折角広島に来ているので、こんなニュースを取り上げておきます。
○知事「西飛行場は不要」
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私も藤田雄山知事に同感です。というのも、広島西飛行場はその立地的な制約から計器着陸装置（ILS）が設置できず、広島南道路の建設によって滑走路が短縮されればジェット機すら就航できなくなるからです。一方、広島空港ではILS CAT-IIIaの導入に向けて人工地盤が着々と建設され、東京線はJALがB767-346やA300-600R、ANAに至ってはB777-281やB747-481Dまで導入するほどの大盛況です。広島市だけでなく、三原市や福山市まで含んだ県域全体の航空需要を考えれば、広島西飛行場の存在など無きに等しく、今すぐ廃止しても困る人は殆どいない状態でしょう。
今後、九州新幹線の全通によって広島西＝鹿児島便が大打撃を被り、岩国基地の軍民共用化で些かながらも羽田便が飛ぶようになれば、いよいよ広島西飛行場はその歴史的使命を終える事になります。広島高速5号線が全通して広島駅新幹線口からの定時性が確保されるようになれば、それが広島西飛行場廃港の決定打になります。平井伸彦さんは、さぞかし残念がる事でしょうけどね。
因みに、今から6年前のとある平日にレンタカーで両空港へのアクセス時間を計ってみた所、以下のような結果が出ました。
- 広島駅南口＝広島空港：43分
- 広島駅南口＝広島西飛行場：20分
当時は安芸府中道路が山陽道広島東ICまで来ていませんでしたから、現在はもっと所要時間が縮まっているはずです。広島高速5号線の全通後は、山陽本線を挟んだ駅南口からでも、タクシーや自家用車だと30分前後で広島空港に到着してしまう事でしょう。紙屋町からでさえ*1、40分前後もあれば着いてしまう計算になります。
一方、広島駅南口から広島西飛行場へのアクセスは、今後とも劇的に改善されるような事はありません。平和大通りをアンダークロス出来るようになったのが最後の改善といった感じで、この所要時間が15分や10分に縮まる事は考えられません。寧ろ、市内を突っ切る事による渋滞遭遇のリスクの方が高いでしょう。
航空機のダイヤが水物である事を考えれば、20分や30分など誤差の範疇です。これでは、広島西飛行場からの羽田便が復活したところで、輸送規模で広島空港発着便とは勝負になりません。広島南道路を地下に追い遣ったとして、就航してくれる機材はB737かA320が関の山、便数でもJALやANAのように7便も8便も飛ばすというのは不可能です。多勢に無勢で競争を挑んだ結果がどうなるかは、創業当初のスカイマークやAIR DOを見れば火を見るよりも明らかでしょう。
あくまで推測ですが、広島市の目論見としては、関空開港後も国内線の拠点空港として生き存えた伊丹空港の例を見て、「近くて便利な広島西飛行場」と二匹目のドジョウを狙っているのでしょう。最近では、名古屋空港がセントレア開港後も県営名古屋空港としてしぶとく生き存えている例があるだけに、なおさら広島西飛行場の再興を願っているのでしょう。しかし、伊丹空港の場合は元々が多大な航空需要を抱えていましたし、名古屋空港の場合は航空自衛隊小牧基地として飛行場機能そのものは当初から存続が既定路線でしたが、広島西飛行場には共用者もいなければ多大なる航空需要もありません。広島空港においても、東京線の利用者がその8割を占めるという典型的な「東京便モノカルチャー空港」であり、その東京線が広島空港に集約されてしまった以上、残りの各路線も広島空港に片寄せしてしまう方が自然なのです。
広島市にとって最大の誤算は、阪神大震災によって山陽新幹線が長期間に渡り不通となってしまった事です。一度は「新広島空港は遠くて不便だから」と食わず嫌いで山陽新幹線に流れていた航空旅客が、新幹線の不通で仕方なく広島空港を利用させられる内に、「思ったほど広島空港は遠くない」という事実を知ってしまいました。それ以降は、東京＝広島線の旅客は増加の一途で、今では国内線旅客数で全国5位にまでのし上がっています。悪評ばかりが先行してしまったが故に、いざ実用されるとなると却って好印象となってしまったという典型例でしょう。
これとは逆に、前評判ばかりが先行して利用者を大いにガッカリさせているのが、新北九州空港やスターフライヤーです。特に、旧北九州空港を使っていた人の中からは、「空港が遠くへ移って不便になった」という声が少なからず聞こえてきます。広島市は、何とか広島西飛行場に東京線の旅客を呼び戻したいようですが、前評判ばかり行き過ぎてしまうと、実際に広島西飛行場を利用した旅客からは「それほどでもない」と悪評が聞こえてくる事になるかも知れません。最早、広島西飛行場が旧広島空港時代の利便性を取り戻す事などないのですから、ここは静かに眠らせてやってこそ、「平和都市」と言えるのではないでしょうか。
