jp/dezN(ウェブ魚拓+ウェブ精米)
○スターフライヤーが就航会見 関空−羽田に新規参入
http://symy.jp/sdb0(ウェブ魚拓+ウェブ精米)
まぁ、羽田発着枠の割り当て自体については既定事項といった感もありますが、実は今回の関空便専用枠は決してスタフラ差し込みなどではなく、他社と按分になる可能性もあったようです。
国交省によると、羽田発着枠を9月から10往復分増やし、そのうち関空便に4往復分を振り分けることを11日に決定。参入を希望する航空会社を募集したところ、13日までにスター社だけが応募したという。
スタフラだけかよm9(^Д^)プギャー
まぁ、JALにしてもANAにしても、シャトル便は羽田=伊丹だけでお腹いっぱいって事なんでしょうね。伊丹空港供用時間外を除けば、羽田=関空をわざわざ選択する顧客層など非常に限られるのであって、しかもその大半は低イールドの国際線乗り継ぎ客や特定便割引運賃利用者です。とあれば、既存便からわざわざ手を広げる必要もなく、減便のリスクが非常に高い*1関空線を増便する理由もありません。新規航空会社に花を持たせる意味でも、今回の辞退は当然の結果でしょう。
需要が特殊であれば、当然供給も特殊化します。わざわざ関空を利用する奇特な顧客層に対応すべく、現在の羽田=関空線は朝晩を中心としたダイヤ設定になっています。
○黒い翼、関空―羽田線参入へ 「空白の5時間」埋まる?
http://symy.jp/p1AD(ウェブ魚拓+ウェブ精米)
この「空白の5時間」は、正にそうした羽田=関空線需要の特殊性によるものであって、JALもANAも「真っ昼間に関空線なんか運航したって誰も乗らない」と達観している*2のです。
とはいえ、元々の移動需要が巨大である東京=大阪ですから、スターフライヤーに成算がないとも言い切れません。その条件は、ANAとのコードシェアにより、販売責任をANAに押し付けてしまう事です。自社の在庫リスクを低減し、コードシェアする事による認知度向上を考えれば、最早現在のスターフライヤーはANAとのコードシェアなしには生き残れないとすら言えます。
しかし、スターフライヤーの行動は想像の斜め上を行きました。何と、関空線ではANAとのコードシェアは実施しないとの事です。
○羽田―関西線に9月から4往復 スターフライヤー
○スターフライヤー 6月利用実績について
http://www.starflyer.jp/starflyer/press/2007/press_20070709.pdf
15ポイント超の大幅な搭乗率改善の陰には、ANAとのコードシェアそのものだけでなく、それに付随する各所での名前露出の効果もあります。何せ、羽田空港においてはANA便で唯一の第1ターミナル発着ですから、ウェブサイトや案内放送などにおいても「ANA北九州便は、スターフライヤーとのコードシェア便の為……」などといった注意書きがついて回ります。わざわざ第1ターミナルに行かされるANA利用者にとっては迷惑千万でしょうが、不便さをそのまま喧伝してもらう事による広告戦略というのは非常に斬新でしょう。少なくとも、名前すら知られていなかった1年前に比べれば、スターフライヤーにとっても新北九州空港にとっても状況はかなり恵まれていると言うべきです。
9月14日から運航を開始すると大見得を切った以上、ANAとのコードシェア交渉不調による就航延期など出来るはずもありません。とあれば、スターフライヤーが採るべき方策は唯一つ、羽田=北九州線を減便してでも羽田=関空線を増便する事です。幸い、関西国際空港は羽田発着枠の規制対象外空港ですから、北九州線を減便したところで国土交通省から不利益な扱いを受ける事はありません。
○新規航空会社による羽田空港発着枠の使用について
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/12/121213_.html
尤も、この方策は即ち九州政財界との決別を意味するものでもあり、今後福岡県や北九州市から一切の補助金を期待できなくなるという事でもあります。スターフライヤーが本気で関空線を黒字化の起爆剤にしようというのなら、このくらいの覚悟は既に完了していてもらわないと困るのですが、今頃スターフライヤーの中の人は「関空線就航で国土交通省からナンボ、地元自治体からナンボ……」といった補助金のそろばん勘定しかしていないんでしょうね。
取り敢えず、スカイマーク神戸線が今のところ堅調に推移しているのは、同路線のJAL便やANA便に対して便数で圧倒的なアドバンテージを維持しているからだという事を、スターフライヤーは今一度真剣に受け止めるべきでしょう。そのスカイマークですら、羽田発着枠の再配分で神戸線を増便しようとしているのですから、スターフライヤーの羽田=関空線5往復構想が如何に甘いものであるかがよく分かるというものです。運賃体系は相変わらずグダグダなスカイマークですが、少なくともダイヤ設定に関する限り、スターフライヤーよりも学習能力は備わっているようです。