P2Pと音楽配信サービスとを比較するに当たって、先ず気を付けるべきは、双方のユーザー層は必ずしも一致しないという事です。P2Pユーザーは、ダウンロードした音楽ファイルをPCでもデジタルオーディオプレーヤー(以下「DAP」と表記)でも聴きますが、音楽配信ユーザーは、その殆どがダウンロードした音楽ファイルをDAPで聴きます。「音楽配信サービス=DAP用」というのはかなり一般的な認識らしく、日経BPのアンケート調査では、音楽配信サービスを利用した事がない理由の第1位は「DAPを持っていないから」というものでした。
○アンケート:4人に1人が音楽配信サービスをすでに利用
http://nikkeibp.jp/style/biz/enquete/050825quick_music/
つまり、現状推移で行くなら、DAPの普及なしにP2Pの駆逐はあり得ないという事です。逆に言えば、DAP普及率の上げ止まりが、そのまま音楽配信サービス拡大の限界でもあるという事です。固定式のミニコンポやマイクロコンポ*1で音楽配信サービスを受けるビジネスモデルはなかなか一般化しませんでしたし、ダウンロードでPCを介在させようものなら、音楽配信サービスに辿り着く前にP2Pへと流れてしまいます。
P2Pユーザーを音楽配信サービスへと誘導するには、PCを介在させずとも、固定式のミニコンポやマイクロコンポから直接音楽配信サービスに接続し、簡単に楽曲をオーダー出来るようにする仕組みが必要でしょう。勿論、その為には端末側のブロードバンド対応が必須ですし、大手レーベルも本格的な音楽配信サービスへのチャンネルシフトが求められる事でしょう。果たして、体質の古い大手レーベルが何処まで音楽配信サービスに突っ込めるか、私はかなり疑問に思いますけどね。
因みに、DAPユーザーを母体としたアンケート調査によると、音楽配信サービスの利用者は20.5%なんだそうです。
○HDD/メモリー型携帯プレーヤー利用者の2割がオンラインで楽曲購入
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/comp/397040
残りの79.5%のDAPユーザーは、CDをリッピングするなりP2Pでダウンロードするなりして、自分でMP3ファイルを入手しているという事でしょう。こんな所にも、P2Pユーザーのマルチデバイスぶりが見えてくるのではないでしょうか。