五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

2006年3月・JR西日本ダイヤ改正

 続いて、JR西日本です。2006年3月ダイヤ改正の見所は、以下の通りです。

  1. のぞみの毎時2本化
  2. 姫路発着のぞみの設定
  3. 16両編成の禁煙車追加設定
  4. こだまの間引き
  5. レールゴー・サービスの廃止
  6. 出雲の廃止
  7. かすがの廃止

 以下、順に見ていきましょう。


1.のぞみの毎時2本化

 これが、今回のダイヤ改正の目玉ですね。言うまでもなく、2006年3月16日に開港する新北九州空港への対抗策でしょう。従来、首都圏=北九州の移動需要は、北九州空港の放置プレイにより、新幹線が分担可能な距離を遥かに超えているにも拘わらず、辛うじて新幹線の利用者層を確保する事が出来ていました。しかし、スターフライヤーが1日12往復も飛ぶという事になれば、福岡空港利用者層のみならず、新幹線利用者層も大きく食われる事になりかねません。しかも、新幹線利用者層は福岡空港利用者層と違ってマイレージの呪縛がありませんから、スターフライヤーは大いなる脅威となりかねません。
 取り敢えず、のぞみが毎時2往復になる事によって、本数や輸送力では圧倒的にスターフライヤーを上回るようになりました。しかし、羽田空港新北九州空港でのアクセス時間を考えても、所要時間では航空機の方が有利ですし、新幹線の車内サービスでは航空機の機内サービスに全く歯が立ちません。ここで、JR西日本が付け入る隙があるとすれば、スターフライヤーがお座なりにしている割引運賃の設定でしょう。岡山地区や広島地区で販売しているような企画乗車券を小倉地区でも販売すれば、或いは北九州市内からの利用も見込めるかも知れません。
 都市間輸送におけるJRの強みは、両端都市における市内移動も運賃に含まれるという事です。幸い、羽田空港新北九州空港も決して空港アクセスは便利ではなく、特に新北九州空港への公共交通機関によるアクセスはお座なりもいいところです。単に「のぞみvsスターフライヤー」という構図に持ち込むのではなく、その前後のアクセスも含めた競争を展開すべきでしょう。とはいえ、東京都区内にしろ北九州市内にしろ、新幹線運行会社とは別の旅客鉄道会社が営業しているという問題はあるんですけどね。逆に言えば、この会社間の断絶に楔を打ち込めば、スターフライヤーはより優位に立てるという事でもあるのですが。


2.姫路発着のぞみの設定

 のぞみの延長が新北九州空港への対抗策なら、こちらは2006年2月16日開港の神戸空港への対抗策でしょう。但し、どちらかといえば、羽田=神戸を多頻度運航するスカイマークではなく、神戸ナイトステイのJALやANAへの対抗策と捉えるべきです。昼間に関する限り、東京=新神戸ではダイヤ改正の前後で殆ど目立った変化はないからです。また、その時刻設定も、明らかにJALやANAの神戸ナイトステイ便を意識したものとなっているのです。
 元々、東京=新神戸だけで見ても、新幹線は航空機に対して便数でも輸送力でも優位に立っていますし、シェアにしても既に新幹線は航空機を圧倒しています。阪神地区から新大阪を利用する乗客まで考えたら、新幹線の優位はなお揺るがないものとなります。運賃にしても、伊丹空港関西空港へのアクセスを考えれば、阪神地区からの利用では新幹線の方がかなり有利です。所詮、始発便や最終便の特便割引はニッチ需要でしかありませんからね。
 強いて航空が活路を見出すとすれば、それは東京・神戸における滞在時間の最大化です。新幹線がどんなに頑張ったところで、東京=新大阪が2時間を切れる見込みがない以上、航空機が適切なダイヤで運航すれば、最大滞在時間では航空機が優位に立ち得ます。それでも、従来は伊丹空港の門限が大きなネックになっていましたが、神戸空港が開港する事により、特に阪神地区在住者にとっては効率よく東京での滞在時間を延ばす事が出来るようになります。勿論、現在でも関西空港の利用により東京での滞在時間は大幅に伸ばせるのですが、流石に神戸市内からだと関西空港は些か遠いでしょう。昼間の移動ならいざ知らず、早朝・深夜の利用ともなれば、少しでも空港との往復所要時間は短くしたいものです。
 JR西日本が目を付けたのは、そうした理由で神戸空港を使おうとしている利用者層、或いはその利用者層をピンポイント爆撃するような羽田便を設定してきたJAL・ANAでしょう。昼間のシェアは盤石でも、早朝・深夜に限れば航空機のシェアも侮れません。別に、こんなニッチ需要なんか切り捨てても良さそうなものなんですが、早朝・深夜便の利用者から口コミで神戸空港の利便性が広まるのを避けたいのかも知れませんね。東京=大阪で航空機がシェアを伸ばしてきた理由には、弾力的な運賃設定だけではなく、こうした口コミによる利用者の増加もあるからです。首都圏のJR東日本とは違い、あぼーんアーバンネットワークですら私鉄との競争で盤石ではありませんから、何としても新幹線利用者層を確保しておきたいんでしょうね。特に、JR西日本は昨年4月25日のJR福知山線脱線事故でシェア的にも大ダメージを負っていますから、今は僅かなシェア逸失にもナーバスになっているのかも知れませんね。
 なお、ここで「神戸空港対策は関西空港利用促進=はるか・関空快速利用促進ではないのか?」と穿った見方をする向きもあるかも知れませんが、その可能性は低いと見ていいでしょう。というのも、JR西日本にしろ南海にしろ、関空アクセスは思いの外儲かっていないからです。関空アクセスを改善するくらいなら、地道に通勤輸送を頑張っていた方が、余程収益に繋がるんですね。そりゃあ、空港利用者と通勤利用者との人数差を考えてみれば、当然といえば当然なのですが。


