五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

盛和塾の優待は本当にダンピングなのか

 ちょっと旧聞の類になってしまいましたが、一応触れておきます。

○JALが稲盛会長の私塾会員に“特権” 身内優遇策も?

日航、稲盛私塾への優遇を取りやめ

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100521/biz1005211143004-n1.htm

 つくづくアホくさい話です。チクる奴もチクる奴ですが、報道するマスゴミマスゴミです。内容を読んだ限り、そんなに「特権」と呼べるほどのものでもありませんでしたし、ましてやJALの経営再建を阻害するようなものでもありませんでした。
 まぁ、今の時期はマスゴミ国土交通省の目も光っている事ですし、一般大衆への印象を考えると、優遇辞退は仕方のない事なのかも知れません。兎に角、世の中は色々と窮屈になったものです。



 ところで、この「特権」がどんなものだったのかというと……

  • ツアー旅行代金の8%割引
  • JMG(JMBサファイア)インビテーション
  • 搭乗時ボーナスマイル
    • 国内線:300マイル
    • 国際線:ダブルマイル

 と、実にお手軽なものばかりです。確かに、マイレージは負債の一種ですから、この時期にJALが負う債務を徒に増やすのは望ましい事ではないのかも知れません。しかし、これらのバラマキ策、実は下手な宣伝広告以上の成果を叩き出せるのです。
 もう一度、盛和塾向けの特典を読んでみましょう。これらの特典、何処をどう頑張った所で、有償運賃でJALに乗らなければ何の特典も受けられないのです。そして、JALグローバルクラブ会員向けのサービスとは異なり、「JALに搭乗すればするほど特典を受ける機会が増える」、逆に言えば「JALに搭乗しなければ、一切の特典を受ける事が出来ない」のです。
 ここに、今回の優遇の最大のポイントがあります。JAL盛和塾の塾生に与えたのは、「特権」という名のエサなのです。しかも、全て既存のフォーマットをそのまま利用するか、或いは若干の修正を加えた程度のものです。準備コストは殆ど掛からず、実際に利用してもらえれば確実にJALの増収に繋がるという、実にローリスクハイリターンな施策なのです。
 今回の「特権」には、どうやらJGCのインビテーションは含まれていないようですから、JMGの恩恵に与れるのは今年度限りという話になりそうです。しかし、塾生がJGCインビを欲しがるようであれば、恐らくJALはあっさりとインビを送る事でしょう。何せ、毎年1万円以上のJALカード年会費収入が確約されるだけでなく、わざわざ旅客の方から顧客忠誠心の半永久的維持を宣誓してくれるのですから、こんなに美味しい話はありません。



 そして、今回の優遇においては、もう1つ重要なポイントがあります。それは、優遇の対象となった盛和塾が、稲盛和夫を崇拝するオーナー経営者の集まりであるという事です。稲盛和夫といえば、佐高信斎藤貴男からカルトであると批判されるような「前近代的」経営者であり、最近ではこんな本も出版されています。
虚飾の経営者 稲盛和夫

虚飾の経営者 稲盛和夫

 要は、盛和塾の塾生が経営する企業も、多かれ少なかれ「狂セラ」的要素を持っている訳で、経営者の存在が絶対的なものになっているのです。そんな企業において、経営者がJALシンパになろうものなら、その従業員の用務利用も一気にJALに傾く事になります。当然、用務利用で予約変更が不可能なバーゲン系運賃など利用できるはずもなく、そこそこイールドの高い運賃での利用が大いに見込める事になるのです。
 以前、JALが「一部の大企業向けにダブルマイルキャンペーンを極秘提供していた」という噂が流れ、AirTariffなどで話題になった事があります。しかし、今から考えてみると、大企業向けにキャンペーンを打った所で、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」程度の効果しかなく、「キャンペーンをバラ撒いた数以上の顧客の確保」には繋がっていなかった事でしょう。それに引き換え、今回の盛和塾向け優遇は、社員に対して絶対的な影響力のあるオーナー経営者を一網打尽に出来たのですから、過去のキャンペーンに比べれば遥かにコストパフォーマンスの高い営業施策であったと言うべきなのです。
 こうして見れば、稲盛和夫日本航空会長に据えておく事にも、それなりの意義があります。東国原英夫宮崎県知事は、「自分の知事報酬は自分で稼ぐ」としてテレビ出演等に力を入れ、実際に知事報酬以上の納税をしている訳ですが、稲盛和夫にしてみても、「自分が受ける有形無形の報酬は、自分の塾生でキッチリ回収する」という事を実践しようとしている訳です。しかも、東国原英夫と違い、稲盛和夫は「無給」ですから、なおの事コストパフォーマンスは高くなる訳です。
 稲盛和夫の経営手法については、私自身決して首肯できるものではありません。しかし、「客を連れてくる」という実績を上げられるという点においては、稲盛和夫の地位や能力を高く評価すべきですし、雰囲気に流されて横槍を入れてしまうマスゴミ国土交通省の無能ぶりは批判されるべきでしょう。こういう所でフラフラ動いてしまい、結局は「一般法人と同レベルの優遇措置であり、稲盛会長の指示でもない」なんて言ってしまう前原誠司国土交通大臣を見るに付け、やはり民主党は『ゆ党』時代から何も変わっていないんだなぁ」としか思えません。。