ここからは、怒りのサンドバッグ4連発です。
- 作者: 三本和彦
- 出版社/メーカー: 立風書房
- 発売日: 1990/11
- メディア: 単行本
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今日、新橋駅オッサン口*1を客先に向けて歩いていた所、日刊ゲンダイのおねーちゃんが何か配っていました。号外の類かなぁと思って受け取ってみると、そこには何故かB747-446の写真と共に「マイレージ獲得大作戦」という見出しがデカデカと踊っていました。「J版★」という版名からして、これが広告企画である事は、本文を読まずともたちどころに理解できます。
2行目以降を読まないで紙面を裏返してみると、そこには「JAL冬のホットなキャンペーン」の全面広告がありました。
○JAL - 冬のホットなキャンペーン
http://www.jal.co.jp/fuyu-hot/
微妙に可愛くない宮里藍の写真を見れば、厭が応にも、キャンペーンの内容まで具に判ってしまいます。そりゃあ、伊達にJALホームページを毎日チェックしていませんからね。
この広告企画、JALが日刊ゲンダイに持ち掛けたのか、或いは日刊ゲンダイがJALに持ち掛けたのか、私にはよく判りません。しかし、日刊ゲンダイが広告料でJALに魂を売ったというのは紛れもない事実であり、今後日刊ゲンダイにおける一切のJAL批判は読むに値しないものとなりました。わざわざJ版なんかでっち上げてまで「日刊ゲンダイ」という看板で広告ビラを撒き散らしたんですから、最早日刊ゲンダイはJALを批判する資格を喪失したというべきです。常日頃「読売巨人軍に取材拒否されているからこそ、ジャイアンツの内情を具に書ける」と自負している日刊ゲンダイの事ですから、今後は日刊ゲンダイのJALおべんちゃらを心ゆくまで読む事が出来そうで何よりです。それが、日刊ゲンダイクオリティ。
さて、歩きながら本文を読むのも面倒臭いので、このビラはとっとと鞄にしまってしまいました。興味も関心もない企業の広告であれば、マクドナルドかローソン辺りでとっととごみ箱に直行させるのですが、やはり中身がJALとなると、日刊ゲンダイがどのようなおべんちゃらを書いているのか、隠れ日刊ゲンダイウォッチャーの私としては、非常に気になります。そこで、帰りの電車の中で、表面の広告記事を具に読んでみました。すると……
何じゃこりゃあ!!(ノ ゚Д゚)ノ ==== ┻━┻
剰りにもいい加減な記事の内容に、私は思わず
1.「1回のニューヨーク往復で26,948マイルも貯まる」
いきなりダウトです。
確かに、記事本文にもある通り、東京=ニューヨークの片道区間マイルは6,737マイルです。しかし、区間マイルが100%積算されるのは普通運賃やそれに相当する運賃*2だけであり、JAL悟空やAPEXなどは区間マイルの70%、パッケージツアーなどに適用される包括割引運賃だと区間マイルの50%しか貯まりません。これを、記事本文と同じく「年末年始を利用」した場合で考えた場合の運賃・料金及び獲得マイルは、凡そ以下の通りです。
- 運賃・料金(航空保険特別料金及び燃油特別付加運賃を含む・空港使用料別)
- 獲得マイル(冬のホットなキャンペーン以外のボーナスマイルを除く)
- 往復割引運賃:26,948マイル
- Web悟空28:18,864マイル
- パッケージツアー:13,476マイル
通常、観光客が国際線の普通運賃を購入する事など希ですから、大抵は正規割引運賃または包括割引運賃の利用でしょう。更に言うなら、この広告ビラが配布された時点で、Web悟空28の購入期限まであと1日しかなかったのですから、このビラを読んだ顧客が実際に使い得る運賃は包括割引運賃のみなのです。要するに、キャンペーンを鵜呑みにしてニューヨークへ行ったところで、海外旅行どころか国内線特典航空券の必要マイルにすら到達しないという事なのです。尤も、各種キャンペーンマイルを組み合わせれば、何とか国内線特典航空券の交換に必要な15,000マイルには到達する事でしょうが、それにしては26万円からの出費は剰りにも大きすぎるでしょう。これだけの予算があれば、年末年始に普通運賃で沖縄旅行に出掛けるのも不可能ではありません。
2.「自腹で2回行っては3回目は特典航空券を使ってタダ」
これも、ウソとまでは言いませんが、大きな誤解を招く表現です。少なくとも、一般のJMB会員であれば、同じ区間を2往復しただけで、当該区間の特典航空券を獲得できるマイルなど貯まるはずもないからです。今回の「冬のホットなキャンペーン」は包括割引運賃も対象ですが、通常この手のキャンペーンはエコノミークラス特別運賃や包括割引運賃を除外するものです。
