五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

機内設備

 ベルトサインが消灯して巡航モードになった所で、冷静にスターフライヤーの機内設備を検証してみました。


【本革シート】

 ブロハラ読者の皆さんならご存知の通り、スターフライヤーの客席は全て本革張りとなっています。CRJ200に乗った事がない私にとって、航空機で*1本革シートに座るのは初めてなのですが、普段クラスJの布シートに慣れ親しんでいる私にとっては、スターフライヤーの本革シートはかなり硬い座り心地でした。電車の座席に例えて言うなら、普段小田急5000形のふかふかシートに乗り慣れている人が東急8500系の煎餅シートに座った時のような違和感を覚えてしまいます。応接室のソファのような座り心地を想像していた私にとっては些か裏切られた気分ですが、流石にあそこまでふかふかな座り心地だとシートベルトがうまく機能しませんから、硬めの座り心地にするのは仕方がないのかも知れません。
 まぁ、皮革製品は使いながら身体に馴染ませていくのがセオリーですから、今はカチコチになっているスターフライヤーの座席も、1年くらい使い込めば少しは座り心地が自然なものに……
 って、これJA02MCなの?!Σ( ̄□ ̄;)
 1年半も使い込まれてこの硬さという事であれば、将来的にも煎餅布団のような座り心地を味わえる事になりそうです。東急田園都市線と共に育った人にとっては一種のノスタルジアかも知れませんが、すっかり小田急尻になっている私にとっては、スターフライヤーの座り心地は永久に不快なままという事になりそうです。


【座面幅】

 航空機の座席の居住性について、私は以前このような指標を掲げています。

  1. 座面の左右幅
  2. リクライニング時の背もたれの角度
  3. 隣席との間隔
  4. ランバーサポート
  5. レッグレスト
  6. フットレスト
  7. 座席の前後間隔(シートピッチ)

 ピザデブの私にとっては、座面の左右幅は快適性を非常に大きく左右する要素です。それ故、全席エコノミークラスであるスターフライヤーにおいて、私は余り快適性を期待していませんでした。そんな私が、実際に着席してみた時の感想は……
 狭っ!Σ( ̄□ ̄;)
 見事なまでに1年半前の予想通りでした。座席に腰を下ろし、毛布の上からシートベルトを装着した途端、自分が座っているのがエコノミークラスであるという事を厭と言うほど実感させられました。やはり、ちょっとやそっとの小細工ではエコノミークラスの座り心地を誤魔化せないのです。
 特に悲惨なのは、B列・E列といった通路側でも窓側でもない中間の座席です。上体の逃げ場が両サイドとも塞がれてしまう為、標準以上の体格を持っている人であれば、かなりの圧迫感を受けてしまう事でしょう。東海道新幹線の普通席に使われている3人掛けシートは、中間に位置するB席の座面幅を両隣よりも3cmくらい広く確保しているのですが、試しに座ってみたところ、スターフライヤーではそのような配慮は一切なされていませんでした。このB列・E列に運悪く当たってしまった人は、「所詮エコノミークラスか……」とがっかりする事請け合いです。


【リクライニング角度】

 これも、座面幅と並んで私が重視している要素です。リクライニングボタンを押しながら背もたれを倒していくと、思ったよりも深い角度までリクライニングしてくれました。流石にレインボーセブンの旧スーパーシート並みとまでは行きませんが、少なくともクラスJと同程度には背もたれが倒れてくれる為、かなりの快適性を確保できています。こればかりは、シートピッチを広めに確保したスターフライヤーの面目躍如といった所でしょう。
 しかし、背もたれと同時にスライドする座面の動き方は、実に不自然です。リクライニング角度を深くしていくと、座面が前方にスライドすると同時に、座面前方が若干浮き上がってきます。その為、目一杯リクライニングさせてしまうと、腰部が座席から完全に浮き上がってしまう一方、大腿部の一部分に過重な負荷が掛かってしまうのです。腰部で身体をきちんと支えられないという事は、乱気流遭遇時などにシートベルトで骨盤を痛めてしまう危険性があるという事です。1年半前に危惧した通り、快適どころか危険なシートが出来上がってしまったのは、実に遺憾です。
 なお、類似の機構を一足早く取り入れたJALのクラスJの場合、リクライニング時の座面は、単に前方にスライドするのではなく、腰部を支える座面後方が大きく沈み込みます。導入当初は、スーパーシートに慣れ親しんだ旅客から「座り心地が不自然だ」と指摘されたものですが、座席全体を大きく動かしてリクライニングさせる機構は、腰部にも大腿部にも(勿論背部にも)過重な負荷が発生せず、東京羽田=沖縄那覇のような比較的長距離の路線でも快適に過ごす事が出来ます。やはり、人間工学は伊達じゃないという事なんでしょうね。


