五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

航空機での避難訓練の必要性

 最近、緊急着陸などで非常脱出用シューターを利用した際の負傷事故が2例発生しました。

○成田発NW機、グアムで着陸トラブル・3人軽いけが

カンタス機が緊急着陸・貨物室の発煙警告灯作動

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050821STXKA003121082005.html

 幸い、双方とも命に別状はないとの事でしたが、今年3月16日の日航機ドアモード変更忘れの件も含めて、改めて非常用脱出シュートの重要性が認識されたのではないかと思います。しかし、ドアモードや非常用脱出シュートそのものに対する関心こそ高まっていても、いざ自分が使わなければならないという時に、どう脱出すればいいのか、理解していない向きも多いのではないでしょうか。シートベルトや救命胴衣などと同じく、こうした安全器具というものは、正しい使い方をしてこそ、初めてその効果があるものです。
 私が思うに、非常用脱出シュートでの負傷事故が相次いだ原因の1つには、非常用脱出シュートの利用に対する不慣れがあるのではないでしょうか。そりゃあ、自動車のエアバッグにしろ航空機の非常用脱出シュートにしろ、使わなくて済むに越した事はないのですが、いざという時に使えなくては、安全器具の意味がありません。その「いざという時」は、何時でも誰にでも起こり得るのですし、乗り物に乗る以上、常に「いざという時」への心構えは持っていて然るべきです。
 そこで提案なのですが、国土交通省や航空会社が協力して、一般向けに航空機の避難訓練を実施してみては如何でしょうか。関東近郊のJR・私鉄では、毎年9月1日に乗客も参加しての防災訓練を実施していますし、ある程度の規模がある企業や建物などでは、定期的に避難訓練が実施されているはずです。航空機という乗り物が大衆化した現在、これらの訓練と同等の感覚で、航空機にも避難訓練の実施が求められるのではないかと、私は思っています。
 この避難訓練は、予備機材を利用した実機での訓練でも構いませんし、或いは航空会社の研修センターにあるような機体模型*1での訓練でも構いません。大切なのは、1人でも多くの一般客に、非常用脱出シュートでの避難経験を持ってもらう事です。実際の搭乗で非常用脱出シュートを使わなければならない機会において、一度も非常用脱出シュートを使った経験がないのと、一度でも非常用脱出シュートを使った経験があるのとでは、避難の際の心構えや手際などが大きく異なります。機体火災時などであれば、ちょっとしたボトルネックが文字通り命取りになってしまいますので、避難時のボトルネックを可能な限り解消する努力は、国土交通省も航空会社も、決して怠るべきではないでしょう。
 今月2日にトロント・ピアソン国際空港で発生したエールフランスのAirbus A340オーバーラン・炎上事故では、その脱出の手際の良さにより、奇跡的に死者・重傷者ともゼロでした。国内外のメディアが、広くこの「偉業」を報道した為、日頃航空機に乗り慣れない人でも、その鮮烈なイメージは強く記憶している所でしょう。しかし、同種の事故が日本で発生した場合、果たして死者も重傷者も出さなくて済むでしょうか。私には、とてもエールフランスと同じ「偉業」は無理であるかのように感じられます。まぁ、エールフランスの場合は本当に唯の奇跡だったのかも知れませんが、少なくとも緊急避難時の死者や重傷者を減らす事は努力次第で十分可能なはずです。JALの連続トラブルなどで航空機の安全への関心が高まっている今こそ、航空機での避難訓練を一般に定着させる絶好の機会ですし、一般からの参加者も抽選しなければならないくらいの多数になる事でしょう。
 自分の安全は、究極的には自分で確保するしかありません。乗客や乗員の一人一人が、こうした安全への高い意識を常に持ち続けてこそ、空の安全は初めて成立し得るのです。航空機の避難訓練は、乗客や乗員の安全意識を高める、かなり有効な手段になるのではないでしょうか。



 ここからは蛇足です。
 常日頃、私はJGC会員に対して空の安全に対する一般客以上の高い意識を持ち続ける事を要求していますが、これは避難訓練においても当然同様であると思っています。そこで、JGC新規加入・会員資格更新の際には、JALが主催する避難訓練への参加を義務付けるというのは如何でしょうか。私自身もそうなのですが、曲がりなりにもJGCとあろう者が、非常用脱出シュートの使い方すら分からないというのは、非常に問題があります。「いざ緊急避難が必要になった時に恙無く避難できれば、それで問題ない」とする向きもあるでしょうが、JGC会員は他の乗客よりも「いざという時」への遭遇確率が格段に高いのですし、その「いざという時」には、当然にして他の乗客の範たるべきなのです。ましてや、JGC会員は事前座席指定で非常口座席を予約する事が出来るのですから、緊急避難の作法は、JGC会員の必修科目であると言うべきでしょう。
 何度も繰り返し書いているかも知れませんが、JGCは、単なる権利ではなく、責任をも伴うステータスなのです。JALが何故JGCを設けているのかを考えれば、自ずとJGCというステータスに伴う責任は判る事でしょう。あとは、JGCの本文に悖らない行動が出来るかどうかだけです。JGC会員一人一人の言動が、JGCという会員組織そのものの存廃を左右するという事を、JGC会員はしっかり自覚して欲しいものです。

 更に蛇足です。
 近年、航空機を利用しての修学旅行が増えていますが、この生徒及び引率教員にも、避難訓練への参加を義務付けては如何でしょうか。修学旅行での航空機利用ともなれば、機内の大きなブロックをその団体だけで占める事になります。となれば、緊急避難時においては、修学旅行生の統率が取れているかどうかが、そっくりそのまま修学旅行生の生存率に繋がります。修学旅行で初めて航空機に乗るという生徒も数多くいる事でしょうから、航空機というものを知ってもらい、航空機に慣れ親しんでもらう為にも、避難訓練への参加は大いに意義があるでしょう。
 私が改めて言う事でもありませんが、修学旅行は学校教育の一環です。とあれば、航空機での避難訓練も、学校教育の一環として実施すべきでしょう。公共交通機関での振る舞いを学ぶ事は、立派な校外学習の一つです。これからの中高生は、上の世代よりも航空機への搭乗機会が多い事でしょうから、交通教育の一環として、航空機に関する教育も積極的に取り入れるべきでしょう。まぁ、先ずは県知事がスチヲタの長野県からですかね。

*1:TBSの連続ドラマ「GOOD LUCK!!」にも出てきましたね。木村拓哉が演じた新海元が転落事故を起こしたアレです。