五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

ANAがA380を導入へ

 航空業界でも、大きな動きです。

全日空、最大10機導入=エアバスの超大型機−欧米線を全面切り替えへ

全日空 エアバスA380購入へ ボーイングの牙城崩すか

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080704/biz0807041942012-n1.htm

 元々、ANAは中期経営計画で「超大型機」という記述しかしていませんでしたから、これがB747-8に転んでもA380に転んでもおかしな話ではありませんでした。とはいえ、私はてっきり「導入するとしてもB747-8」と思っていましたから、若干ビックリしてはいます。まぁ、B747-881をこっそり準備していたであろうボーイング社内では上を下への大騒ぎの真っ最中でしょうけどね。



 とまれ、ANAA380を導入するというのであれば、それは以下の2つの根拠に基づきます。

  1. 成田にしても羽田にしても、ANAが望むほどの発着枠拡大は望めない。
  2. 羽田再拡張後の国際線でA380を運用する目処が付いた。

 上記の何れもが満たされないのであれば、従来予想通りB777-381ERB787-881で長距離国際線を捌いていた事でしょう。しかし、暫定滑走路の北側延伸でも成田発着枠が思ったよりも増えず、羽田再拡張後も長距離国際線の発着が限定されたものになるという絵図が次第に明らかになってきましたから、ANAの思惑通りの国際線展開は出来ない事になります。更に、頼みの綱のB787まで納期が大幅に遅延するというのですから、ANAの国際線戦略は根本から見直しを迫られてしまいます。そんな状況下において、恐らく有利な条件を提示してきたであろうエアバスの存在は、ANAにとって渡りに船だったのでしょう。
 2012年の導入は取り敢えず5機との事で、これはANA国際線の稼ぎ頭であるニューヨーク線・フランクフルト線に就航する事でしょう。爾後、ロンドン線・シカゴ線・パリ線と入って、これで10機がフル稼働になります。一方その頃、JALB777-346ERで頑張らざるを得ない状況ですから、これでJALの長距離国際線は窮地に立たされます。まぁ、今のJALが頑張るべきは、上客の死守よりも経営の死守ですからね。それこそ、糸山英太郎センセイが「JALA380を導入して業績を確保しろ」なんて言わない限り……って、言わないか(ノ∀`)



 因みに、今回のA380導入は、ANAによる2つの揺さぶりと読み解く事も出来ます。1つはボーイングに対する揺さぶり、もう1つは国に対する揺さぶりです。
 ボーイングに対する揺さぶりについては、敢えて解説するまでもないでしょう。ANAA380を導入するという事は、即ちANAB747-8を導入する可能性が99.9999%消滅したという事であり、今後更にA380の納期遅れが拡大するような事がない限り、ボーイングは日本市場における大型機需要の半分を逸失する事になります。更に、B787の納期遅れが拡大するような事があれば、ANAがオプション発注している50機のB787も、根刮ぎA350XWBに引っ繰り返されかねません。ANA自身が現在もA320を運用している事から分かるとおり、ANAにとってボーイングは絶対の存在ではありません。今後のボーイング次第では、オセロの如く日本市場での勢力図が引っ繰り返ってしまうかも知れないのです。
 国に対する揺さぶりは、米国志向である国土交通省経済産業省に対するプレッシャーです。次期中型機の選定において、JALANAB787へと靡いたのは、少なからず国の意向が含まれています。そんなANAA380の導入を表明するという事は、「エアバスよりもボーイングを重視する」国への反旗であると同時に、「もう発着枠拡大には期待しない」という国への最後通牒でもあります。果たして、国がどれだけこのメッセージを真摯に受け止められるか、それが今後の航空業界における日本の地位を決めていく事でしょう。
 何れにしても、これでスターフライヤーの「エアバス導入事業者」としての存在感は一気に軽くなる事でしょう。それはつまり、ANAにとっても国にとってもスターフライヤーA320がカードになる事はなくなるという事であり、「ANAA380を導入した」という事実の前では、スターフライヤーなどあってもなくてもどうでもいい会社という事になるのです。相変わらず経営戦略が迷走しっぱなしのスターフライヤーですが、そろそろ自活の道を確立させるか、それが出来ないのであればとっとと事業譲渡して会社を畳むべきでしょう。