休日なので、もう1本だけ書いておきます(つ´∀`)つ
○「ばかな路線」と橋下府知事 大阪−成田便廃止要請へ
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008110401000883.html
まぁ、2ちゃんねるにおける輿論は「バカなのは橋下徹だろ」でほぼ一致を見ているのですが、何がどうバカなのか、ちょっとだけ検証してみましょう。そんなに難しくはありませんから、電卓さえ手許にあれば誰でも解る話です。文章の形にして書くのが面倒臭いので、以下箇条書きで。
- 橋下徹大阪府知事曰く、成田=伊丹線の年間利用者数は約35万人。
- という事は、1日当たりの利用者数は約960人。
- これは往復での数字なので、片道に直すと約480人。
- 欧米で半数ずつに分けると、1日当たり240人ずつ。
- 一方、国際線で運航されるB777-200ERの標準的な定員は300名。
- 主要路線はデイリー運航が常識なので、240人しか乗客がいないと搭乗率は80%。
- 欧米それぞれで複数のデスティネーションが存在する以上、実態はこの半分以下。
- 1便当たり50人程度では、とても国際線など成立し得ない。
という事で、欧米その他全てのデスティネーションを引っくるめてもたかだか1日500人にも満たない旅客の為にわざわざ成田まで1日2往復も飛ばしてくれているJALやANAは、感謝こそされても決してバカと罵られる謂われはありません。ましてや、当該路線はファーストクラスやビジネスクラスの旅客ばかりでなく、これっぽっちもユニットレベニューの足しにならないエコノミークラスの旅客も利用できるんですし、ツアーによっては国際線乗り継ぎ運賃どころか追加料金なしで成田=伊丹線に乗れる事すらあるんですから、羽田まで移動して前泊が必要なんていう他地方の旅客にしてみれば、羨ましい事この上ないでしょう。
因みに、2007年度に国際線で関空を利用した旅客は、出発・到着を合わせて1100万人もいます。
○関西国際空港株式会社 | 数字で見る関空
http://www.kiac.co.jp/data/index.html
単純計算でも、成田=伊丹線の旅客数の31倍であり、たかだか4往復の成田=伊丹線を廃止したところで、関空発着便への影響などたかが知れています。勿論、JALやANAが関空発着の欧米線を増便する事などあるはずもなく、成田線廃止で関西在住のJAL/ANA利用者が泣きを見るだけに終わるというのが関の山です。
ところで、この件について憑かれた大学隠棲氏がこんな事を書いています。
このテーマ、私の卒業論文そのまんまだったりします(ノ∀`)
東京の人は海外旅行は成田発、というのは当たり前で他はどうなのか
東雲氏に言わせると、こういう場合はご当地の旅行代理店に足を運んで
その県発の海外旅行プランを見てみるといいのだという
元から関空発は便利じゃなくて海外旅行自体が落ち込む、ということになるかと
結論から言うと、西日本では現時点で既に関空優勢です。羽田=成田の乗り継ぎは当然ながら敬遠されていますが、かといってライトユーザーならぬライトトラベラーでは海外の見知らぬ空港でトランジット出来る余裕もない訳で、そうすると「東京よりは近く便数もそこそこ多い」という理由で関空が選ばれる事になります。国際線が壊滅状態なのはJAL・ANAだけですが、一般的なパックツアーでJALやANAが普通に選択される事は少なく*1、海外航空会社を利用してもいいという事であれば、北米線以外はかなり選択の自由度が高かったりします。更には、JR西日本エリア内であれば、新幹線や特急の乗り継ぎにより、比較的楽に関空に行ける*2という事もあり、関空発着は一種のデファクトスタンダードですらあります。私の知る限りだと、松山や大分といった四国・九州地方発着のツアーにおいても、成田発着よりは関空発着の方が多い感じです。
因みに、出入国空港の選択にあたっては、便の有無だけではなく、旅行代理店の意向も大きく働くという事を忘れてはなりません。一番分かり易いのは富山市における事例で、
- JR富山駅構内のTiS富山
- サンダーバード&はるかの乗り継ぎを前提とした関空発着ツアーを中心に販売
- 電鉄富山駅ビルのANAツアーショップ
- 羽田=成田乗り継ぎを前提とする成田発着ツアー(ANA利用)を中心に販売
と、アクセス/イグレスで一稼ぎしたい旅行代理店の思惑が丸見えになっています。卒論の取材で担当者に聞いてみた際にも、やはりアクセス/イグレスによる収入というのを少なからず意識しているとの事で、ツアー本体だけではなく関空前泊プランなどの周辺商品と合わせての売り上げを目指しているそうです。首都圏だと、精々成田前泊くらいしか話題にならない上、その需要もたかが知れていますから、首都圏在住者にはなかなか理解できない話になるんでしょうね。