【テーブル】

 羽田=北九州線の就航以前から「全席にPC用電源コンセントを配置」だの「無線LANインターネット接続対応予定」だのと訴えていたスターフライヤーは、少なからずビジネス客が機内でノートPCを利用する事を想定しています。となれば、各座席のテーブルも、当然ノートPCの利用に耐え得るものでなくてはなりません。VAIO type Gを購入して以来、すっかり旅行時にノートPCを持ち歩くのが習慣になってしまった私は、早速テーブルを引っ張り出して、その使い心地を試してみると……
 ノートPCがテーブルからはみ出ました⊂⌒~⊃。Д。)⊃
 私が使っているVGN-G1は、ノートPCの中でもかなり小型の部類に属すのですが、そのVGN-G1でさえテーブルに収まりきらないという事は、市販されている大抵のノートPCはスターフライヤーの座席テーブルからはみ出てしまうという事です。しかし、往年のlibrettoVAIO C1シリーズのようなビデオテープサイズのPCだと、テーブル内に収まる代わりに、パームレスト相当部分が宙に浮いてしまう形となり、キーボード入力が非常にやりづらくなってしまいます。
 もう1つ、このテーブルには致命的な欠陥があります。それは、コートフックに上着を引っ掛けていると、テーブルと干渉してしまう事です。特に、冬場においてはコートやジャケットなど嵩張る上着がコートフックに掛かる事になりますから、テーブルを展開する事すらままなりません。国内線での上着預かりサービスは、基本的にスーパーシート等でしか実施されませんから、これからこの欠陥が顕在化していく事になるのでしょう。
 スターフライヤーの座席テーブルが使い物にならない理由の大部分は、個人用テレビの設置にあります。インアームテーブルを採用可能なスーパーシートやクラスJとは異なり、あくまでもエコノミークラスであるスターフライヤーにおいては、どうしても座席テーブルを前席背面に収納せざるを得ません。一方で、個人用テレビもまた前席背面以外に設置する場所は存在しませんから、ここでテーブルと個人用テレビとの干渉が発生してしまいます。そして、この干渉を解決する手段として、テーブルの前後幅を縮小して前席背面に収納するという方法が採られたのです。その結果、ノートPCを利用するには実に心許ない不完全な座席テーブルが出来上がってしまったです。
 実は、収納スペース確保の為にテーブルの前後幅を縮小する事は、スターフライヤーと同じく個人用テレビを使用するJALANAの国際線においても行われています。しかし、これら大手航空会社の座席テーブルは折り畳み式になっていて、それを展開するとかなりの作業スペースを確保する事が出来ます。様々なサイズのノートPCに対応するのも目的の1つですが、やはり最大の理由は機内食のトレーが置けないと使い物にならないからなのでしょう。
 ただ、機内食そのものが存在しないスターフライヤーにおいても、同様の機構によりノートPC利用者の利便性を向上させる事は可能です。そして、将来の国際線進出を未だに諦めていないというのであれば、IATA標準に従い、スターフライヤーにおいても機内食を提供する場面が発生する可能性もあります。何れにしても、現状のままテーブルを放置するというのであれば、それは偏にスターフライヤーの怠慢であるとしか言いようがありません。


【電源コンセント】

 では、抑もの売り文句だった電源コンセントはどうなのかと思い、前席や自席の周囲を色々と探してみましたが、それらしきものが全然見当たりません。仕方なく、客室乗務員にコンセントの所在を尋ねてみたところ、実はこんな所に設置されていたのでした。

「お客様がお座りになられている座席の右側、ちょうど膝の裏あたりの所に緑色のランプが点灯していますので、そちらがコンセントとなります。」

 一見さんがこれを自力で見付けるのは、先ず不可能でしょう。
 気を取り直して、持参していたACアダプターをコンセントに差し込もうとしますが、着席状態では差し込み口を視認しづらく、なかなかうまく差し込めません。仕方なく、コンセントの正面にしゃがみ込んで、漸くACアダプターをコンセントに差し込む事に成功しました。今回は通路側だったからこそ、巡航中にこのような作業が出来ましたが、窓側や中間の座席であれば、とてもこんな作業は出来ません。何処となく、お座なりに電源コンセントを配置しただけという気がしてなりません。


ヘッドレスト

 スターフライヤーヘッドレストは、最近海外航空会社でも増えてきた可動式です。クラスJで見慣れた私には目新しくも何ともないのですが、取り敢えず私の体格に合わせてヘッドレストを上に持ち上げると……
 すとん。
 再び同じ位置まで持ち上げてみますが、ヘッドレストに後頭部を預けると、やはりデフォルト位置まで落ちてきてしまいます。下手にヘッドレスト左右を立てていようものなら、ずり落ちてきたヘッドレストの耳が肩胛骨のツボを直撃します。スライドレールの摩擦力が低いからなのかどうかは知りませんが、これではなかなか落ち着けません。正しい着座姿勢であれば軽く後頭部を支えるだけである自動車の運転席ヘッドレストとは異なり、航空機のヘッドレストは睡眠時の快適性を大きく左右する重要なパーツです。そのパーツの作り込みがこんなに甘いようでは、他のパーツの作り込みも推して知るべしといった所でしょう。



 こうしてスターフライヤーの設備を振り返ってみると、ある共通した問題点が見付かります。それは、利用者視点に立っての設備検証が全くなされていないという事です。取り敢えず設置だけはしてみたものの、それがどう使われるかという所には全然考えが及んでいません。それ故、実際にその設備を使用しようとすると、途端に様々な不備が顕在化してしまうのです。
 私は、以前から何度もスターフライヤーを「デザイナーズエアライン」と揶揄してきました。その心は、見てくれだけを意識して実際の使用シーンを考慮しないという事ですが、実際に搭乗してみて、改めてスターフライヤーが悪い意味でデザイナーズエアラインに過ぎないという事を実感させられました。スターフライヤーの機内設備は、「一味違うホスピタリティ」という名の非常識なオナニーに過ぎないのです。

*1:航空機に限定しなければ、マツダ885系で本革シートを利用した事があります。この時は、佐賀→博多で乗車したので、今回の羽田→関空と着席時間は近似しています。