五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

日本航空の法的整理が正式に開始

 遂に、日本のフラッグキャリアを張ってきた大看板にも幕です。

○JALが更生法申請、支援機構傘下で再建へ=負債総額2兆3000億円超

○2010年01月19日 株式会社企業再生支援機構による支援決定及び会社更生手続の開始決定等に関するお知らせ

http://press.jal.co.jp/ja/release/201001/001430.html

 以前にも書いた通り、JALの経営を立て直すには法的整理以外に道はなく、漸く政府もそうした輿論を理解して色々と動いた結果という事ではありますが、やはり長年使い続けてきた贔屓の航空会社が、そして1951年以来ずっと日本のフラッグキャリアであり続けた航空会社が、事実上倒産してしまったというのは、やはり感慨深いものがあります。1ユーザーとして、米国同時多発テロ以降のJALを救済できなかったというのは、極めて遺憾であります。
 一応、3年以内には経営再建して再上場を果たす事を狙っているとの事ですが、そこへの道程は非常に険しく、恐らくJAL倒産」というイメージの広がっている現状では二次破綻は免れない事でしょう。そして、下手に日銭が入ってくる業種であるばかりに、二次破綻が不可避であると気付いた時にはもう手遅れとなっていて、最終的にはパンナムと同じ道を歩まざるを得ないのではないかと思われます。些か悲観的に過ぎる嫌いもありますが、楽観的に構えるだけのプラス材料が何処にも見当たらないのも、また厳しい現実です。
 在りし日の「フラッグキャリアJAL」復活が夢物語でしかない以上、せめて既存ユーザーや新規ユーザーに優しい航空会社として存続してくれる事を願うばかりです。そして、それが出来ないのであれば、会社清算という最後の手段に出るのも、またやむを得ない事でしょう。



 そんなJALの経営再建を支える最大の存在は、言うまでもなく経営破綻後のJALを利用し続けてくれる乗客や荷主です。しかし、国内外に数多くの航空会社が生まれ、地上交通機関も多様化している今日において、敢えて経営破綻したJALを利用しようなどという向きはそうそういるものではありません。強いて考えられるとすれば、以下の3類型くらいのものでしょう。

  1. JALグループ各社の社員及びその家族
  2. JALグループ以外の就航がない空港の利用者
  3. JALグループ以外で上級会員の資格を持たない多頻度顧客

 1番については、正に風前の灯です。今後、社員や家族の福利厚生は大幅に切り詰められる事になるでしょうから、他社よりも有利な運賃でJALグループ便に搭乗できる機会は少なくなります。ましてや、雇用が非正規化なんてしてしまおう日には、旅行そのものが夢のまた夢という事になります。ライアンエアーよろしく「東京→札幌が100円ポッキリ」なんて販売をできるはずもないのですから、ともすれば競合交通機関と五分五分の状態にまでなってしまう虞があります。
 2番についても、またいつまで続くとも知れない話です。というのも、今後のJALグループでは、「会社更生法による更生手続き中」という立場を利用して、従来はシングルトラックであるが故に撤退を躊躇っていた路線からも容赦なく撤退する可能性が極めて高いからです。富士山静岡空港のように穴埋めで他社が入ってくれるようならまだしも、空港就航便そのものがなくなってしまえば、空港そのものが廃港に追い込まれる可能性すらあります。
 となれば、現在のJALが最も大事にすべきは、やはり3番の内弁慶JGCであると言えます。既に、他社上級会員へ移行できる体力や財力のある上級会員は、少しずつJALに見切りを付け始めています。しかし、10万人からの会員数を持つJALグローバルクラブ会員の中には、転勤・転職や定年退職等で既に多頻度顧客ではなくなっている会員も少なからず存在します。こうした会員の顧客忠誠心を擽り、「こんな難局だからこそ、自分が乗ってJALを救わなければ」というキャンペーンを張る事こそ、JAL再生の第一歩であると言えましょう。
 また、デルタ航空にしてみれば、こうしたリタイア組を中心とする平JGCを味方に付けるアナウンスをする事が、実はJAL引き抜きの最適解でもあったりします。現状、暦年20,000FOP未満の平JGConeworldルビーにしかなりませんが、ANAスーパーフライヤーズクラブと同様、「JGC会員には終身スカイチームエリート・プラスを保障」という話があれば、JGC会員は一気にスカイチームへと靡きます。デルタ航空にはJGCの商習慣を理解するのは困難かも知れませんが、JGC会員にそっぽを向かれた後のJALなんて唯のカスでしかありませんから、ここは是非JGC会員の保護に動いて欲しいものです。