3.16両編成の禁煙車追加設定

 当然です。
 と言い切ってしまえばそれまでなのですが、JR北海道JR東日本と違って全席禁煙に出来ないのは、新幹線の利用者層に「2時間以上も禁煙なんて我慢出来ねえよヽ(`Д´)ノ ウワァァン」というニコチン中毒の連中が多く含まれているからでしょう。既に航空機は全席禁煙ですし、最近では空港ラウンジまで全面禁煙になりましたから、ニコチン中毒の連中にとって、新幹線は最後の安息の地なのです。それでも、ジワリジワリと禁煙車が増えてきているのは、やはり時代の趨勢なんでしょう。
 しかし、その内登場するN700系においては全席禁煙となるそうですから、そうなるとニコチン中毒の連中は何処に流れるんでしょうね。そりゃあ、一刻も早く禁煙してくれるに越した事はないのですが、アルコールにしろタバコにしろ、一度手を染めてしまった薬物はなかなかやめられないというのは、ここで説明するまでもありません。取り敢えず、デッキや化粧室での喫煙には、今からJRも目を見張らせておくべきでしょう。


4.こだまの間引き

 以上が華々しい話題でしたが、ここからはドーンと暗い話題になります。取り敢えず、新幹線ネタで続いてきているので、暗い話題も先ずは新幹線からでしょう。で、こだまの間引きです。「こだ」……って、サルヂエじゃないんだってば(;´Д`)
 閑話休題、これは当然の話でしょうね。域内速達需要を満たすには、新幹線の特急料金は些か高過ぎます。抑も中国地方は自動車社会ですし、鉄道利用にしても短距離なら在来線で十分です。そして、そこそこの距離を移動するのであれば、ひかりレールスターに乗れば事足りてしまいます。山陽筋の交通事情は@SCiさんの解説を待つ*1事として、こだまの存在が山陽筋の移動需要とアンマッチしていた事は確実です。静岡県内でさえ空気輸送のこだまが、山陽新幹線でまともに稼ぎを出すはずもありません。
 まぁ、この間引きがもっと進展していけば、今度は閑散駅の間引きにも発展してくれるかなぁと思っているのですが、流石にその実現性は低いでしょうね。何せ、地元がゼニ積んでまで無理矢理造らせた駅もあるんですから、その廃止には一山も二山も越えなければなりません。それよりは、駅だけ造って放置プレイの方が、余程スマートというものでしょう。取り敢えず、静岡県内の全駅においては、1日に1本か2本でも停めてやれば十分でしょう。スジ屋の本音としては、全列車静岡県内を通過させたくて仕方がない事でしょうが。


