五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

丸紅が国内でエンブラエル機を売り込み

 という事で、ここからはいつものニュースです。

○丸紅、国内の旅客機販売に再参入 ロッキード事件以来

http://symy.jp/?_p_ウェブ魚拓+ウェブ精米)

 記事の内容からするに、丸紅が売り込もうとしているのはエンブラエル170シリーズなのでしょうが、果たしてどれだけの売り上げが見込めるか、些かの疑問があります。というのも、70席クラスの航空機需要は既にDHC-8-Q400が掌握済みで、伊丹=鹿児島や伊丹=大館能代といった比較的長距離の路線でも活躍を始めているからです。また、JALANAともにB737NGを大量オーダー済みで、羽田発着分についてはエンブラエル170シリーズとの棲み分けが困難な状態です。
 果たして、丸紅が何処まで実績を積み上げられるのかは不明ですが、くれぐれもロッキード事件ならぬエンブラエル事件だけは起こしてくれるなって所でしょうか。まぁ、一大汚職事件に発展して公明党もろとも国土交通省が吹っ飛んでくれれば、「日本の健全な航空行政」という観点からは結果オーライなのかも知れませんけどね。個人的には、今度こそ田中真紀子の政治生命を抹殺してくれと願う次第なんですが、残念ながら明後日の方向です。



 ところで、上記の記事を見るに、丸紅は航空業界の動向について2つほど読み間違えを起こしているようです。その2つは、以下の段落に集約されています。

 丸紅が手掛けるのは席数が70〜110の中・小型旅客機。新滑走路が整備されると、東京〜福岡、東京〜札幌など「ドル箱路線」に大型機を集中させ、地方空港間を結ぶ路線や赤字路線を中・小型機に切り替える動きが広がると判断した。エンブラエル社アジア・太平洋地域代表のブルース・ペドル氏は「新規需要の半分はとりたい」と話す。

 何処がどう読み違えているのかというと、以下の通りです。

  1. 羽田空港に100席クラスの機材が就航できる保証はない。
  2. ドル箱路線は中型機や小型機での運航に切り替わる。

 現在、伊豆諸島路線のDHC-8-Q300を除けば、羽田空港に就航している最も小さな機材はANKB737-54K(126席)です。これとJALのMD-87(134席)とが、現在の羽田空港における実質的な最低ラインですから、これより小さい機材に国土交通省が発着枠を交付するかどうか、現時点ではハッキリしていません。羽田線の新規就航や増便は、富山県を除く全国の自治体から要請がひっきりなしに続いている状態ですから、発着枠の最大活用という意味でも、「エンブラエル190でしか採算に乗らない路線よりは、B737NGでも十分採算に乗る路線に」という方針にそれなりの正当性はあるでしょう。あの能登空港ですら搭乗率博打でB737-500を採算ラインに乗せたのですから、これからの新規路線もB737-700が最低ラインと見なされる可能性は大です。
 また、福岡線や札幌線などの幹線は、羽田発着枠さえ余裕があれば、いつでも機材をダウンサイジングする準備が出来ています。実際、羽田発着枠の拡大に伴って、ANAの福岡線は大幅な機材縮小及び増便が図られています。札幌線や大阪線においても、伊丹空港の4発機規制などと相俟って、その機材は縮小の一途を辿っています。これらの幹線においては、如何に他社よりも多くの搭乗機会を提供できるかが勝負の分かれ目ですから、旅客の集中する時間帯にB777が就航する他は、B767/B787クラスが主力となり、場合によってはB737NGにも出番が来る事でしょう。この事は、日本航空の金成秀幸氏も指摘する所です。

JAL企業情報 - 羽田国内線ネットワークの本来的な絵姿(2001年10月)

http://www.jal.com/ja/corporate/claim/key06/

 こうなると、B737NGを活用できないようなルーラル線においては、更なる機材縮小よりも撤退という選択肢の方が現実味を帯びてきます。何となれば、地方路線を減便しても、その発着枠や機材は幹線で十分に活用可能なのですから、わざわざエンブラエルを導入してまで地方路線を維持してやる必要性も必然性もありません。少なくとも、特定枠に属さない路線については、いよいよ廃止を見込んだ補助金合戦がデッドヒートの様相を呈してくる事でしょう。
 強いて丸紅に成功のチャンスがあるとすれば、以前に触れたJALの新小型機導入なのですが、ここにおいては丸紅の最大かつ致命的なライバルが存在します。それは、国産ジェット旅客機「MJ」です。エンブラエル170シリーズは、このMJシリーズと見事なまでにバッティングしますから、経済産業省が国内航空会社にMJの導入を推進しようとなった際、真っ先にエンブラエル機が駆逐されるであろう事は、以前にも触れた通りです。果たして、丸紅が何処までMJの脅威を感じているのか、私は甚だ疑問でなりません。