五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

ブルートレイン復活への提言

 さて、基本的に私はブルートレインの全廃を主張するものですが、どうしても何等かの形でブルートレインを存続させるのであれば、以下の3通りのプランが考えられます。

  1. 格安路線に転向し、夜行高速バスや新規航空会社と真っ向から勝負する。
  2. ビジネス利用に特化し、楽天トラベルやじゃらんと事を構える。
  3. 高級路線を直走り、団塊世代の取り込みを図る。

 どれも車両面やサービス面でそれなりの投資が必要になりますが、JR本州三社の体力ならばやってやれない事はない程度の出資です。ブルートレインの本格的な復活を図るのであれば、ゼニの出し惜しみなどしないで、攻めの投資に踏み切るべきでしょう。
 という事で、以下は各案の詳細です。


1.格安路線に転向し、夜行高速バスや新規航空会社と真っ向から勝負する。

 最もランニングコストが安く済みそうなのが、このプランです。シートベルトの着用が不要という鉄道のメリットを最大限に生かし、真っ平らな床を用意すればいいのです。先行事例としては、JR北海道の快速ミッドナイトに設置されていたカーペットカーが参考になりますが、毛布や枕といったリネン類も一切省略し、これを自由席として発売してしまえば、詰め込みが利く分、あけぼののゴロンとシートサンライズノビノビ座席よりもユニットレベニューは高くなります。
 当然ながら、夜行高速バスや新規航空会社に真っ向勝負を挑む以上、列車種別は特急や急行ではなく快速にせざるを得なくなります。その為、青春18きっぷの利用期間には車内が乞食ヲタで溢れ返る事になりますが、このタイプのブルートレインであれば、通勤電車と同様、どんなに乗客が増えても輸送コストは殆ど変わりませんから、青春18きっぷ程度の運賃でも些かの収入増には繋がります。薄利多売で換骨奪胎のブルートレインを残す意義がどれほどあるのかは不明ですが、1つの選択肢として考えてみるのもいいかも知れません。


2.ビジネス利用に特化し、楽天トラベルやじゃらんと事を構える。

 現実路線としては、この辺りでしょう。既に、サンライズや北陸はかなりビジネス利用に特化していると言えますが、どうせ新しくブルートレインとして復活させるなら、もっと極端にビジネス客の需要を鷲掴みにすべきです。寝台を個室にするのは勿論、ベッド幅も最低90cm以上*1にして、廉価なビジネスホテルに匹敵する程度の睡眠環境を確保すべきでしょう。
 ビジネス客の需要を掴むには、これだけでは不十分です。「走るビジネスホテル」としては、最低でも以下のサービスは必要でしょう。

  1. 各個室に大型のデスクを設置し、A4サイズのノートパソコンを利用できるようにする。
  2. 各個室にAC電源のコンセントを設置し、携帯電話の充電やノートパソコンへの電源供給に利用できるようにする。
  3. 列車内に無線LANを導入し、持ち込んだノートパソコンでインターネットに無料接続できるようにする。
  4. 列車内にランドリーを設置し、ワイシャツや肌着類を洗濯できるようにする。

 駅構内や市内で調達が可能なものについては、敢えてブルートレインで同じサービスを提供する必要はありません。しかし、AC電源やインターネット接続環境、或いはランドリーサービスといったものは、駅のホームで購入する事は出来ず、どうしても車内で必要になるものです。こうした点での機能性を充実して、初めてブルートレインは凡百のビジネスホテルと競合し得る存在となるのです。
 流石に、ここまでの改造となると国鉄型車両をタネ車にするのは無理があり、車両を新造する必要が出てきてしまいます。ビジネスに便利な時間帯に到着する事を考えれば、最低でも285系と同程度の走行性能が必要となり、客車列車ではなく電車列車という事になってしまいます。であれば、現在既に運用実績がある285系を改良し、N285系とでもして量産すればいいでしょう。尤も、これはこれで原資が大いに必要となってしまうのですが。


3.高級路線を直走り、団塊世代の取り込みを図る。

 どうせ初期投資を厭わないのであれば、一気に高級路線に振り切ってしまうというのも一つの手です。海外の客船クルーズ旅行が団塊世代に売れている現状を踏まえれば、国内においてもブルートレインの高級化で団塊世代を取り込む事は不可能ではありません。懐古的鉄ヲタにとっても、ブルートレインが「走る雑魚寝部屋」や「走るビジネスホテル」となるよりは、超豪華列車として君臨してくれた方が、何かと嬉しいでしょう。
 基本的には、E26系と同等の客車を新造すれば問題ありません。しかし、日本を代表する超豪華列車とする為には、とことん高級路線に振り切るべきです。その為には、以下のようなサービス(或いは制約事項)を設けてしまうべきでしょう。

  1. 2名1室での利用を原則とし、全ての個室にバス・トイレを設置する。
  2. 食堂車での夕食・朝食は寝台料金とセットとし、夕食時にはドレスコードを設定する。
  3. ロビーカー内にコンシェルジュデスクを設置し、乗客の要望に臨機応変に応えられるようにする。

 バス・トイレについては、高級志向の客室であれば当然の設備です。それも、シャワーオンリーではなく、バスタブ付きで車窓の景色を眺めながらゆったりと入力できるようにすべきでしょう。トイレについても、温水洗浄式便座にすべきである事は、言うまでもありません。
 また、食事については、夕朝食とも寝台料金に含めてしまって良いでしょう。わざわざ車内で現金精算するのは野暮ですし、別途食事のみを予約する手間も省けます。但し、ドリンクについてのみはどうしても車内精算が必要になってしまう事でしょうが、これについてもクレジットカードの利用を可能にすべきである事は言うまでもありません。
 更に、高級志向を徹底するのであれば、コンシェルジュデスクの設置は欠かせない事でしょう。私は、ホテルのランクを見る一つの指標として、コンシェルジュの存在をチェックしていますが、最近の日本においては、曲がりなりにも「高級」を自称しているホテルにおいて、コンシェルジュの存在しないものは殆ど存在しません。サービスに対して特に対価を徴収するものでもなく、かといって配置・活動に係るコストが決して安くはないコンシェルジュは、安価なホテルにおいてはなかなか設置できません。しかし、宿泊客にとってはこれほど便利な存在もなく、ホテルの付加価値を大いに高める要素となります。だからこそ、高級志向を模索するブルートレインにおいては、コンシェルジュの存在は必要不可欠なのです。



 以上、3通りのシナリオを設けてみましたが、どれもこれもコストばかり掛かってどれだけのリターンが望めるか知れたものではありません。やはり、キッパリとブルートレイン安楽死させてやるのが最も確実かつ手っ取り早い解決策である事に変わりはなさそうです。

*1:現在、日本国内における一般的なビジネスホテルでは、シングルルームにもセミダブルベッド(ベッド幅120cm以上)を設置しているケースが殆どですから、90cmでもまだまだ不足しているのですが。