五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

オワコン観光地の死ぬ死ぬ詐欺

 震災絡みで、もう1つだけニュースに触れておきます。

東日本大震災:自粛は2次災害 日光などの観光業者悲鳴

http://mainichi.jp/select/today/news/20110408k0000e040087000c.html

 二次災害も何も、余震も原発も落ち着いていないこの時期に、わざわざ被災地からそんなに離れていない栃木県北部に行こうだなどというのは、どんなに好意的に評価しても旅行ではなく冒険であり、酷な評価をするなら単なる自殺行為でしかありません。更に言うなら、元々日光や鬼怒川なんて観光地としては既に賞味期限切れなんですから、単に啼く閑古鳥の数が増えたというだけの事でしかありません。兵糧攻めの如くジワリジワリと死を待つよりは、震災恐慌で一思いにトドメを刺された方が、或いは地元にとっては幸せなのかも知れません。
 今回の震災による影響は、被災地だけではなく全国に及んでいます。

観光経済新聞社 2011年4月9日 旅館・ホテル

http://www.kankoukeizai-shinbun.co.jp/backnumber/11/04_09/ryokan_hotel.html

 それもそのはず、余震や原発計画停電といった「今、そこにある危機」だけでなく、ガソリン価格の高騰や震災を契機としたリストラなど、旅行を楽しむだけの余裕が物理的に奪われている状態です。勿論、そんな状態でも旅行したくなる向きはいるのでしょうが、物理的な余裕がないからこそ、その旅行先は吟味に吟味を重ねられます。そんな時、魅力に乏しい観光地が真っ先に候補地から外されるのは当然の事であり、そうした選択が積み重なった結果が、「震災不況」の正体なのです。
 日光や鬼怒川といった再生可能性に乏しい観光地が全国紙の記事になったのは、実に象徴的です。既に市場からオワコンと認定されている観光地が全国紙で窮状を訴えるのは、一種の死ぬ死ぬ詐欺であると言うべきです。恐らく、この記事を書かせた業界側としては、「アンチ自粛」輿論に乗じて少しでも集客できればという魂胆なのでしょうが、コンテンツ作りを懈怠した観光地に待っているのは、客離れという形での自然淘汰なのです。



 因みに、動きの速い業界団体は、既に集客のターゲットを振り替えて生き残りを図っています。

○観光地 修学旅行に活路 震災で変更 道内誘致PR

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/284369.html

 修学旅行は、団体旅行でありながら利益率が高く、旅行会社や観光業者にとってオイシい商売です。それだけに、通常のツアーよりも誘致に必死になるのは当然の話で、特に修学旅行のメッカと言われる日光が苦況に陥っている現在は、他の観光地にとってはまたとない修学旅行客横取りのチャンスなのです。最近の北海道は、国内観光客の落ち込みを外国人観光客でカバーしてきましたが、原発の影響でその外国人観光客が消えてしまったのですから、兎に角引っ張れる客は引っ張るしかありません。
 修学旅行に限らず、これからの日本における観光市場は、確実にそのパイが減少していきます。それはつまり、観光地同士で旅行客の奪い合いをする事になるという事であり、生存競争は熾烈になっていく一方です。そんな中で勝者となるのに必要なのが、死ぬ死ぬ詐欺ではなく地道なコンテンツ作りである事は、言うまでもありません。修学旅行の誘致に躍起となっている北海道の観光業界においては、是非学校だけでなく生徒にとっても「また来たくなる観光地」としての魅力作りに励んで欲しいものです。そして、それは修学旅行客だけでなく観光客全体にとっての共通の利益になるのです。