五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

現代アメリカ自動車事情

 さて、今回は現地での移動を全てバスで行った為、米国東海岸メガロポリス地区の自動車交通について、自分の目で色々と見る事がありました。米国内の自動車交通事情については、学生時代に色々と文献で目にする事はありましたが、既に7年の歳月が経過している事を差し引いても、旅行前に私が思っていた交通事情とは、かなりその様態が異なっていました。
 そこで、今回は私が米国東海岸を移動して「発見」した自動車交通事情について、何点か纏めておきます。


1.意外と有料道路が多い

 これは、今回の旅行で最も意外に感じた事です。昨今の日本における高速道路無料化の議論において、「アメリカの高速道路は原則として無料」なんて主張を目にする事がよくありますが、少なくともメガロポリスにおいてはこの主張はウソです。イギリスの高速道路が殆ど無料*1なのと比べると、有料道路だらけと言ってもいいくらいです。
 アメリカの有料道路は、実に多種多様です。ニュージャージーターンパイクやマサチューセッツターンパイクのように州間高速道路*2がそのまま有料道路となっている所もあれば、リンカーントンネルやRFKブリッジのように局所的に有料化している所もあります。これを東名高速道路に当て嵌めるなら、御殿場IC以東と日本坂トンネルだけ有料化しているようなもので、「高速道路=有料」という日本からしてみれば、かなり柔軟性に富んでいます。
 そして、これらの有料道路は、設備面での投資もかなり進んでいます。ニュージャージーターンパイクのニューヨーク市近郊区間では、片側4車線に加えて乗用車専用道路が片側3車線あり、合計すると往復14車線という日本では想像も付かないような設備の豪華さです。また、都市圏の有料道路にはバス専用レーンを設けているものも多く、観光バスで移動していた私はかなりその恩恵に与ったものです。
 こうした設備の豪華さは、「有料道路にはその通行料金に相当する受益がなければならない」という思想に基づくもので、建設財源の不足からやむなく高速道路を有料化した日本とはその背景が大きく異なります。勿論、米国の有料道路がこれだけ充実しているのは、設備を建設するのに十分な用地を確保する事が容易だったという事もありますが、やはり日本に比べれば受益者負担の原則が明確であり、料金プール制で東名・名神・中央の輸送力増強を等閑にしてきた日本の高速道路行政は責められて然るべきでしょう。


2.インターチェンジが日本そっくり

 米国の高速道路にはかなりの有料区間が含まれている事は、先に書いた通りです。当然ながら、有料道路であれば何処かでその通行料金を徴収しなければならず、本線集約料金所でなければインターチェンジにおいて徴収する事になるのは自明の理です。そして、そのインターチェンジの構造は、東名高速道路沿線住民なら既視感を覚えてしまう程に日本の高速道路にそっくりなのです。
 勿論、米国が日本をマネシタ真似したのではなく、日本が米国を範としたのですが、有料区間インターチェンジは教科書通りのトランペット型になっている事が多く、鏡で左右を反転させて標識の英語を塗り潰せば、日本の高速道路であると言ってもそのまま通用しそうな雰囲気です。これは、ETC普及前に高速道路網が完成した事もさる事ながら、米国の高速道路周辺にツイントランペットを建設するだけの用地が恵まれていた事が大きく影響しているものと思われます。やはり、土地が有り余っているのであれば、トランペット型が有料道路のインターチェンジとしては最も効率的なのでしょう。
 なお、現在では米国でもEZPassというETCが多くの有料道路において普及しており、今回私が乗車した観光バスもEZPass対応車でした。ETCゲートの最大通過可能速度はインターチェンジによって大きく異なっており、特に減速しないで通過できるものから時速10マイル以下まで減速しなければならないものまで、実に多種多様です。この点に関しては、何だかんだで50km/h程度でも通過できてしまう日本のETCの方が進んでおり、米国でEZPassの普及率が高まれば、ETCゲートの通過速度も向上していくものと思われます。


