五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

堀高明にズームイン(読売編)

 こちらは、スターフライヤー就航後の記者会見です。

○北九州や山口活性化に寄与したい〜スターフライヤー社長会

http://kyushu.yomiuri.co.jp/news-spe/airport/ne_ai_06031704.htm

 日経ほど長いインタビューではありませんが、こちらにも一問一答一ツッコミで行きたいと思います(つ´∀`)つ


2009年の羽田再拡張への戦略は。
「航空機を年間1〜2機ずつ増やして09年に突入したい。09年の大競争時代に、最初に選んでもらえる会社になるため、機内の快適性などを重視した」

 毎年1機ずつ追加導入すると、2009年には6機体制ですね。日経でのインタビューを踏まえれば、6機で8機分の稼働をさせるという事になるんですが、羽田発着枠を確保できる見込みもないというのに、一体何処で機材を遊ばせておく心算なんでしょうか。札幌線や名古屋線に参入しようにも、こちらは羽田線以上に多頻度運航での採算維持が難しいのですが。
 あと、現状のスターフライヤーは、「最初に選んでもらえる会社」ではなく「最初選んでもらえる会社」ですね。リピーターとなるべきビジネス顧客、或いはその雇用主である企業や官公庁といった団体に、果たしてどれだけ有効なアプローチが出来ているでしょうか。トータルデザインというハッタリが効くのは最初だけです。顧客忠誠度を高める為には、目に見えない部分での人的サービスが大きく物を言います。初日から欠航でグダグダを引き起こしているようでは、顧客忠誠度の向上はまだまだ先ですね。


貨物事業にはどのように対応するか。
「早朝、深夜は貨物の宝庫。近いうちにそれなりの事業をやっていきたい」

 そんなに悠長な事を言っている場合でもないでしょうに。既に、ギャラクシーエアラインズは8月からの北九州就航に向けて着々と準備を進めています。そろそろスターフライヤーも具体的な貨物事業戦略を立てておかないと、気が付けばシェアを全部かっさらわれているなどという危険性もあるのです。これでは、折角コンテナ積載が可能なA320を導入したメリットが大幅に減殺されてしまいます。
 更に言うと、貨物輸送のシェア争いで目論見が外れると、早朝・深夜便の運航そのものにも黄信号が灯ってしまいます。これらの便は、日経のインタビューでも「ロードファクター50%なら御の字」と言っているように、ベリー貨物でどれだけのユニットレベニューを叩き出せるかが採算の分かれ道です。貨物輸送で安定した売り上げが見込めるからこそ、早朝・深夜便を運航する事も出来れば、そこで戦略的な割引運賃を設定する事も出来るのです。この点、堀高明社長の認識はかなり低いでしょうね。


4月の値下げによる経営計画の見直しは。
「事前購入型運賃を最大2200円下げた結果、搭乗率を(当初目標の)60%強から2.5%上げなければならない。ただ、これ以上の低価格競争はしないと考えている」

 これはつまり、STAR1やSTAR7がスターフライヤーの主力商品だという事を吐露していますね。逆に言えば、そこを集中的に攻撃すればスターフライヤーの経営計画が瓦解するという事でもあり、JALにとっては狙い所がハッキリしたというべきでしょう。山口宇部線との兼ね合いもあって、特便割引1/7の値下げは難しいかも知れませんが、どうせ山口宇部線もANAの前にジリ貧状態なんですし、思い切った値下げに踏み切る可能性も否定できません。その時、果たしてスターフライヤーはどう立ち向かっていくんでしょうかね。スケジュールさえ合えば、スターフライヤーの普通席よりもJALのクラスJを選ぶという人はかなり多い事でしょうし。
 とはいえ、既にJALは5月からの東京羽田=北九州線の減便を決定していますから、JALがこれ以上の揺さ振りを掛けてくる可能性は余り高くないでしょう。しかし、その分のリソースが東京羽田=福岡線に振り向けられれば、決してスターフライヤーも安穏とはしていられません。スターフライヤー福岡空港に流出していた旅客を奪還しようと目論む以上、その逆方向の動きも発生しないとは限らないのです。


新規会社として安全体制をどう確立するか。
「一番の安全対策として新造機を3機導入した。整備、運航面を含めて安全レベルを上げる」

 これは、ロイヤルブルネイ航空からのお下がりでケチが付いたスカイマークへの皮肉なんですかね。確かに、新造機であれば少なくとも事故歴はゼロですから、機体損傷という心配はありません。国内での運航実績があるA320を選定したというのも、スカイマークB737-8Q8*1初期不良に悩まされている所を見れば、まあまあ正解だったというべきでしょう。
 しかし、安全対策を口にするのなら、あの機体デザインは少し考え直すべきだったでしょう。黒一色という塗装が機体に掛ける負荷というのは、世界のどの航空会社もデータを持っていません。新規航空会社として何とかインパクトを確保したいという気持ちは分からなくもありませんが、空中分解事故でその名を馳せるなどという事だけは御免被りたいものです。


始発からの搭乗動向と評価は。
「始発から3便の状況をみると、各便144席に対し、(搭乗が)133席程度。スタートとしては、ありがたい数字と受け止めている」

 何とも心許ない搭乗動向ですね。新空港・新規航空会社という二重のご祝儀相場があっても全座席を埋められないというのは、スターフライヤーがビジネス需要志向だという事を踏まえてもなお異例の事態です。ましてや、従来は北九州発の始発便など「いつも満席で乗る事も難しい」などという状態だったのですから、7時発というビジネス利用にお誂え向きの時刻で満席にならないなどというのは、ありがたいどころか早急に事業戦略の見直しが必要なくらいです。
 取り敢えず、当面はご祝儀相場で高いロードファクターを維持できる事でしょう。しかし、開港景気も一息吐いて、本格的に北九州のビジネス需要と向き合わなければならなくなった時、果たしてそのロードファクターは何処まで落ち込む事でしょうか。地元企業を株主に取り込んで慢心するのではなく、二の矢三の矢を射込むくらいでなければ、スターフライヤーもまた典型的な新規航空会社の辿る道を行く事になるのです。



 以上、一問一答一ツッコミでした。またもスターフライヤーには厳しい言葉ばかり並べてしまいましたが、これは私自身のスターフライヤーへの期待でもあります。スターフライヤーには、来年3月期の決算において、予想を裏切り期待を裏切らない実績を叩き出して欲しいものです。それでこそ、「一味違うホスピタリティ」にも箔が付くというものです。

*1:因みに、この「Q8」というのは、スカイマークのカスタマーコードではなく、スカイマークに航空機をリースしている米国International Lease Finance Corporation社(ILFC)のカスタマーコードのようです。
http://www.ilfc.com/
その為、世の中には「アリタリア航空B767-3Q8」だの「上海航空B737-8Q8」だのといったものも存在します。まぁ、B777-289のように、ボーイングのカスタマーコードだけで運航会社やコンフィグまでが一意に求まる方が異例なのですが。