例えば、一般のJMB会員が東京=ニューヨークをエコノミークラス特別運賃で2往復したとしましょう。この時、獲得マイルは
6,737 × 0.7 × 2 × 2 = 18,864(マイル)
で、日本=アジア1*6の必要マイルである20,000マイルには僅かに*7届きません。一応、各種キャンペーンマイルを加算すれば、何とか20,000マイルくらいにはなるでしょうが、「ニューヨークを2往復したら香港にタダで行ける」というのでは、「2回行ったら1回タダ」という記事本文とはかなり違った内容になってしまいます。しかも、エコノミークラス特別運賃ではなく包括割引運賃を利用した時であれば、「ニューヨークを2往復してもソウルにすら行けない」というオチが待っているのです。これは、新手の不当表示というべきものでしょう。
更に言うなら、「特典航空券=タダで旅行」という先入観は大間違いなのであり、実際に特典航空券で旅行しようとすると、様々な別途費用が発生するのです。例えば、
- 航空機の利用に係る費用
- 空港施設使用料
- 出入国税
- 航空保険特別料金
- 燃油特別付加運賃
- 航空機の利用以外に係る費用
- 現地宿泊費
- 現地交通費
- 各種観光施設入場料
- 食費
など、思い付きでリストアップしてもこれだけあります。特典航空券は、あくまでも旅行代金の内航空運賃のみがタダになるのであり、それを使うとなると結局は普通の旅行と同じくらい費用が掛かってしまうものです。本当に特典航空券の有難味を享受するのなら、欧米長距離路線でエグゼクティブクラス*8やファーストクラスに乗る事なのですが、それに必要なマイルを一般会員が3年間で貯める事など、凡そ不可能です。
3.「JALカードに入っていれば、食事やショッピングでもマイルが貯まる」
まぁ、これはこれで事実なのですが、こんなものはJALカードの副機能でしかありません。JALカードの本質は、搭乗する度にボーナスマイルが積算されるという事なのです。しかも、これといった上級会員の資格を持っていなくても、JALカード会員にさえなってしまえば区間マイルの10%、年会費を奮発してCLUB-A会員になれば区間マイルの25%も積算されます。
この10%や25%というボーナスマイルは、長距離国際線搭乗時はバカになりません。しかも、搭乗マイルではなく区間マイルを基準にボーナスマイルを積算するのですから、エコノミークラス特別運賃だろうが包括割引運賃だろうが、普通運賃利用時と同じボーナスマイルを獲得する事が出来るのです。例えば、東京=ニューヨークを包括割引運賃で往復した場合、JALカード会員にどれだけのマイルが積算されるのかというと、以下の通りです。
- 非会員(JMB会員):6,738マイル
- JALカード普通会員:8,086マイル
- JALカードCLUB-A会員:10,106マイル
非会員とCLUB-A会員とを比較すれば一目瞭然ですね。JALカードCLUB-A会員になってしまえば、非会員よりも3,000マイル以上余計にマイルを貯める事が出来るのです。JALカードの勧誘をするのであれば、100マイルや200マイルの世界に終始するショッピングマイルなどに言及するのではなく、このような長距離国際線でのボーナスマイルこそ前面に押し出すべきでしょう。
更に言うと、実はこの25%というボーナスマイル、JALグローバルクラブ(JGC)会員と同じ積算率なのです。年間初回搭乗ボーナスマイルこそ、JGCの5,000マイルに対してCLUB-A会員は2,000マイルと目減りしますが、それ以外のボーナスマイルにおいては、単なるCLUB-A会員でもJGCと同じマイルを獲得できてしまうのです。そして、これが一番重要なのですが、JALカードCLUB-Aは単なる一般カードに過ぎないので、18歳以上であれば誰でも持つ事が出来るのです。年会費が10,500円とかなり高いものになりますが、そこそこJALに乗る人であれば、その元を取る事は簡単でしょう。
4.「金額に換算するとアップグレードの方が得」
出ました、USO800。アップグレード条件の改悪を知っていてこんなフレーズを入れたのなら、はっきり言って詐欺の類ですね。
何がどう詐欺なのかというと、アップグレードの対象になる航空券です。現在、各種キャンペーンなどを考慮しなければ、エコノミークラスからエグゼクティブクラスにアップグレードできる運賃は以下の通りです。
- 普通運賃またはそれに相当する運賃
- JALエコノミーセイバー及びエコノミーWebセイバー
- 海外発券の航空券(以下の予約クラスのみ)
- Y
- B
