五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

普通列車グリーン席利用者に蔓延る勘違い

 これが、本当に探そうとしていたネタです(つ´∀`)つ

JR東日本:普通グリーン券に「落とし穴」

http://symy.jp/?rlnウェブ魚拓+ウェブ精米)

 別に、こんなものは落とし穴でも何でもありません。単に、利用者が等級制と座席指定制とを勘違いしているだけですね。座れなかったなどとクレームを付ける前に、時刻表の営業案内を一から読んで出直して来いって感じです。
 JR東日本も、こういうクレーマーを甘やかす必要などありません。「座れなかったから料金返せ」などと言われても、唯々諾々と「乗務員の証明があれば……」などと応じる事なく、「グリーン券は指定席券ではありません」と突っ返すべきでしょう。顧客志向である事と、顧客のルール違反を許容する事とは違うのです。



 とはいえ、これらの勘違いが蔓延る原因の少なからざる部分は、旧国鉄或いはJR自身にも存在します。以下の施策については、その是非はさておき、勘違いの原因であると考えて間違いありません。

  1. 等級制運賃から追加料金への移行
  2. 普通列車からのグリーン車の駆逐
  3. 普通車指定席のアコモ改善によるグリーン車への接近
  4. グリーン車Suicaシステムの導入

 一番の原因は、昔の「1等運賃」「2等運賃」という制度を廃止し、グリーン車の料金を「普通運賃+グリーン料金」とした事にあるでしょう。本来、グリーン料金というのはグリーン車という「等級」に対する料金だったのですが、普通運賃への追加料金としてグリーン料金を設定する事により、いつの間にか「座席」に対する料金であるかのような誤解が普及してしまいました。戦後日本において身分階級制度が崩壊し、西欧諸国のような「1等旅客」「2等旅客」という思想が成立し得なかった事が、その誤解に拍車を掛けてしまったのでしょう。
 そこへ来て、普通列車の短編成化でグリーン車が外される事が多くなり、都市圏輸送におけるグリーン車の存在感はいよいよ薄くなり、「特急列車でしかグリーン車を見掛けた事がない」という旅客が多くなってきました。特急列車のグリーン車はほぼ例外なく指定席ですから、ここに「グリーン車=指定席」という混同が蔓延する土壌が出来上がります。実際には、「普通席かグリーン席か」「自由席か指定席か」という2つの独立した属性なのですが、今では「グリーン車は座席指定」だと思い込んでいる人の方が多くなっている事でしょう。
 こうなると、座席間のヒエラルキーは、グリーン車指定席>普通車指定席>普通車自由席と直列になり、グリーン車自由席が宙ぶらりんになってしまいます。一方で、本来は座席指定以上の意味を持たないはずの普通車指定席に恰も「アッパークラス」であるかのような地位が付与されてしまい、JR各社がこれに応えるべく、続々と普通車指定席のアコモデーション改善に踏み切りました。この事自体、利用者にとっては単純にサービス改善でしかないのですが、ひかりレールスターの指定席や快速エアポートuシートは、その完成度の高さから、普通車指定席に対するアッパークラスとしての位置付けを決定的なものにしてしまいました。これでは、グリーン車は必然的に「着席保証+α」の役割を求められるようになります。
 この状況にトドメを差したのが、JR東日本におけるグリーン車Suicaシステムの導入です。

Suicaでの普通列車グリーン車のご利用について

http://www.jreast.co.jp/suica/etc/green/index.html

 この検札省略というシステム自体は、既に小田急や南海で実用化されています。しかし、JR東日本がこれら双方と異なるのは、グリーン車Suicaシステムが指定席ではなく自由席を対象としている事です。指定席の場合であれば、販売実績の有無は座席単位で管理できますから、検札省略の対象は既に販売済みの座席に乗客が着席しているか否かで判別可能です。ところが、自由席を対象とするグリーン車Suicaシステムの場合、当然ながら個々の座席に販売実績など立つはずもありませんし、乗務員がそれを知る事も出来ません。そこで、「グリーン車の乗客に各座席上のSuica端末にタッチさせる」という方法で、擬似的に販売実績を照会できるようにしたのですが、これでは恰も「グリーン券を購入すれば着席が保証される」と言っているかのようなものであり、JR東日本がそのミスリード咎められても仕方ないでしょう。



 取り敢えず、当面は「グリーン料金は座席指定料金ではありません」という広報を徹底し、乗客に大原則のルールを周知させる事が必要になるのでしょうが、JR東日本がここまでミスリードを促した以上、何等かの根本的対策が必要になるものと思われます。現時点で私が思い付くのは、以下の2つです。

  1. Suica車載端末を座席ではなくドア口に移設する
  2. 普通列車グリーン車を座席定員制にする

 手っ取り早い方法は、Suicaタッチを着席時ではなく乗車時にさせる事です。これならば、着席の可否に関わらず、「グリーン車に乗車した」という事実に対して課金が可能になりますから、現行制度に何等手を加える事なく、端末の移設のみで話が完了します。勿論、総ての乗客がタッチしたか否かをチェックする事が必須になるでしょうが、それはグリーンアテンダントにでもやらせておけばよいでしょう。それよりも、グリーン券購入区間からの乗り越しをどうチェックするかを考える方が重要です。
 或いは、現状を追認する形で、ライナー券のように列車定員を設けるという方法も存在します。この場合、グリーン券の購入時に区間だけでなく列車も指定する事が必要*1となり、「どの列車にも乗れる」という自由席ならではの気軽さが棄却されます。当然、朝夕ラッシュ時のグリーン券は熾烈な争奪戦になるのでしょうが、寧ろ列車指定を逆手に取って朝夕ラッシュ時のグリーン料金を値上げするという商売も出来ます。女性専用車の導入を断行した現在のJR東日本であれば、ラッシュ時のグリーン料金値上げはそんなに難しい話ではないと思うんですけどね。



2006-09-29 追記】
 毎日新聞は、全然懲りていないようでした。

斎藤由多加のゲームなミカタ:第6回「グリーン席に自由はあるか!?」

http://symy.jp/?A8-ウェブ魚拓+ウェブ精米)

 そして、これに対する真っ当な批判がこちら。

○怠け者のネタ帳(第2章) ― あなたと あほらしい あしたへ:595. あんまりいじめないでください

http://blog.livedoor.jp/sukidasukidasukida/archives/50608142.html

 どう見てもカタカナです。
 本当にありがとうございました。

*1:この時、現状は列車番号以外のユニークキーを持たない各列車をどう特定するのか、運用の検討が必要です。近鉄特急のように発着時刻だけで列車を一意に特定する習慣のあるケースならいざ知らず、列車愛称というシノニムを実質的なユニークキーとしていたJRにおいては、とても近鉄特急のような運用は受け入れられないでしょう。かといって、全普通列車に愛称を設定するのも労力の無駄ですし、号数が4桁に突入してしまう危険性すらあります。こうなったら、出発案内に尽く列車番号を表示させるのがいいんでしょうかね。