五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

「現代リスクの基礎知識」の言いっぱなしジャーマン

 最後に、林志行氏のコラムです。

○現代リスクの基礎知識
第108回 JAL内紛:社長退陣要求騒動と効率経営の限界

http://nikkeibp.jp/style/biz/management/risk/060221_jal/

 林氏のJALネタについては、以前も運航トラブル絡みで触れた事がありますが、今回はお家騒動に関する話です。しかし、如何せんリスクマネジメントの観点からしか話が出てこない為、空ヲタかつJGCの私にとってはどうにも煮え切らない終わり方です。まぁ、コンサルタントの仕事としては経営上のリスク要因を提示すれば終わりなのかも知れませんが、お家騒動をタイトルに持ってくる以上、そのリスク要因を除去するソリューションまで提示すべきでしょう。周知のリスク要因を誇張するだけなら、2ちゃんねらーでも出来ます。



 例えば、林氏はJAL社員の士気低下の兆候として、こんな事を書いています。

 気になるのは社内士気への影響である。不祥事後の改革方針の発表は、ややもすると株主や投資家、マスメディア、一般顧客(搭乗客)など外部への情報発信に重点が置かれるが、インターナルな、社員(含む、操縦士、客室乗務員など)への報告がおろそかになる傾向がある。10%の減給を3年にわたり社員が負うのであれば、士気のさらなる低下が危惧されるところである。
 また、そうした方針を掲げても、組合側の理解を得られないのであれば、さらなるリスクの拡散、イメージの低下を免れない。(既に合理化で客室乗務員などの負担が増し、疲労の色が濃いというのが、乗客としての筆者の印象でもある)

 リスクコンサルタントとして、客室乗務員の「疲労の色」に気付く事は重要でしょう。しかし、仮にもプロのコンサルタントであれば、その印象を起点として、実際に客室乗務員の負担がどれだけのものになり、そこにどのようなリスクが潜んでいるのかを洗い出すべきです。運航乗務員や客室乗務員の労働強化、或いはそれら乗務員が遭遇したトラブルといったものは、各労働組合の広報誌或いは乗務員向けの社内報を読めば幾らでも具体例を列挙できます。こうした情報は、東京・内幸町にある航空図書館で自由に閲覧できますから、「情報入手が困難」などというのはコンサルタントとしての職務放棄に他なりません。



 或いは、こんな記述についても、私は疑問に思ってしまいます。

 前述の企業改革方針が、整備士などのマンパワーの強化と教育体制の充実や新型航空機の導入など表面的で、一連の不祥事の抜本的な改革が期待できない内容となっている中で、予定調和の経営計画では、株主、顧客をはじめとするステークホルダーの支持を得られない。

 ここで出てくる企業改革方針の各項目は、表面ではなく基礎であり、決して軽視すべき事ではありません。簡単な事が基礎なのではなく、重要な事が基礎なのです。逆に言えば、こういう基礎的で重要な事すらまともに履行できていない事こそにJALの抱えるリスクが見えてくるのです。「抜本的な改革」にサプライズを期待しているのであれば、それは見当違いもいいところです。そうしたサプライズで「リスク要因は排除された」と思い込むようであれば、コンサルタントとしては二流以下ですね。



 林氏は、本稿をこう締め括っています。

 新しいトップを内部から出すのか、外部から呼ぶのか。株主、投資家、主務官庁、従業員(労働組合)が納得する強いリーダーシップを、新町社長が引き続き発揮できるのか。次の次を睨んだ経営戦略を描き、実践できる、そのプロセスこそ今のJALには必要である。

 だから、そのプロセスを考えるのがコンサルタントの仕事なんですってば。そして、そのマスタープランをどれだけブレークダウンして実践に移せるかという所で、経営者や従業員の力量が問われるのです。言うだけ言って何も提示しないのでは、糸山英太郎と程度は同じですね。



 ここからはおまけです(つ´∀`)つ

 読んでいて、これは政治家や役所に向けた作文であり、かなり狭い範囲の専門家と呼ばれる人が読んで理解できればよいというスタンスで書かれているのであろうことが推測される。一般ユーザーにはおおよそ理解できない専門用語や指標満載で、誰がどう「ご配慮」すれば良いのかが曖昧なところは、現在のJALの問題を象徴している。

 当たり前です。これはあくまでも「論文」なんですから、一般ユーザーが理解する事なんか前提としていません。まぁ、元地理屋の私から見ると、そんなに難しい専門用語や指標は含まれていないような気がするのですが、金成秀幸氏の事を少しでも知っているならば、「一般人には理解できない」などというピンボケな論評など出てくるはずもありません。少なくとも、林氏は「プロ」なんですから、JALの話を書こうとする以上、交通関係の研究論文には目を通しておくべきでしょう。当然、金成氏の名前もその文脈で目にする事になります。

 さらに、ANAスターアライアンスに加盟してネットワークを追及したのとは異なり、長い間単独路線を掲げてきたため、国際的なハブ空港の一番端に乗り入れ、乗客は多くの荷物を抱え、空港の端から端まで歩かされる。

 思い込みのジェットストリームアタックですね。

  1. JALは単独路線ではなく個別提携路線である。
  2. ターミナルの中心からの距離は、所属アライアンスではなく自国航空会社か否かで決まる。
    • 本当に冷遇されている航空会社なら、抑もターミナルビルのPBBなど使わせてもらえない。
  3. 国際線は手荷物持ち込み制限が厳しい為、多くの荷物を抱える事自体が発生し得ない。
    • 手荷物検査場を通過できても、搭乗口で手荷物を没収→貨物室送りになる。

 余りいい加減な事を書かない方がいいですよ。意外と空ヲタnikkeibp.jpを読んでいますからね。