- Q
- K
- S
要するに、一般客が使うであろうJAL悟空運賃や包括割引運賃は、どんなにマイルがあってもアップグレードは出来ないのです。日本国内で購入できる運賃だと、最安値であろうエコノミーWebセイバーですら、東京=ニューヨークの往復運賃は一番安い時期で198,600円(週央運賃)にもなります。これは、同時期のWeb悟空28から見れば3倍近い運賃ですし、パッケージツアーであれば宿泊を考えてもこの半額でお釣りが来ます。こんなに頑張っても50,000マイルも取られるんですから、それなら最初から80,000マイル貯めてエグゼクティブクラスの特典航空券を交換した方がお得というものです。これならば、原券の運賃クラスなんて気にする必要がありませんから、実に気楽なものです。
因みに、私・母・叔母のJGC本会員3名は、今まででそれぞれ30万マイル以上を特典交換していますが、その使い道は殆どが欧米路線のエグゼクティブクラス特典航空券です。私自身は特典航空券を譲渡するだけで、自分自身でエグゼクティブクラスを利用した事はないのですが、母や叔母曰く、「一度ビジネスクラスに乗ってしまうと、もうエコノミークラスには戻れない」のだそうです。既に、国内線においてはクラスJにどっぷりと浸かっている私ですが、国際線においては当面エコノミースリーパー*9で十分ですね。
以上、日刊ゲンダイの広告記事を鵜呑みにすると、JALの思う壷になるというお話でした。取り敢えず、「マイラー」を目指すんだったら、最低限JALカードCLUB-A会員になっておく事ですね。その上で、「マイラーの勝ち組」になりたいというのであれば、以下の何れかを実行するのみです。
- 200万円を軍資金に、東京=ニューヨークをJALビジネスセイバーで3往復。
- 50万円を軍資金に、東京=大阪を特便割引1で25往復。
JALカードCLUB-A会員が上記の何れかを達成すれば、旅行会社や航空会社の関係者でもない限り、JGCの入会資格を得ます。これで、JGCが現行制度のまま存続する限りは、JMBの勝ち組としてマイルの恩恵に与る事が出来るのです。
結局、何だかんだで、マイレージというものは多頻度顧客になればなるほど有利になる制度になっているのです。何処かのホリエモンではありませんが、マイルさえあれば、マイルは芋蔓式なのです。まぁ、マイレージの勝ち組というのは、得てして同時にマイレージ中毒患者でもあるんですけどね。私がそうですorz
*1:新橋駅日比谷口の別名です。何故「オッサン口」なのかは、実際に行ってみれば一目瞭然ですし、数々のニュース番組やバラエティ番組でも雰囲気は理解できるはずです。
*2:具体的には、往復割引運賃や配偶者割引運賃、小児割引運賃などです。また、JALエコノミーセイバー・プラス運賃は、エコノミークラス特別運賃に分類されますが、マイル積算率は100%です。
*3:普通運賃・往復(Y2)を適用。
*4:年末年始出発の平日発運賃を適用。
*5:ジャルパック ニューヨーク6日間/コースコード:JLNYC-JZ3516N
*7:1,000マイルを「僅かに」と言い切れるのは、私のようなマイル貴族だからこその事であって、JALカードすら持たない一般JMB会員には、この1,000マイルはかなり大きな壁です。
*9:東京発着の欧米ビジネス路線だと、ファーストクラスやエグゼクティブクラスばかりが埋まっていき、エコノミークラスがガラガラになる事があります。特に、1日2便運航される日のニューヨーク線005/006便やパリ線405/406便などは、もう1便の方に包括割引運賃客が詰め込まれるのか、エコノミークラスは4席に1名くらいの割になる事もあります。
こんな時は、ABC/DEFG/HJKといった1アブレストを専有し、肘掛けを全て跳ね上げてしまえば、簡易ベッドの出来上がりです。特に、DEFGを専有できた時であれば、かなり身長の高い人であっても、足を伸ばして眠る事が出来ます。ベッドの幅こそ狭いですが、フルフラットである分、エグゼクティブクラスよりも有利かも知れません。しかも、運賃は当然ながらエコノミークラス1人分なのですから、Web悟空28などの格安な運賃でも、運が良ければエコノミースリーパーに与る事が出来るのです。
因みに、ニューヨークヤンキースがJALチャーター便で来日した際、松井秀喜選手はエコノミースリーパーの存在を知ってか知らずか、エグゼクティブクラス2席専有よりもエコノミークラス5席専有を選んでいました。松井秀喜選手の身長は186cmですから、エコノミークラス4席分の座面幅である176cmでは若干足りませんが、横になって膝を折り曲げれば、何とか横たわる事は出来ますね。