五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

スターフライヤーの時刻・運賃が発表

 さて、九州旅行だの羽越本線脱線事故だのに現を抜かしている間に、世の中ではこんな事が起こっていました。

○新北九州〜羽田2万5800円、日航より2割安〜スターフライヤー発表

http://kyushu.yomiuri.co.jp/keizai/ke_05122304.htm

 日経や読売で記事になるという事は、当然ながらプレスリリースも発表されているという事です。そこで、スターフライヤーの公式サイトに飛んでみたら、きちんと12月22日付けで運賃や時刻が発表されていました。

スターフライヤー 時刻表・設定運賃

http://www.starflyer.jp/timetable/timetable.html

 取り敢えず、アンチ新北九州空港として、この中身を検証してみましょう。



 取り敢えず、運賃全般を見回しての第一印象は、思ったよりも強気の価格設定だなぁという事です。確か、11月5日付けの日本経済新聞において、スターフライヤーの堀高明社長が「特定便割引で19,000円台」とか発言していましたから、普通運賃が23,000円を超えるであろう事は予測が付いていましたが、まさかピーク期に27,800円も取ろうとは、全然想定していませんでした。確かに、これでもJALやANAの羽田=福岡よりは十分に安い水準ですが、FFPによる顧客の囲い込みが出来ない新規航空会社において、25,000円を超える普通運賃というのは、些か強気過ぎるのではないでしょうか。既に、スカイマークが羽田=福岡で16,500円という普通運賃を提示している為、通常期の25,800円というスターフライヤーの普通運賃は、なおの事高い印象を受けてしまいます。
 そういえば、堀高明社長は、読売新聞のインタビューにおいて、「普通運賃は片道2万円強に設定する」という事を発言していました。

○経済インタビュー スターフライヤー 堀高明社長

http://kyushu.yomiuri.co.jp/keizai/interview/nkeiin050914.htm

 しかし、世間一般に、25,800円は「2万円強」とは言わないでしょう。割引運賃の「2万円未満」はまあまあ納得できますが、全般的に「身近な航空会社である」とは言えないでしょうね。
 以下、各運賃について、ちょっとずつコメントを付けていきます。運賃名の後ろは、(通常期運賃 / ピーク期運賃)です。スターフライヤー公式サイトの表記と異なり、ここでは最初から羽田空港及び新北九州空港のPFC(旅客施設使用料)を加算して表記します。


1.大人普通運賃(26,000円 / 28,000円)

 上述の通りなので省略しますが、やはり高いです。前掲インタビューでは、「スカイマークの普通運賃に合わせた」という事なんだそうですが、そのスカイマークが大胆に普通運賃を下げてきた為に、割高な印象になってしまっているのではないでしょうか。スターフライヤーが何処まで普通運賃での販売を重要視しているのかは不明ですが、相当程度の普通運賃での販売を見込んでいるのであれば、せめてあと4,000円は安く設定すべきですね。

2.小児運賃(15,100円 / 16,100円)

 大人普通運賃と同様、割高なイメージではありますが、大人普通運賃からの割引率は妥当なところでしょう。個人的には、家族連れの利用を促す為にも、小児運賃は戦略的な価格設定を期待したいところなのですが、元がビジネス路線である羽田=新北九州では、余り小児旅客の需要はないのでしょうね。スターフライヤーの企業コンセプトからして、余り小児旅客はスターフライヤーに似付かわしくないような気もしますが。

3.身体障害者割引(18,000円 / 18,000円)

 小児運賃と同様の為、ここでは特にコメントすべき事はありません。但し、ピーク期運賃も通常期運賃と同額であるという事だけは、ある程度誉めてもよさそうです。

4.STAR1(16,000〜22,000円 / 18,000〜24,000円)

 個人顧客向けのボリュームゾーンとなりそうなのが、このSTAR1及び次項のSTAR7です。ピーク期運賃も設定している辺り、一応の良心は見えますけどね。但し、羽田=北九州に限って言えば、JALの特便割引1も通年設定なのですが。
 肝心の運賃ですが、思ったほど安くなく、羽田=福岡の深夜・早朝便と同程度かといったイメージです。これだけ運賃幅があるという事は、16,000円なんて運賃は余程不便な時間帯の便にしか設定されないという事でしょう。普通の個人客にとっては、STAR1の相場は21,000円〜24,000円前後と考えておいた方がよさげです。

5.STAR7(14,000〜19,000円 / 16,000〜21,000円)

 STAR1の7日前締め版です。手仕舞いが早い分、運賃設定も安くなっているという事でしょう。こちらも、STAR1と同様、ピーク期の設定があります。STAR1が羽田=北九州の特便割引1のコンペティターであるのなら、STAR7は羽田=福岡の特便割引7のコンペティターといったところでしょう。
 バーゲン運賃を除けば、この14,000円〜19,000円というのが、個人顧客が購入できる最も安い運賃という事になります。スカイマークの羽田=福岡の普通運賃とほぼ同水準になってしまったのは、スターフライヤーにとっては想定の範囲外だったでしょうね。取り敢えず、昼間便の価格競争力がスカイマーク以下になってしまいましたから、当初計画通り、安さではなく品質で勝負という事になりそうです。何処まで勝負できるんですかね。

6.就航記念運賃(10,000円 / 設定なし)

