五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

空港間リニアというナンセンス

 逃走中が終わった所で、久し振りに大石先生のブログからネタを拾ってきました。

○「成田―羽田リニア開通を」太田代表が公共事業前倒し訴え

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090102-OYT1T00291.htm

 この件について、大石先生はこんなコメントです。


義父の忙しさに鑑みると、こういう工事を請け負えるような事業体は、殺到する公共事業でアップアップしているんですよね。成田−羽田は新幹線で十分間に合うのに、それすら出来ないのに、何言ってんだか、という気もするけれど、これから予算をぶち込むのであれば、他の分野にすべきだと思う。

 2016年に間に合わせるという話であれば、未だに商用化されていない超電導リニアに頼るよりは、既に「枯れた技術」である新幹線方式を採用する方が、遥かにベターな選択肢です。しかし、抑も論として、東京オリンピックに空港間鉄道など不要なのであって、そんな所に「実現力」とやらを注ぎ込もうとする公明党は実にナンセンスなのです。

 成田空港と羽田空港とを軌道系交通機関で直結するメリットは、空港間移動が発生する乗り継ぎ利用の利便性向上です。現在、成田空港と羽田空港との間には東京空港交通(リムジンバス)が最大で1時間に5本運行されていますが、その所要時間は75分と中距離路線のフライトタイム並みであり、運賃も片道3,000円と決して安くありません。両空港間の移動は時間的にも金銭的にもコストが高く、それが地方在住者の海外渡航需要を減殺しているという指摘もあります。
 しかし、成田空港にしても羽田空港にしても、その旅客需要の多くは首都圏を出発地または目的地とするターミナル需要です。両空港の乗降客数に占める乗り継ぎ客数など、圧倒的な需要を誇る首都圏発着需要と比べれば誤差の範疇であり、凡そ「ナショナルプロジェクト」などとして救済すべきものではありません。両空港を15分以内で結ぶ事を考える前に、先ずは「世界一不便な空港」と言われて久しい成田空港から東京都心部まで30分以内で到達できるようにすべきでしょう。
 ましてや、空港間リニアを2016年東京オリンピック招致運動と絡めさせようなどというのは、方向違いもいい所です。万が一東京でオリンピックが開催されるとして、その時に急増するのは東京を中心とするオリンピック会場と国内外との移動需要です。招致委員会の公式サイトを見ても、精々サッカー会場として札幌ドームや長居陸上競技場が利用される程度で、それ以外の殆どの競技は東京都心部・臨海部に集約して実施されるのですから、オリンピック招致活動と空港間リニアとは何の関連性もありません。正に、大石先生が指摘する所の公共事業リソースの無駄遣いであり、招致活動を口実とした空港間リニアの建設など、決して認めるべきではありません。

 因みに、複数空港が存在する海外主要都市において、現時点で空港間を軌道系交通機関で直結しているのは唯一ソウルのみです。それ以外の都市において、空港間連絡バス以外で空港間乗り継ぎをしようとすると、以下の経路を辿る事になります。

 と、どの都市でも必ず乗り継ぎが発生し、高速鉄道による直結なんて事を目論んでいる都市は1つもありません。上海やソウルにおいても、軌道系交通機関の主眼は空港と都心部との直結であり、仁川国際空港金浦空港の鉄道はあくまでも先行開業に過ぎないのです。もし、東京において成田空港と羽田空港とを直結し、東京都心部を掠りもしないリニア線なんてものが開業した日には、またぞろ日本は世界中の笑いものになる事でしょう。
 空港関連で、現在日本がそのリソースの多くを割くべきは、軌道系交通機関による空港間移動の利便性向上ではなく、空港機能そのものの向上です。特に、ナリバンによって拡張が妨げられている成田空港の全面完成は、2016年オリンピックを招致しようとするなら、決して避けては通れない道です。曲がりなりにもオリンピックを招致しようとする都市の玄関口となる空港が4,000mオープンパラレル滑走路すら満足に備えられないというのであれば、そんな都市は最初からオリンピックを開催する資格がないというべきです。