これは、昨日の続きです。
○羽田−関空線の運賃および運航ダイヤについて
http://www.starflyer.jp/starflyer/news/2007/news_20070822_fare.pdf
今回、スターフライヤーは以下の運賃を用意してきました。
- 普通運賃系
- 大人普通運賃
- 往復運賃
- 小児運賃
- 4回回数券
- 6回回数券
- 特定便割引運賃
- STAR1
- STAR7
- STAR28
- バーゲン型運賃
- 関西空港就航記念運賃
- STAR LIMITED
- その他
- スターシニア
- スター学割
- 身体障害者割引運賃
- 介護割引運賃
- 国際線乗継運賃
北九州線就航の時と同様、今回も逐一論評してみようかと思います。但し、流石に全運賃まで見る気はしないので、一般人でも利用しそうな主要運賃に話を絞りますが。
1.普通運賃系
羽田=関空線の基本となる運賃です。左側が通常運賃、右側がチケットレス割引で、双方とも羽田空港の旅客施設使用料を含んでいます。往復割引・回数券については、それぞれ1搭乗当たりの運賃です。
- 大人普通運賃
- 18,000円 / 17,650円
- 往復運賃
- 16,500円 / 16,150円
- 小児運賃
- 10,000円 / 9,800円
- 4回回数券
- 14,500円 / 14,200円
- 6回回数券
- 14,000円 / 13,700円
大人普通運賃や往復運賃は、流石にJALやANAよりも目に見えて安い水準*1で、ここにスターフライヤーのせめてもの矜持を見て取れます。しかし、ここで忘れてはならないのが、JAL・ANAにはシャトル往復運賃が存在するという事です。10月以降、このシャトル往復運賃は片道当たり15,000円に値下げされますから、搭乗35日前の発売開始や7日以内の往復といった制約を踏まえても、なおスターフライヤーの往復割引よりも分があります。しかも、シャトル往復運賃なら伊丹線や神戸線に振り替える事も可能なのですから、これではスターフライヤーに勝ち目はありません。
4回回数券ともなるともっと悲惨で、JAL・ANAとの差額はたったの700円です。羽田=関空線の利用者が少なからずマイレージに興味を持っているという事を考えれば、たった700円を節約する為だけに280マイル+αをドブに捨てるバカは皆無だと言い切ってもよいでしょう。6回回数券でもJAL・ANAの法人契約用6回回数券との差額は1,000円内外であり、経理担当の移行コストを考えれば、JAL ONLINEやANA@deskからの移行は期待できないでしょう。
それにしても、小児運賃はJAL・ANAとの差額が350円しかないとはトホホ(;´Д`)
2.特定便割引運賃
新幹線競合路線である羽田=関空線には欠かせない運賃です。左側が通常運賃、右側がチケットレス割引で、双方とも羽田空港の旅客施設使用料を含んでいます。
SFJ27/20/28便
- STAR1
- 15,000円 / 14,700円
- STAR7
- 13,000円 / 12,750円
- STAR28
- 11,000円 / 10,800円
SFJ29便
- STAR1
- 13,000円 / 12,750円
- STAR7
- 11,500円 / 11,250円
- STAR28
- 10,000円 / 9,800円
3.バーゲン型運賃
新規航空会社が自縄自縛に陥る原因となる運賃です。左側が通常運賃、右側がチケットレス割引で、双方とも羽田空港の旅客施設使用料を含んでいます。
- 関西空港就航記念運賃
- 8,000円 / 7,850円
- STAR LIMITED
- 未発表(10月搭乗分は設定なし)
まぁ、妥当な水準でしょう。これよりも安ければその他の運賃が相対的に割高に見えてしまいますし、これよりも高ければJALバーゲンフェアやANA超割との差別化が出来なくなってしまいます。STAR LIMITEDは現時点では未発表ですが、羽田=北九州線の時と同様、この8,000円という運賃を踏襲するものと思われます。
あとは、この運賃がどれだけ捌けるかですね。北九州線の時と同様に、いつまでも空席が残るような事にならなければいいのですが、残念ながらこの原稿を書いている時点ではかなり空席が目立っています。この初動の鈍さからすると、スターフライヤー関空線のリバウンド不況は北九州線の時よりも悲惨になりそうです。
4.その他
余り全体を見る気はしませんが、この運賃だけは非常に気懸かりなので取り上げておきます。
- 国際線乗継運賃
- 9,000円(旅客施設使用料込み)
何に乗り継ぐんだ、何に( ´゚д゚`)
関空行きの始発便が10時台、関空発の最終便が19時台では、関空が強いアジア線に乗り継ぐ事もままなりません。SFJ便と国際線とのMCTが何分に設定されるのかは不明ですが、仮に双方向とも75分だとすると、乗り継ぎが可能なのは以下の便となります。
エミレーツ航空やカタール航空などに代表される「関空禊ぎ期間」の航空会社を除けば、羽田=関空=海外というルートが成田=海外よりも優位性を持ち得るのは、関空発着便の利用によって現地滞在時間を成田発着便利用時よりも長く確保できる場合のみです。しかし、スターフライヤーと乗り継ぎ可能な便ではこの条件を満たしませんから、利用者にとっては関空で余計なトランジットが発生するだけ不便になるのです。
更に言うなら、国際線乗継運賃は原則として国際線航空券に切り込んで発行するものなのですが、スターフライヤーには関空で営業協力している海外航空会社が存在しません。別に、普通運賃であればIATA加盟会社であるスターフライヤーを任意の国際線航空券に切り込む事は可能なのですが、そうなると同一区間を運航しているJALやANAではなくスターフライヤーを使う理由が説明できません。現時点では、スターフライヤー自身が関空発着の国際線を運航する予定もありませんから、このまま行くと利用者が殆どいないままに人知れず運賃廃止となる公算が大でしょう。
強いて営業強力してくれる可能性があるとすれば、羽田=北九州=上海で協業した実績がある中国南方航空くらいのものですが、こちらは既に企画倒れになっているらしく、以前の記事で紹介したプレスリリースは既にリンク切れになってしまっています。ここでスターフライヤー自身が羽田=関空=海外というルートを積極的に喧伝すれば、いよいよ北九州空港唯一の国際定期路線である北九州=上海線に留めを差す事になってしまいます。別に、スターフライヤー自身はそれでも構わないのでしょうが、二度と福岡県や北九州市から補助金をもらえなくなるリスクを考えれば、スターフライヤーとしても積極的に関空乗り継ぎとは言えないのでしょう。
こうして振り返ってみると、見事に私が使いたいと思った運賃は皆無でした。泉ズリアの私でさえこの評価なのですから、一般客に対する訴求力など実にお粗末なもので、このままだと既存の関空便とツアーバスとの狭間に埋もれていきそうです。関空線でズッコケたら会社そのものの存続が危うくなるはずなんですが、そんな危機感を微塵も感じさせない所が、デザイナーズエアラインの「貫禄」なんでしょうね。
取り敢えず、来年3月の決算でドールキャピタルマネジメントがどう動くか、今から注目しておいた方がよさそうです。