五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

高速道路を無料化した時の弊害

 という事で、もう1つ自動車ネタを被せます。

○高速道路は無料にできる - 山崎養世の「東奔西走」

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071009/137073/

 私自身は、高速道路の無料化には賛成です。その事は、以前の記事を見ていただければお解りになると思いますが、一応関係する過去記事を再掲しておきます。

○建設する前に償還してくれ

http://d.hatena.ne.jp/MayField/20060121#highway

 そんな高速道路の無料化ですが、コメント欄を読むと結構反対意見も見受けられます。その反対意見は、主に以下の3つの理由に集約されます。

  1. 高速道路を無料化しても、その利益を受けるのは普段高速道路を利用しているドライバーだけであり、税の不公平を招く。
  2. 高速道路を無料化すると、今でも渋滞している区間の混雑が更に激しくなり、「低速道路」になってしまう。
  3. 高速道路を無料化すると、今まで公共交通機関を利用していた人も自家用車を利用するようになり、CO2の排出抑制を定めた京都議定書の趣旨に反する。

 部分的には私もコメント欄でこういう指摘に反論したのですが、ここで改めて上記の論点について見直してみたいと思います。


1.税の不公平

 現在、国内貨物輸送量の半分近くは、営業用トラックによって輸送されています。自家用トラックを含めると、8割以上の貨物がトラックによって輸送されている計算となり、トラックなくして日本の物流は成り立たない状態です。

○平成17年全国貨物純流動調査(物流センサス)

http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/census/8kai/syukei8.html

 我々の日常生活は、日々の食料品からICや建築部材に至るまで、物流なしには成立し得ません。しかし、物流コストの切り捨てによる末端への転嫁は酷く、中長距離輸送であっても高速道路すら利用できない運送業者もいるのです。こうした中長距離トラックが一般道に流れ込む事により、一般道の地域輸送機能が大幅に阻害されるだけでなく、事故の惹起にも繋がっているのです。
 高速道路が無料化されれば、中長距離を走行するトラックは、殆どが高速道路利用へと移行する事になるでしょう。そうすれば、輸送時間が短縮されるだけでなく、一般道の機能確保や安全性の上昇、更にはトラック運転手の待遇改善にも繋がります。トラック輸送の拡大による利益を全国民的に享受している以上、そのコストについても全国民的に負担すべきでしょう。そして、その最たる例が、高速道路の無料化による輸送コストの全国民的負担なのです。


2.混雑の悪化

 これは、杞憂であると言ってもいいでしょう。渋滞発生の原因は、単に交通量が多いからではなく、その交通量を捌くに当たってボトルネックとなる箇所が存在しているからです。車線数の減少然りトンネル然り、これらは課金の有無とは独立して発生するものです。そんな中、料金所は高速道路における主要な渋滞発生箇所の1つであり、無料化によって料金所というボトルネックが解消されるのであれば、寧ろ渋滞の緩和に繋がる事になります。
 但し、首都高速道路のように構造そのものが欠陥になっている場合は、通行量による料金の抑制という発想も必要になってきます。しかし、この場合において課金の対象とすべきは首都高速道路よりも寧ろ一般道を含めた都心部全体であり、不要不急の自動車交通を都心部に招き入れないという観点が必要なのです。これは、高速道路そのものではなく都市交通全体に関わる話題であり、高速道路の無料化だけでは論じきれない課題でもあります。
 取り敢えず、通過交通が無駄に都心部を通過しなくて済むよう、バイパスや環状道路の整備は必要不可欠です。これは、「環境先進国」と言われるドイツにおいても同様であり、「都心部には自動車を乗り入れさせない」とする街では、大抵環状道路が整備されています。どうせETCのシステムが宙に浮く事ですし、今後ETCは高速道路よりもロードプライシングの分野においてこそ活用すべきでしょう。


3.CO2の排出増加

 これは、一時的な現象に収まるのではないかと思います。確かに、高速道路の無料化は自動車移動需要を活性化させる事になりますから、当初は自動車移動が増え、それに伴ってCO2排出量も一時的には増加する事でしょう。前出課題のように、一部区間では渋滞が悪化する所もあるでしょう。しかし、混雑が悪化すればするほど、定時性を強く求められる移動需要から鉄道などにモーダルシフトしていく事になり、不要不急の旅行需要も渋滞の影響で差し控えられる事になりますから、最終的には「ある程度」の水準に収まるものです。
 更に言うなら、高速道路の走行と一般道の走行とでは、高速道路を利用した方が省燃費で走行できます。自動車に限らず、交通機関のエネルギー消費が最も大きくなるのは、その加速時です。一般道よりもゴーストップが少なく、定速走行が容易な高速道路は、無駄なアクセルを減少させ、最終的にはCO2の排出抑制にも繋がるのです。



 こうしてみると、無料開放反対派の大多数は、環境汚染云々ではなく、単純に「自動車=悪」と決め付けているだけではないのかなぁと穿ってしまいます。しかも、そういう人に限って、得てして自分の生活が如何に自動車交通に支えられているかについて無関心なのです。上岡直見や杉田聡といった脱クルマ論者は、自身の著書が却ってこういう風潮を招いてしまっているという事について、今一度反省が必要でしょう。
 今この場で無料化しなくても、今から40年後には日本高速道路保有・債務返済機構の解散及び承継債務の完済により、高速道路は無料開放される事になります。唯、剰りにも現役世代にとっては遠すぎる時代の話なので、誰も無料化される日の事を何も考えていないだけです。上記で挙げられているような論点は、遅かれ早かれ現状のままでも問題になり得る事です。であれば、道路特定財源が余り始めている以上、自動車交通全体の向上の為にも、やはり高速道路は無料開放とすべきではないでしょうか。