 あーあ、やっちゃいましたね。以前の記事で、私はスカイマーク「他の航空会社と同様、割引運賃という依存性薬物に冒されている」と評しましたが、どうやらスターフライヤーも前轍を踏む事になりそうです。「安さではなく、品質で勝負する」とするスターフライヤーの戦略は、就航前にして既に風前の灯です。
 結局、口では「やみくもな価格競争には追随しない」と言ってても、スターフライヤー自身がその「品質」に自身を持てていないんでしょうね。そうでなければ、敢えて自縄自縛となるような運賃設定などするはずもないからです。まぁ、スカイマーク「第二の創業」の泥縄にしては、このバーゲン運賃は些か高過ぎるような気もしますけどね。5,000円にしろとまでは言いませんが、せめて10,000円を優に割り込むくらいの運賃設定でよかったような気がします。但し、バーゲン運賃を安くすればするほど、一般消費者にとっては普段の運賃が割高に見えてしまうのですが。

7.4回回数券(23,000円 / 設定なし)

 JALやANAの回数券と同様の運賃ですね。多頻度顧客の友といった感じですが、わざわざ記名式やピーク期ブラックアウトまでJALやANAに合わせなくてもいいでしょうに。元の運賃がそれなりに高いんですから、せめて回数券くらいは通年設定にして欲しかったものです。

8.6回回数券(22,000円 / 設定なし)

 こちらは、JALやANAで過去に*1発売されていた無記名式回数券と同様ですね。JALやANAの6回回数券が廃止されてから久しいですが、ここへ来てスターフライヤーが無記名式回数券を復活させるとは、余り予想していませんでした。但し、6回回数券の設定を一番喜んでいるのは、多頻度ユーザーよりではなく金券ショップなんですけどね。この運賃の行く末は、恐らく「新橋の金券ショップで大量販売→販路大幅縮小・個人客追放」という事になるでしょう。あとは、スターフライヤーが何処まで金券ショップの跋扈を許すかですね。

9.株主優待割引(13,100円 / 14,100円)

 普通運賃も割引運賃も軒並み強気の価格設定である中、株主優待割引だけは掛け値無しに安いと言い切れる価格設定です。巷間、「スターフライヤーの座席は株主企業だけで半分が埋まる」なんて噂が流れていましたが、ここまで安い株主優待割引を見せ付けられては、流石の私もその噂を信じざるを得ません。取り敢えず、スターフライヤーの株主企業が東京=小倉の移動でスターフライヤー縛りを掛けてくる事はほぼ確実でしょう。
 しかし、どうして株式の公開もしていないのに株主優待割引を公表するのか、私には甚だ疑問でなりません。その内、一般株主も募集するというのであれば話は別ですが、当面は関門圏の法人株主以外はこの株主優待割引を利用できない事になります。13,100円という運賃が「高品質路線」であるスターフライヤーのイールドを満たすとは思えませんから、大多数の北九州市民や福岡県民にとっては、テメエの血税スターフライヤーの株主に食い潰される事に他ならないのです。
 更に言うなら、スターフライヤーの株主であるという事は、イニシャルコストの負担にこそ莫大な貢献をしているものの、ランニングコストの負担に関しては一切の貢献がないのです。つまり、一度就航してしまえば、スターフライヤーにとっては、株主など「株主優待割引でイールドを圧縮する重荷」でしかなくなるのです。まぁ、株主優待割引と就航記念割引とでイールドがガタガタになったら、その時はまたぞろ北九州市や福岡県に補助金をせびるんでしょうね。末吉興一も麻生渡も、決してスターフライヤー新北九州空港を失敗させられませんから、案外簡単に補助金は出る事でしょう。
 まぁ、アレです。株主優待ごっこがしたいんなら他所でやれって事ですよ。1株当たりどれだけの株主優待券を発行するのかが不明なので、本当に「ごっこ」なのかどうかも不明ですが。



 以上が、スターフライヤーの運賃一式です。しかし、時刻表の一番下に、こんな記述も添えられていました。

  • その他包括旅行運賃・団体運賃の設定も予定しております。
  • 就航後バーゲン型運賃については、随時設定予定です。

 あーあ、これじゃあ結局JAL・ANA・SKYと大差ないじゃん。一体、スターフライヤーは何処まで他社と横並びにしたがるんだか。取り敢えず、JTBや近ツリに足許を見られないよう、きちんと自社販売で座席を埋めましょうね。



2005-12-29 追記】
 あ、そうそう。肝心の時刻について何も言及していませんでしたね。ちょいと拝見。

  • SFJ71 HND 0605 → KKJ 0730
  • SFJ92 KKJ 2330 → HND 0055+1

 ……って、誰が乗るんだ、誰が。羽田空港の場合、駐車場も近隣ホテルも高く付きますから、滅多な事では深夜・早朝便なんか利用する人はいないでしょうね。ロードファクターが40%にでも達すれば御の字でしょうか。
 で、全般的に言うなら、早朝・深夜便を除けば、時刻設定のバランスはまあまあですね。問題は、これだけの提供座席数を高イールドで埋めきれるかどうかでして、株主企業以外のリーチをどれだけ確保できるかで、スターフライヤーの明暗が分かれるでしょうね。尤も、イールドが低けりゃ低いで、その時は羽田から別路線を飛ばすような気もしますが。案外、会社設立当初の目的だった神戸空港に就航するかも知れませんね。

*1:一応、現在でもJAL ONLINEやANA@deskのユーザー向けに同様のオンライン限定運賃が設定されていますが。