5.レールゴー・サービスの廃止

 続いて、新幹線景気の悪い話です。レールゴー・サービスの廃止は、新幹線のダイヤに対する直接の影響こそありませんが、航空機との競争激化の一端と見る事も強ち不可能とは言い切れません。というのも、レールゴー・サービスは新幹線利用による小口貨物輸送ですから、ここ数年での航空便の充実により、輸送リードタイムでそれほど新幹線に引けを取らなくなったからです。東京=大阪・岡山など、特に航空機の充実度が高まっている路線ですから、レールゴー・サービスに掛かる人件費を考えれば、廃止もやむなしといった所でしょう。
 しかし、京都議定書を批准した日本としては、そうそう長距離小口貨物輸送を航空機だけに委ねる事も出来ませんから、何等かの形でレールゴー・サービスを復活させる必要があるでしょう。その時に最大のネックとなるのが、東海道新幹線東北新幹線の容量不足です。もし、本格的に新幹線での貨物輸送を検討するのであれば、航空機で言うコンビ機材*2或いは貨物専用列車のようなものが必要になります。しかし、東海道新幹線は旅客輸送だけで需給が逼迫していますし、東北新幹線は東京駅の発着線不足で荷役に必要な時間が確保できません。リニア中央新幹線上越新幹線新宿駅の開業といった根本的な容量対策が為されない限り、新幹線での貨物輸送はなかなか本格化しないでしょう。
 強いて現状のインフラで貨物輸送の可能性を見るなら、品川駅・大宮駅といったサブターミナルの活用でしょう。幸い、品川=名古屋は品川発着列車用に毎時3往復分の余裕が残されていますし、東北新幹線上越新幹線も大宮以北なら線路容量にはかなりの余裕があります。荷役スペースや荷役時間の確保は相変わらず課題として残りますし、品川駅や大宮駅にトラックターミナルをどうやって併設するかという新たな問題も出てきますが、新幹線の有効活用として検討する価値は十分にあるでしょうし、北海道新幹線北陸新幹線においては冬季物流の安定化にも繋がります。0時から6時までの営業運転も認められるようになれば言う事なしなのですが、これは流石に困難かも知れませんね。


6.出雲の廃止

 片山善博が怒っていますヽ(`Д´)ノ ウワァァン
 ……というのが既報だったような既報じゃなかったような。何れにしても、これだけ航空機や夜行バスが発達した現代においては、寝台特急の存在意義そのものが見直されるようになるでしょう。ましてや、出雲のように開ハネが前提の旧態依然としたブルートレインでは、乗客にそっぽを向かれて当然です。プライバシーの防御壁がカーテン1枚とあっては、私だって利用したくありませんからね。
 既に、夜行バスについては、品川バスターミナルから県下3都市に路線が就航していますから、夜行指向或いは格安指向といった移動需要も十分にカバーされています。或いは、鳥取県内の空港にしたって、今年からは米子空港だけでなく鳥取空港でも東京便のナイトステイが実施されるようになり、航空機の利便性も格段に増しています。鳥取県がANAにどれだけ補助金を積んでいるのかは知りませんが、これで出雲の存続にも補助金を出すような事があれば、単に二重投資であるばかりでなく、税金の無駄遣いというものです。
 もし、それでも片山善博が出雲の存続を希望するというのであれば、ANAでもキャメル号でも代替できない首都圏への移動需要及びその採算性を提示し、出雲存続の必然性及び必要性を内外に訴えていくべきでしょう。それが出来ないというのであれば、JR西日本が提示しているサンライズ出雲接続特急で満足すべきですし、本来はこれですら贅沢というものです。東芝不買運動にしろ人権条例にしろ、片山善博はスタンドプレーが多過ぎです。その竹篦返しは、必ずや鳥取県民の身に襲い掛かってくる事でしょう。まぁ、鳥取県が滅亡しても日本人は誰1人困りやしないんですけどね。


7.かすがの廃止

 まだ走っていたんですね……と、しみじみ。まぁ、キハ75系で急行料金を取ろうっていうのが最大の間違いでしょう。世の中にはuシートみたいなものもあるんですし、せめてキハ75系もそれを見習って指定席を回転式リクライニングシートにしておけば、或いは利用者があったかも知れないんですけどね。勿論、快速格下げが必要になる事は言うまでもありませんが。18乞食ヲタの排除? んな事しなけりゃならない程基礎需要がないでしょうに。
 っていうか、ここまで書いておきながら、よく考えると運行会社はJR東海だったという事に気付いてしまいました。この項目、ひょっとしたらJR西日本ではなくJR東海の改正内容として書くべきだったかも知れませんね。まぁ、亀山=加茂が非電化だからこそ311系313系ではなくキハ75系が走っているという側面もあるのですが。



 以上、航空機対策以外は全て後ろ向きというJR西日本ダイヤ改正を見てきましたが、あぼーんアーバンネットワークについては不思議と大掛かりな改正はありませんでしたね。まぁ、現実に即した余裕時間を確保する事以外に手の付けようがないという事なのでしょうが、昨年のJR福知山線脱線事故で私鉄に逸走した乗客を取り戻す為にも、もう少しダイヤ面で明確なメッセージを発信して欲しかったものです。所詮、JR西日本は単なるスピードバカなんですから、顧客へのアピールは寝ても覚めてもスピードしかないんです。それならば、余裕時間を確保する為に最高運転速度を140km/hに引き上げるなんていう選択肢もあったはずです。攻める事を忘れたスピードバカは、座して死を待つのみです。

*1:読者を指名して解説依頼。それも、ブロハラクオリティ。

*2:旅客機の客室後方を貨物室に改造した機材の事です。代表的なものとしては、B747-200Bのメインデッキを一部貨物室に改造したB747-200Cが挙げられます。ベリー輸送で事足りている日本の国内線においては、なかなか縁遠い機材でしょう。