という事で、先々週・先週と2週に渡ってエコノミクス甲子園の地方大会を観戦してきました。
○第二回 エコノミクス甲子園
http://www.apfl.jp/eco07/
高校生クイズとは異なり、同日に複数の地方大会が開催される為、全10大会を観戦する事は出来ませんでしたが、それでも1人が観戦できる最大である4大会を回ってみました。第2回という事もあってまだ小規模なエコノミクス甲子園ですが、それだけに出場者1人1人がクローズアップされ易く、特に出場者と直接触れ合う機会のあった沖縄大会では、高校生クイズ以上に楽しい一時を過ごす事が出来ました。
さて、そんなエコノミクス甲子園ですが、全ての観戦を終えてからふと考えたのは、「エコノミクス甲子園は第3回以降どのようなクイズ大会を目指せばいいのか?」という事です。今回クイズプロデュースを担当した人曰く、「高校生クイズと同じにはしたくない」との事でしたが、エコノミクス甲子園の本目的が「金融知力の普及」である以上、単に優勝を競い合うクイズ大会になってしまっていいはずもありません。これは高校生クイズについても同じ事が言えるのかも知れませんが、「如何に全ての出場者に大会を楽しんでもらうか」という視点こそが全ての原点というべきでしょう。
今回のエコノミクス甲子園で全国大会に進出したのは、以下の10チームです。
- 東北エリア代表
- 福島県立 福島高等学校
- 北陸エリア代表
- 国立 金沢大学教育学部附属高等学校
- 関東エリア代表
- 私立 開成高等学校
- 東海エリア代表
- 私立 滝高等学校
- 関西エリア代表
- 私立 灘高等学校
- 中国エリア代表
- 私立 岡山白陵高等学校
- 四国エリア代表
- 香川県立 観音寺第一高等学校
- 九州エリア代表
- 私立 ラ・サール高等学校
- 熊本エリア代表
- 私立 ラ・サール高等学校(第一回大会優勝メンバー)
- 沖縄エリア代表
- 私立 昭和薬科大学附属高等学校
私が実際に観戦した4大会での所感だけで言うなら、開成・灘とその他多数との実力差は歴然です。単に知識量で他校を圧倒しているというのみならず、早押しクイズにおけるクイザーとしてのセンスもそこそこ鍛えられているようで、ペーパー→早押しという形式では最早止めようがありません。それこそ、全盛期の筑駒や東大寺のクイ研が何とか立ちはだかれるかといった感じで、今回の大会で独壇場になってしまったのは当然の帰結というべきです。
一方、これといった強豪チームの存在しなかった沖縄や北陸では、そこそこ白熱した展開になっただけでなく、出場者全員が最後まで楽しんでいるような雰囲気がありました。灘や開成の圧勝ぶりをこの目で見てきた私にとっては、「これでは全国大会でフルボッコにされるだけではないか」と心配でならない代表チームではありますが、「クイズを楽しみながら金融知力に親しんでもらう」という当初目的においては、寧ろ関東や関西よりも大会としては成功したのではないかという印象を受けました。
沖縄や北陸の出場者を見て私が思い出したのは、Answer×Answerの下位リーグでプレイしている中高生です。始めた当初は「Aリーグ止まりが関の山」とか言っていた私も、気が付けばスタンドなしでSSリーグマスターを維持できるレベルに来ていました。そんな私から見れば、AリーグやBリーグで一進一退している中高生は「雑魚」に過ぎないのですが、これからの高校生クイズやエコノミクス甲子園を支えていくのは、こうした「雑魚」の中高生なのです。
最近の中高生のゆとりっぷりを知って頂く為に、こんな問題を挙げておきます。
ブロハラ読者諸兄なら「クウェートに/」で正解を導き出せそうなものですが、昨今のBリーグでは全文読み切りでもなかなかボタンが押されません。私が見ていた女子中学生の事例では、苦し紛れにボタンを押した対戦相手が4番と誤答し、女子中学生自身も散々迷った挙げ句に2番と誤答していました。私の世代にとってはリアルタイムの出来事である湾岸戦争も、女子中学生にとっては「歴史」でしかないという事に思い至ったのは、暫く経ってからの事でした。
このレベルの知識しかないプレイヤーでは、早ければAリーグ昇格チャレンジ、遅くてもSリーグ昇格後は壁にぶつかる事でしょう。既に、Bリーグながら勝率が40%前後と全然勝てていないその女子中学生でしたが、意外にもAnswer×Answerを楽しんでいるように見受けられました。クイザーにはクイザーの、女子中学生には女子中学生の楽しみ方があるという事なのでしょう。
高校生クイズにしてもエコノミクス甲子園にしても、それがクイズ大会である以上、最終的に開成や灘のような強豪校が勝ち残ってしまうのは致し方ありません。往年の高校生クイズ近畿大会のように、灘や東大寺を寄って集って潰すようなクイズ形式にするという方法もありますが、どんな強豪校のクイ研だって他の出場者と同等にクイズを楽しむ権利がある以上、クイズ形式をねじ曲げてまで強豪校に勝たせなくする方法論には、私は首肯しがたいものがあります。今回のりそな銀行共催大会のように、問題そのものを金融知力とは全く関係ない内輪ネタにするというのも同様で、これは出場者の「クイズに参加する権利」を侵害するにも等しい行為であるというべきです。
ただ、強豪校が優勝に至るプロセスにおいて、他の出場者にも強豪校と同程度にクイズ大会を楽しんでもらう方法は、決して皆無ではありません。これは即ち、「強豪校だからといって簡単に優勝はさせない」という事でもありますが、要は全ての出場者に最後まで参加意識を持ってもらえるようなクイズ形式にするという事です。全ての出場者が最後まで実力を出し切って、その中で強豪校が勝ち残るのであれば、それほどクイズに強くない出場者であっても「楽しい大会だった」と思える事でしょうし、強豪校にとってもストレート勝ちより大きな充実感を味わえるはずです。
残念ながら、私にはクイズに関する企画力が備わっていない為、具体的にどのようなクイズ形式が上記の要件を満たしているのかは分かりません。ただ、高校生クイズにしろエコノミクス甲子園にしろ、現在のクイズ形式が必ずしも全ての出場者にとって楽しんでもらえるものではない事は確かです。高校生クイズの場合は既に硬直化が始まっているのかも知れませんが、エコノミクス甲子園はまだまだこれから幾らでも改善・発展させる余地があります。
聞く所によると、来年1月13日に万国津梁館で開催される全国大会は、かなり面白いクイズ形式になるとの事です。私も観戦しに行く予定ですが、その内容によって、エコノミクス甲子園の将来がある程度見えてくるような気がします。