五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

橋本は第二の新横浜になれるか

 さて、そんな橋本駅において、「リニア新幹線を考える相模原連絡会」なる団体がこんなチラシを配っていました。

○STOP!リニア中央新幹線計画

http://eic-sagamihara.jp/html01/05-events_annai/eventdata/data/120331.pdf

 どんな団体なんだと思って調べてみようと思った矢先、Twitterのタイムラインでこんなニュースを見掛ける始末です。

○「リニア考える会」沿線住民が発足、集会開催へ

http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1203190014/

 私がマンションを購入する時におけるデベロッパーの説明では、「職業能力開発総合大学校*1小平市に移転するので、その跡地に相原高校が移転します」との事だったのですが、移転するにしてもしないにしても、駅前の一等地を高校に使わせているのは何とも勿体ないという話が出てくるのは当然の事でしょう。
 内容についての論評は、私よりもブロハラ読者諸兄の方が余程詳しいであろう事が容易に想像できる為、ここでは割愛します。それよりも、「橋本駅にリニアを誘致できたとして、本当に利用されるのか?」という事を考えた方が良さそうなのですが、正直な所余り橋本駅の大化けは期待できそうにありません。勿論、相模原市としては「新横浜、大宮に続け」という期待はあるのでしょうが、それは目論見だけに終わりそうです。



 リニア中央新幹線の神奈川県内における中間駅が橋本駅になるであろう事は、神奈川県や相模原市の動きからしてほぼ確実です。利便性で考えても、敢えてJR相模原駅相模原市中央部に設置するメリットは少なく、他地区からの誘客を考えても、橋本駅を中間駅に据えるのは当然の結論です。都市圏としての拠点性を考えるに当たっても、橋本と相模原とでは橋本の方が拠点性は高くなっている状態です。
 しかし、「神奈川県のリニア駅」として使うには、橋本駅は北に寄りすぎています。新横浜が横浜市における副都心として発展を遂げられたのは、横浜市の中心街からそんなに遠くない距離にあり、JRの運賃制度上も「横浜市内」としての扱いを受けられたからです。橋本は、横浜市内からだと1時間近く掛かる場所ですし、当然ながら「横浜市内」と見なすにも無理がありますから、「神奈川県を代表する駅」という事ではなく、「相模原市北部を代表する駅」という事で一から需要を創出する必要があります。
 更に言うなら、横浜駅からだと、橋本駅よりも品川駅の方が近いという問題があります。東海道新幹線の開業当初、東京駅の次がいきなり新横浜駅でしたから、横浜市内から東海道新幹線に乗ろうとすると、新横浜駅じゃなければ東京駅を使う必要がありました。その為、横浜政財界からの新横浜駅停車要求は強く、またそうなる事を見越して最初から新横浜駅は2面4線の堂々たる構造になっていたのです。一方で、リニア中央新幹線は最初から品川駅発着ですから、横浜政財界としても「橋本まで行くくらいなら最初から品川へ行く」という意見は黙認するでしょうし、それが横浜市におけるマジョリティでしょう。
 となると、橋本駅が頑張って集客できるのは、精々町田以北の横浜線沿線や京王相模原線沿線くらいのもので、三多摩広域からの集客など望むべくもありません。当然、橋本駅周辺自体を「新都心」として開発していくしかないのですが、高度経済成長期の真っ最中に開業した新横浜駅とは異なり、今や再開発需要なんていうものはたかが知れています。そして、オフィスビル需要なんてのは都心回帰傾向が明白であり、橋本のような片田舎における再開発需要なんてのはショッピングセンターかタワーマンションが関の山なんです。相原高校を追い出してリニア駅にするのは結構ですが、その駅周辺をまたぞろタワーマンションが取り囲むなんて事になったら、相模原市の発展もそこで終わる事になるでしょう。
 それでもなお神奈川県や相模原市が「第二の新横浜」になる事を願うのであれば、取り敢えず名古屋駅と同規模の2面4線クラスにするよう、JR東海に要求する事です。JR東海は、自腹で「緊急避難場所代わり」の中間駅を作ろうとしていますから、工事全額を神奈川県や相模原市が負担してでも、優等列車停車駅としての箱物を仕掛けておく必要があります。物理的に優等列車の停車が不可能であれば、どうやってもそこからの発展など望むべくもありません。新横浜駅の時は当時の国鉄が自腹を切ってくれましたが、今や一民間企業のJR東海にそこまでの投資をさせる事は出来ませんから、「第二の新横浜」になる事を願う地元自治体こそその出捐者となるべきなのです。

 という事で、余り相模原市の発展には寄与しそうもなさそうなリニア中央新幹線なのですが、一つだけリニア中央新幹線橋本駅が大化けする可能性があります。それは、東海地震の発生で東海道新幹線が長期的に不通となった場合です。これは決して願わしい事ではないのですが、東海道新幹線が壊滅的な被害を受けた場合、リニア中央新幹線JR東海のプロジェクトから国家プロジェクトへと引き上げられる事になります。そして、建設に時間の掛かる東京都心部が後回しという事になれば、橋本以西のみで暫定開通なんて事もあり得ます。
 これは、大宮駅が東北・上越新幹線の拠点駅になったのと同じパターンで、やはり東京都心部での工事が後回しになった関係で暫定開業に至り、その後も埼京線武蔵野線等で首都圏西部からの広範な集客に成功しています。しかし、大宮駅は東北新幹線の開業以前から首都圏北部の鉄道における一大拠点でしたし、都心としての集積規模も橋本とは比較にならないくらい進んでいます。仮にリニア中央新幹線が橋本以西のみで暫定開通した場合であっても、神奈川県や相模原市が大宮の倍以上の努力をして、やっと大宮の半分の拠点性も構築できるかといった所だというのが、現在の真相でしょう。

*1:その昔は、職業訓練大学校という名前でした。相模原市広域避難場所として指定されている為、小学生活を相模原市内で過ごした私には、こちらの名前の方が馴染みがあります。