五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

羽田空港国際化私案

 さて、最近喧しい羽田空港の国際化議論ですが、最近になってこんな話も出てきました。

○羽田国際線、1日70〜80便も=2倍に拡大が可能−国交省

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200810/2008103001178

 私自身は、以前にも書いた通り、成田空港がアクセスも含めて全面完成を迎えるまでは、羽田空港の全面的な国際化には非常に懐疑的な立場を抱いています。しかし、どうしても内外からの羽田再国際化ムーブメントに抗いきれないのであれば、限定的な形で再国際化すればいいと思っています。その限定方法は、通常見られるようなベリメーター規制ではなく、座席販売数に占めるエコノミークラスの比率で規制するのです。



 羽田空港を国際線で運用する際、最もネックになるのはその滑走路の短さです。B滑走路やD滑走路は2,500m、A滑走路やC滑走路でも3,000mしかないのですから、これではフルペイロードで欧米まで飛行する事が出来ません。長距離路線においては、航空貨物のベリー輸送もユニットレベニューを嵩上げする為に必要不可欠な要素ですから、航空貨物の搭載制限が掛かる羽田空港では、やはり本格的に欧米線に供用する事は難しいのです。
 であれば、この制約を逆手に取り、旅客定員数を絞りに絞って、1人当たりの占有空間を大きくすればいいのです。具体的には、ファーストクラスやビジネスクラスの座席定員比率を60%以上に設定すると共に、機材についてもB787B777-200ERといった中型機を中心とし、高イールド需要を主に扱う事とするのです。これにより、1便当たりのユニットレベニューは成田発着便並みを維持しながら、運送コストは大型機を運航する成田発着便よりも格段に安くなり、旅客にとっても人口集中地からのアクセスが良くなるという、実に合理的な解決策でもあります。
 更に言うなら、羽田発着便のユニットレベニューが上がるのであれば、現在世界一高いと言われている成田空港の着陸料を更に上回る着陸料の設定も可能です。勿論、IATAなどからは大ブーイングを受ける事でしょうが、昼間時間帯の羽田発着が可能だという事であれば、成田空港より高い運賃を提示してもなお羽田国際線枠の買い取りが多く発生する事でしょう。一方で、現在羽田空港に就航している新規航空会社は、海外の例に倣い、成田空港への全面的な移転を迫られる事になるでしょう。より高い着陸料負担に応えられる航空会社が都心部の便利な空港を利用できるというのは、自由競争における当然のルールです。

 これらの施策により、羽田空港・成田空港の機能は、以下の通り分担される事になります。

  • 羽田空港
    • 国際線
      1. ファーストクラス・ビジネスクラスを主体とした中型機による欧米線
      2. 中型機・小型機による北京・香港程度までの近距離アジア線
      3. 深夜・早朝におけるハワイ・グアムなどのリゾート路線
      4. 深夜・早朝におけるチャーター便全般
    • 国内線
      1. 国内大手航空会社による高イールドの幹線・準幹線
  • 成田空港
    • 国際線
      1. エコノミークラスを主体とした大型機による欧米線
      2. 日本市場に新規参入するLCCによる路線全般
      3. フレーターによる貨物便全般
      4. 国内新規航空会社による近距離国際線
    • 国内線
      1. 国内新規航空会社による幹線・準幹線

 羽田空港の着陸料が大幅に高騰する事により、国内新規航空会社が全面的に羽田空港から駆逐されるのみではなく、国内大手航空会社の国内線についても、イールドの低い路線から順々に淘汰されていく事でしょう。大館能代線や能登線など、補助金漬けで何とか路線を維持しているような所は一堪りもありませんし、ビジネス路線でも伊丹線や岡山線など新幹線との消耗戦に陥っている所では勇気ある撤退を迫られる事になります。その結果、国内大手航空会社は国際線の収益強化を余儀なくされる事になりますから、国際競争力の強化という意味では却っていい結果を生むのかも知れません。
 一方で、成田空港の着陸料はというと、現状よりかなり割り引かれる事になるでしょう。というのも、今まで成田発着路線の高イールドを支えてきたビジネス需要が挙って羽田空港に移転してしまうのですから、成田発着枠の商品価値は大幅に下がってしまう事になるからです。とはいえ、現状でも成田空港への就航を希望する航空会社が世界で30社はくだらないという事を踏まえれば、実は成田空港の着陸料も微減に留まるという可能性すらあり得ます。こうなれば、羽田空港にも成田空港にも居場所がなくなってしまう国内新規航空会社が、体力のない所からバタバタと倒れていく事でしょう。その筆頭がスターフライヤーである事は、言うまでもありません。