3.警察による取り締まりが目立つ

 青キップや赤キップを切られた経験を持つ日本のドライバーは、多かれ少なかれ反則金商法で儲けている日本の警察行政に恨み言の一つや二つくらい呟いた事があるかと思います。日本の場合、本来は「道路交通の安全を確保する」という目的の為に行われるべき交通違反取り締まりの自己目的化が過剰に進行した結果、ドライバーを騙し討ちにして反則金をせしめるような取り締まりが横行しているのですが、一方で米国はとなると、これまたかなりの摘発現場を目撃しました。とは言っても、今回の移動時間は殆どが州間高速道路の上でしたから、私が目撃した摘発現場も、その殆どが州間高速道路上におけるパトカーでの摘発でした。
 別に、観光バスのドライバーに「何故あの車はパトカーに止められているのか?」などと尋ねるような事はしませんでしたが、十中八九スピード違反によるものと思われます。そして、これは日本人には意外なのですが、検挙する側のパトカーは大半が通常の州警察のパトカーです。今回の旅行で、私は路側帯での摘発を20回くらい見掛けましたが、覆面パトカーと思われる車両を見たのは1回だけです。これは、クラウンやセドリックなどの覆面パトカーが取り締まりの大半を占めている日本の高速警察隊とは大きく異なっています。私は、日本の高速道路でパンダに追尾されて摘発されるなんてのは余程の間抜けだと思っていますが、通常のパトカーによる摘発が多いのを見るに付け、余程米国人が後方に無頓着なのか、それとも余程州警察の取り締まりが手際よく行われているのか、私は疑問になってしまいます。
 因みに、州間高速道路の制限速度は実に多種多様ですが、東海岸メガロポリスにおける一般的な制限速度は時速65マイル(≒104km/h)と、そんなに高くありません。実際には、制限速度+10マイルくらいはお目こぼしを受けられるようですが、それでも120km/h程度が上限なんですから、欧州に比べればかなり低く感じられます。日本においても、深夜の東名高速道路においては追越車線の平均速度が140km/h以上になる事がありますから、米国の高速道路は実にゆったりとしているものです。
 なお、日本やイギリスとは異なり、捕まらなければオールオッケーと大幅なスピード違反で走行する車両は殆どいません。私なら、米国中西部の直線区間だったら確実に時速100マイルくらい出してしまう事でしょうが、これだけ取り締まりが多く行われている現状を目にしては、そんなにやんちゃな事は出来そうにありません。まぁ、それ以前に下手なアメ車だと時速80マイルを超えたらガタガタ言い出しそうという心配があるんですけどね。


4.道路地図のページが基本的に州名のアルファベット順

 今回は、前回のイギリス旅行時とは異なり、自分で運転する必要がなかった為、事前に道路地図を購入する事はしませんでした。しかし、根っからの地理屋としては現在自分が何処を走行しているのか判らないのは最大級の不安にして屈辱ですから、自分への土産も兼ねて、州間高速道路のサービスエリアで全米を網羅した道路地図を購入しました。結局、実際に道路地図と首っ引きになる場面はありませんでしたが、ジャンクション付近において道路地図が役に立った事は何回かありました。
 サービスエリアで見掛けた道路地図は何種類かありましたが、それらの総てに共通する特徴として、そのページの並び順が州名のアルファベット順になっている事が挙げられます。日本で一般に見掛ける全国版の道路地図だと、そのページの並び順は北から南へと順番になっていて、ページを捲った先の地図は前のページと繋がっているというのが殆どです。しかし、米国の道路地図だとそうは行かず、州を跨いだ際にはその州のページを探す必要が出てきます。
 恐らく、日本式の掲載方法を使うには、アメリカ合州国は広過ぎるのでしょう。I-90をシアトルからボストンまで突っ走る人が多いのならいざ知らず、大抵は州を2つか3つ跨ぐくらいですから、地図の並びが全米を横一線に貫いている必要性もそんなに高くありません。それに、日本のように等縮尺で太平洋から大西洋まで掲載したら、そのページ数も莫大になりますし、時には1ページが丸々砂漠だけなんて事態が発生する事も考えられます。私のように趣味で道路地図を読む人間ならいざ知らず、一般人にはこれでは不便で仕方がない事でしょう。そう考えると、全米を州別に掲載し、なおかつ並び順を州名のアルファベット順にする事にも、それなりの合理性が見えてきます。
 因みに、イギリス旅行時に購入した道路地図は、日本と同様にグレートブリテン島全体を南北に貫くようなページ構成でした。グレートブリテン島が本州よりも小さい事を考えれば、こういう掲載方法になるのも合理的であると言えます。



 そんなこんなで、今回の旅行で色々と米国自動車交通事情に対する思い込みを改めるに至ったのですが、運転のし易さという意味では、米国はかなり日本人でも入り込み易い方です。信号機や標識は一目見れば解るようになっていますし、文字標識でもそんなに難しい英単語が使われている訳ではないですから、義務教育程度の英語力があれば大体の標識や指示は理解できます。運転マナーも、日本と比してそんなに悪い訳ではないですから、東南アジアや特定アジアのように道路上で恐怖に怯える事もありません。
 という事で、今度個人旅行で渡米する機会があれば、レンタカーにも挑戦してみようかと思います。フィラデルフィアからボストンまで陸路を突っ走るような事はしたくありませんが、キーウェストプリマスに足を伸ばす事を考えたら、レンタカーのお世話になるのが最も手っ取り早い手段です。年齢要件もクレジットカード要件もクリアしていますから、私に必要なのは、どうでしょう班と同じくらいの行動力と勇気だけです。
 まぁ、唯一にして最大の心配は、交差点や駐車場出場時に右側通行であるという事を忘れやしないかという事ですね。

*1:実際、私がロンドンからエディンバラまで運転した時も、高速道路が有料になっていたのはバーミンガム周辺のM6 Tollだけでした。この路線は、同じくバーミンガム市内を通過するM6のバイパスという意味合いが強く、日本で言うなら首都高速道路横羽線に対する湾岸線のようなものです。通行料金は乗用車で£4.50と首都高速道路並みですが、イギリスの物価に照らして考えれば日本よりもかなり割安であり、急がないなら無料のM6を走行するという選択肢も与えられている事を考えれば、かなり良心的な価格設定であると言えます。

*2:日本で言う高速自動車国道のようなものです。